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空の青さ

作者: 秋元智也
掲載日:2020/05/22

空を自由に飛ぶ鳥は、果たして自由と呼べるのだろうか?


「今日もいい天気だ!」


晴天。雲一つない青空だった。

今日の飛行訓練は築城基地から、4機編成で富士山をぐるっと周り入間基地に向かうものだった。

もちろん初めてではない。

が、今回はチームに新しいルーキーが加わる。

横山優-よこやまゆう-新人で期待のルーキーと噂されていた。

彼は今日の訓練からチームレッドバレッドに所属する事になった。

それ以外のメンツはお調子者の香坂巧-こうさかたくみ-。

ちびだが、冷静沈着。いざという時は先導を走る瀧本良治-たきもとりょうじ-。

所属は長いが、なかなか上官に上がれな残念イケメン、瀬戸哲司-せとてつじ-。

連携はそれなりに取れていると、お互い自負している。

巧にはいつも、富士山の頂上付近の山小屋で見かける女性が気になっていた。

もちろん始めは何で登山者あるまじき軽装で山に来てるんだろう?

という懸念はあったが、それが毎回となると登山者じゃなく山小屋の管理をしているのでは?

と思うようになった。

いつものコースならきっと彼女は真っ白なワンピースで湖の側にいるはずだ。

それを見るのが、楽しみになってきていた。

いつか、会いに行ってみようと心に近い景色を見下ろしている。

整備士達が慌ただしく行き交う中、ルーキーが隅っこで空を眺めていつのに気づいた。


「よ!今日の訓練が心配か?俺達は毎回行ってるコースだからな〜そんなに心配しなくてもしっかりついてこれば大丈夫さ」

「心配?そうですね〜あまりに晴れていて、、、怖いくらいです。」

「?、、、いいことじゃねーか!景色も良く見れていいぞ〜」


心配するところがズレている気がするが、新規生の中ではずば抜けて優秀だと聞いていたので心配はいらないのかも知れない。


「おーい、そろそろ集まってくれ!」


瀬戸の声が聞こえてきた。


「知っていると思うが今回コースはこの築城基地から富士山を経由して入間基地に向かう。向こうに無事着陸して、初めて完了となる。最初は俺の後を隊列Aで飛ぶが途中で良治を先頭に隊列Bに変更する予定だ。質問はないか?ないなら、各自機体に乗り込め。管制塔の合図で出発だ!」


