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悪魔使いは悪役に憧れる  作者: 空色
第五章
97/279

悪魔使いは三賢人に招待される④

 

 ◇◇◇



「ねぇ、お爺さん達は偉い人な…………ですか?」


 レヴィは老人達(彼等)への門番の反応から少しだけ口調を直した。一応()()()ならば、ちゃんとしなければと子供心に思ったのだ。


「ほほほ、それなりにな。だが、普通の話し方で良いぞ? 儂等は堅苦しいのは好きではないからのう」


 ほほほ、とドミニクが笑う。レヴィはそういうものかと思い、口調を直すのを止めた。


「さて、()()()()()はどんな薬草が欲しいのかな?」

()()()()()?」


 門を括って門番が見えなくなった辺りでイライアスがレヴィに話しかける。フレディが目を瞬かせた。レヴィはポシェットの中から薬草のリストを取り出して渡すと、ドミニクが目を瞠る。


「こりゃ、大変だな。森の奥に入らなければ取れない薬草ばかりじゃないか。一体これで何を作るんだか」

「ほほう?」 

「駄目なの?」


 レヴィは少し不安になった。レヴィの住む教会の側やアナスタシアの薬草園で薬草を摘んでいた事はあったが、別の場所、それも初めてくる場所での採取は初めてだったからだ。


「そういう訳ではないが…………これを子供一人に取りに行かせるとは」


 うんうんと一人唸りだしたドミニクの様子をレヴィは心配そうに見つめる。


 ──駄目って言われたらどうしよう……。


 不安に思うレヴィだったが、暫く唸っていたドミニクが「儂らと一緒ならばいいじゃろ!」と言う結論に至ったのでレヴィはほっと胸を撫でおろした。


「ねえ、僕良く男の子に間違われるんだけど、おじいさんはよく分かったね」


 少し不思議に思いレヴィが尋ねるとドミニクが笑って、レヴィの頭を撫でた。


「何言っとる! 小さくてもレヴィも立派なレディじゃぞ。そこのと門番は朴念人じゃから気にするな」

「なっ、誰が朴念人じゃと」


 名指しされたフレディが歯を向くと、ドミニクはカカカと笑い声を上げた。


「お前さんの事じゃぞ、ボケたかフレディ。次いでに言うと魔術バカじゃな」


 ドミニクとイライアスがフレディをからかう。この三人はとても仲が良いらしい。


「フレディさん、魔術って」


 レヴィが紅い瞳を輝かせた。


「おや、レヴィは魔術に興味があるのかの? 素質もありそうだが…………フードを取って顔を見せてくれるかな」


 レヴィは少し迷ったような素振りを見せたがフードを取ると艶やかな黒髪と鮮血のような赤い瞳が露になった。


「これは…………また珍しい」

「確かに見事な黒じゃ、珍しいがそれがどうした? 極東なんかじゃ黒髪ばかりと言うでは無いか?」


 フレディが感嘆する。しかし、それが何だとイライアスが尋ねた。彼は医術師であり、その医術師としては髪の色の違いと魔力量や素質は無関係と考えているのだ。


「いや、髪の色だけじゃない。レヴィ君は悪魔使いの素質がある」

「悪魔使いとな! こんな子供がか? フォーサイスは精霊王に護られた国だ。教会が知れば放って置かんのではないか?」

「結界の外に出てより強くなったから確かだろうな。そもそも、素質に子供云々男女は関係がない。素質は素質、本人の意思とは関係が無いものじゃぞ」


 レヴィの側で彼等は寄り集まってレヴィには分からない話をし始めた。そもそも、レヴィが暮しているのは()()なのだ。そして、その教会の神父は精霊使いである。


 ──その()()()()()()()()()()と言うのはどういう事?


 レヴィは首を傾げるばかりだ。三人の話は気になりつつも、今はこの広大なホークウッドの森に興味がいってしまう。それでも最初は三人の側で様子を見ていたのだが、三人が長々と話し込むものだから、レヴィはいい加減飽きてきてしまっていた。


「ふああ……!」


 レヴィは空を見上げ感嘆する。木々の隙間から降り注ぐ日の光のは森の中の植物を照らしている。照らされた葉は瑞々しく輝き、その緑は美しい。

 魔素の多い森と聞いて勝手におどろおどろしい場所を想像していたレヴィはいい意味で裏切られた。


 ──魔素が豊富と言う事は生命力に溢れているという事かも知れない。


 レヴィは森の中を見てそう思った。この森の中は植物が豊富だ。アナスタシアの薬草園も中々多種多様ではあるが、どうやっても範囲が限られる。その点この森は隣国との境にあり、その範囲は数百キロに及ぶ。土地も広大で辺境の森よりも遥かに多くの植生を持っていた。

 上を見上げれば、太い木の幹には別の植物の蔦が絡みついている。下には草ばかりかと思えば、小さな赤や青、白の小花が咲いている。他にも小さな実等もある。

 レヴィには目新しい物ばかりでついつい目が彼方此方に彷徨ってしまう。そのままふらふらと森の中を見て回っているうちに、気付けば三人の老人から随分と離れてしまっていた。





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