運営管理室
わざわざ評価して下さりありがとうございます。今回は運営編です。
「今のところ何も問題なさそうだな。どうだ?中村。」
長身の大男が腕組みモニターを見ながら呟く。
「はい。今のところバグらしき報告は入っていません。外部からの不正アクセスは全てAIが対処してくれました。」
ここは運営管理室。ゲーム内でのバグにいち早く気付けるように基本的にゲーム内に設置された運営管理室でゲームの管理を行っている。
「主任。テイムできるモンスターを増やしてくださいよぉ。モフモフが足りないでーす。」
「糸谷先輩。そんな余裕は今はありませんよ。大型イベントの準備を進めないといけないのですから。」
「えー。」
「野々村の言うとおりだ。今はイベントの調整を進める時だ。無事に終わったら検討しよう。」
「ホントですか!?」
「お前の働き次第だが。」
「そういうことなら任せちゃって下さいよ!」
デスクの上でぐったりしていたダメ人間っぽさはすっかり消え仕事人のような佇まいとなる。
「先輩…今まで本気じゃなかったんですか…」
「ん?本気だったわよ?ただ全力じゃなかっただけかな…?」
「はぁ。」
主任はメンバーの相変わらずのマイペースぶりに溜息をつくのであった
「イベント調整頑張れー。俺はフィールドの管理頑張るからよ。」
「斎藤。安心しろ。」
「何がです?主任。」
「お前にはイベントのフィールド設定を担当してもらう。」
「…」
「残念だったわね。自分一人が楽しようだなんて考え甘っちょろいのよ。」
「行き遅れの三十路が(ボソッ)」
「斎藤先輩…」
「ん?どうした?中村。」
斎藤は背後に尋常ではない負のオーラを感じる。
「痛だだだだだだだだだだ!?」
糸谷が斎藤の頭を拳で両側からグリグリとするのであった。終わった後あまりの痛さに悶絶する斎藤であった。
「先輩…やりすぎじゃありません?」
「かなこちゃん。これはマッサージなの。頭が凝っちゃっている人にはよく効くみたいよ。かなこちゃんも体験してみる?」
「いえ!遠慮しておきます!」
野々村はすぐさまモニターの方に視線を向けるのであった。そして今日も何事もなく終わろうというときにある文字が中央モニターに表示された。
”バルナスの町解放”
「「「「「は?」」」」」
5人の感情が初めて一致したときであった。
「どういうことだ!」
「わ。分かりません。」
「ありえないです…」
「バルナスはまだ随分と先の町のはずよ。解放される訳がないわ!」
「落ち着けお前ら。原因調査を進めておけ。俺は外の連中にこのことを伝えてくる。」
主任はログアウトしてその場から立ち去るのであった。暫くして主任が戻ってきたころには原因が判明していた。
「主任。お疲れ様です。原因はこのプレイヤーです。」
ツカサの情報がモニターに表示される。
「成程。チュートリアル中に寝落ちか…それで強制ランダム転移になったということか。それで今はどこにいる?」
「バルナス牢獄です…」
「ん?どうした?そんな深刻そうな顔をして。」
「バルナス牢獄は重罪人専用の牢獄なのです…結果プレイヤーは罪人扱いに…」
「それは問題ないだろう。キャラを作り直せばいい。」
「そうでしたね!それがありましたね!」
中村は浮かない表情から一転安堵の表情を浮かべる。
「バルナスが解放されたことは想定外だったがプレイヤーはキャラを作り直さざるをえない。そのプレイヤーがキャラを消したらバグということでバルナス解放はなかったということにすれば問題ない。」
「そうですよね。うんうん。」
しかしその考えは呆気なく打ち砕かれるのであった。
「…裏ギルドが解放されました…。」
中村の声が部屋に響き渡るが誰も反応しなかった。いやできなかった。ツカサの異常な行動と偶然に重なる偶然に全員言葉を失っていたからである。
「何故こんなことになったかと言いますと…要因は三つで一つ目はこのプレイヤーが少年であったこと。二つ目は医務室に奇跡的にエレオラがいたことが挙げられます。そして三つ目にこれらの称号です…。」
中村の説明を呆然と聞く4人であった。
「分かった…バルナスは現状放置で構わない。プレイヤー達には隠しルートで解放されたとでも告知しとけば良い。バルナスの裏ギルドはどのみち解放される予定だった。それが早まったと考えればいいだけだ。」
「成程…」
「あのプレイヤーはどうするの?」
「あの当たりのモンスターは初期装備で倒せるレベルではない。」
「それもそうね。」
「殺され続けるのが嫌になってキャラを作り変えるってことですか?」
「そうだ。そのプレイヤーには何らかの形の補償をしよう。そうすれば問題ないはずだ。」
「なんだ。心配して損したぜ。」
彼らは間違ってはいない。ただ彼らは想定できなかった。ツカサが想定外の行動を取りNPCだけの裏ギルドに加入することなど。
PS5楽しいのは良いんですが時間が喰われていく速度が半端ではないw