ビシッと姿勢を正し、敬礼をすると各自自分の機体に乗り込んだ。

いつもと変わらぬ天気に、変わらぬ行動、時間厳守で動いていく。

管制塔からの合図で一基づつ飛び立つとそのあとは間隔をあけての起動訓練。

けどそれから。。。


「横山、なかなかいい動きでついて来てるな!その調子だ」


瀬戸の声は順調であることを感じ取っていた。

そのまま隊列Bへと移行して富士山の山頂付近を通過していく。

巧は、傘下をちらちらと見ながら彼女の姿を探す。

すると山頂付近の岩の上に彼女を発見した。

心躍り、覗き込むように下を見たときである、突如無線が聞こえてきた。

それはルーキー、横山の声だった。


「乱気流だ、直ぐにルート変更を!」

「はぁ?天気もいいし、そんな訳が、、!」


いきなりの発言に目を疑ったが、そのあとに機体にかかる風圧に押され舵が取れなくなった。


「な、、、なにぃっ、、、」

「コントロールが効きません」


先頭を行くはずの瀧本の機体にトラブルが起きたようだった。

ものすごい気流の渦にのまれ機体を保つのがやっとだった。

無線はいっきに雑音が混じり、管制塔の声も届かない。

瀧本は機体の体制を整えながら、このまま飛行は無理と判断し引き返すのも困難に思えた。

助かる道はただ一つ。

乱気流から脱出後、機体が山の表面にぶつかる前に緊急脱出をする方法である。

まともに飛べないのであれば、それしか方法が無かった。

後は他の機体が無事に抜けて、救助を呼んでくれるのを待つしかないのである。

無理矢理機体を直角に向け、乱気流を抜けると自動に切り替え直ぐに緊急脱出のレバーを引いた。

瀧本が排出されたあと、機体は山の中腹へと消えて行った。


香坂巧が乱気流に巻き込まれる前、下を覗き込んでいた。

真っ白なワンピースの彼女に見惚れた瞬間、機体がいっきに制御できなくなった。

無線の横山の声が直前に乱気流に巻き込まれた事を知らせていた。

いつもの簡単な訓練のはずが、一気にハードモードになった気がした。

背筋を冷や汗が伝った。

だが、そこはプロである。

何度も通ったコースなので多少の地形の把握はしている。

逆をいえば、ルーキーの方が心配だった。

慌てて、操作をミスっていないだろうか?と

落ち着いた手つきで操縦桿を握ると管制塔との連絡を逐一入れつつ、無線の声に耳を傾けた。

いたって雑音が流れるのみだった。

機体を立て直すと、すぐさま旋回し入間基地へと進路を取った。

他に追従する機体は無かった。

「ちっ、、、」

こんなに広い空を、今一人で飛んでいたのだ。


横山は乱気流に呑まれる前に気圧の変化を感じた。

一気に流れが変わった気がしたのだ。

無線で言うべきか迷っているうちに危険が目の前までせまっているのを感じた。

無線に手を伸ばすと、乱気流が発生することを伝えた。

だが、それも遅く、たった今巻き込まれてしまったのだ。

抜け出すすべはその渦に向かって舵をきるか、逆に機体がバラけるのを覚悟で反発する方に無理矢理出るかだった。

周りの機体も一切見えなくなって、無線も先程から雑音しか流さなくなった。

横山は無理はせず、乱気流にのまれて行った。

真ん中渦の中心まで行くと風圧も止んで静けさが包み込んだ。

一気に加速し上空へと急上昇した。

このまま一気に抜けようと考えたのだ。

真っ白な視界が裂け、眩しいくらいの光が差し込んだ。

「抜けたっ」

無線をつけ、全員の安否を確認する。

しかし、乱気流に巻きこまれた時に無線危機が損傷したらしく、雑音にしかなからなかった。

管制塔とも連絡が取れず、燃料を考え築城基地にUターンすることに決めた。

機体の損傷はそれほどでもないので帰ることはできそうだった。

後ろには誰もいない。

たった一基での帰宅となった。


瀬戸は非常に焦っていた。

無線は繋がらない上に視界も悪く、メンバー安否もわからない。

下手に動いて接触すればどちらも助からないかも知れないからだ。

いちかばちかの賭けに出るしかなかった。

エンジンを切ると機体を流れに任せて空気抵抗を少なくしタイミングを測って脱出の機会をうかがった。

機体はビリビリと揺れ、いつバラけてもおかしくないくらいの悲鳴をあげていた。

自分は最年長である。こんなところでうろたえる訳にはいかない。

みんなの手本となるくらいでないといけなのに、焦って取り乱している。

情けないばかりだった。

操縦桿をしっかり握り直すと機体が水平になり、周りの景色が鮮やかに開けた気がしたのだ。

一気にエンジンをつけ、全開で飛び出していた。

気流を抜け晴れた空の下に出たのだ。

周りに機体は無く、たった一基だった。

そのまま基地へと向かおうとすると、機体に異変を感じた。

思うように操縦できないのである。

片方の翼に異変が起きたようだった。

考えられるのは一気にエンジンを回したときに何かがモーターの中に入り込んでしまったのだろう?そうなると長く飛行することはできない。

不時着するにも居場所が、、、

近くを見回すと少し先に海が見える。

海に不時着すれば被害も最小限に済むだろう。

そう思うと舵を目一杯切ると海の方へと進路を変えた。

高度はだんだん下がっていく。

自動操縦に切り替えると着地地点を水の上に設定し、脱出ボタンに手をかけた。

何度押しても作動しない脱出ボタンに焦りを覚えながら必死に連打する。

数回の後に浮遊感を覚えると機体からほうり出されたのだと気づいた。

パラシュートを開くと機体が落ちていく方角を眺めていると、あからさまな異変に気づいた。

設定しておいた方向と角度が違っているのだ。

みるみるうちに、機体は思っていた起動をそれて街の方へと落下して行った。

もう、ここからでは操作は不可能だった。

死者が出ないことを祈るしかなかった。

あれば学校だろうか?

大きめの建物に衝突すると、辺りを爆音と煙りが包み込んでいた。


その後の調査で司令塔の指示が遅かった為に危険の察知が遅れたと発表された。

そして事故を起こした瀬戸だけが退職を余儀なくされた。

負傷者が多数出てしまったが、あれだけの事故にもかかわらず死者は3人で済んだのだった。

それでも死者を出してしまった事に対する責任は取らなくてはならず。

その後瀬戸は管制塔の方の業務へと変わっていった。

 

職を失わないのかって?

そこはお役人なので部署が変われば事件も風化して時が解決するという仕組みである。







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