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悪魔使いは悪役に憧れる  作者: 空色
第五章
90/279

悪魔使いは悪役令嬢と夜会に行く⑥

 

 ◇◇◇



 ──あいつは何をやってるんだ!? 護衛騎士とはいえ勝手に会場内に入って来るなんて不作法だぞ! それよりも、エミリア嬢は大丈夫なのか!?


 女官長によって追い出されるレヴィの姿を目で追いながらエドワードは思った。

 上座からエドワードは始終を見ていた。内心とてもハラハラしている。


「──王子、顔に出てます」


 内心だけでは無かったらしい。幸い騒動に気を取られて誰もエドワードを見ていなかった。ブレッドに指摘されたエドワードはぐっと顔を引き締めた。


「にしても、あの子大した身のこなしですね」

「そう……なのか?」


 配慮からかレヴィの名前を言わずに告げたブレッドの方を剝いてエドワードが首を傾げると、ブレッドも同じ様に首を傾げた。


「あの人混みの中ああも簡単に目的地まで行けませんよ」


 ブレッドの指さす方を見ると、確かに入口からエミリアのいた場所迄は距離があり、そこに辿り着くまでに大勢の人の姿。


 ──あれ?


 エドワードはふとあることに気付いた。エドワードのいる上座からは会場全体が見渡せるが、丁度、彼女いた場所はどの出入り口からも遠かったのだ。それに各持ち場に配置されている使用人の姿もない。その為、異変に気付いた使用人達が彼女らの側に着くまで時間がかかっていたのだ。


 ──もしかして、誘導されたのか? でも、何故そんな事を?


 頭の中でカーネル男爵家について思い返してみるが、特にこれといった情報出てこず、首を捻った。それに今のノースブルック候爵家にカーネル男爵家が手を出しても何も旨味は無かった筈だ。


 ──ノースブルック領の事件とは関係なさそうだが、カーネル男爵家にもう少し探りを入れてみるか……?


 エドワードは夜会が終わったらすべき事を頭に刻んだ。



 ◇◇◇



「ほほほ」

「これはこれは」

「面白くなってきましたなあ」


 悶々とするエドワードの反対側では、3人の老人達が顔を綻ばせていた。これをエドワードが聞いていれば、きっと「面白くない!」と心の内で叫んでいただろう。


「イライアス、ドミニク、フレディ。今年は()()()者はおったか?」


 楽しげに会話する三人に気付いた国王が尋ねると、三人の老人達はそれぞれ返事をする。


「おりましたとも」

「とても面白い子がね」 

「今年は良い年ですな。ですが……」


 イライアスがちらりと会場に目を向ける。そこには漸く駆けつけた女官長やメイド、騎士の姿があった。


「もう少し見ていたかったのですがねえ」


 と残念そうに言う。これには国王は一瞬目を見開き、苦笑した。あの女官長は国王が騒動に気付いた時点で対処する様に命じた者だ。


「それは残念だ。だが、私としてこれ以上騒ぎを大きくする訳にもいかぬからな」


 この夜会は王族主催の夜会である。今回は特に騒動を起こされたくはなかった。国王はちらりと賓客席を見た。そこには隣国──ローズブレイド王国の皇太子が座っている。

 やや癖のある金糸の髪に深い青の瞳。精悍な顔立ちの彼はじっとこの騒動を注視していた。その眼差しは厳しい。


 ──一体、何を考えているのやら……。


 彼が騒動を起こしたくない理由は、このローズブレイド王国皇太子に弱味を握られたくないからである。

 ここ数年特にローズブレイド王国からの周辺国への来訪が増えていた。それも皇太子や彼の側近。名目上はフォーサイス王国やその他周辺国との関係改善であるが、ただそれだけとは思えない動きもあるのも事実だ。

 勿論、前政権の時と比べるまでも無く、フォーサイス王国にとても友好的ではある。しかし、それでも尚ローズブレイド王国を危険視する声は耐えない。それは、永きに渡りローズブレイド帝国が他国を侵略、蹂躙しようとしていたて他ならならい。

 ローズブレイド帝国最後の王オルディウスを失脚させ、長期間に渡る腐敗政治を終わらせた新王。彼もまた、末端とはいえローズブレイド帝国の王族の血筋であった。それが他国との関係改善の妨げになっているのだ。


 ──『ローズブレイド王国(新王)もまた我等を害するかも知れない』


 ローズブレイド王国を危険視する者たちの声を思い出す。そこには確かに()()があった。それは、新王の血筋故かも知れないし、たった数十年で国を建て直しつつある新王の手腕に対するものかも知れない。何か得体の知れない者への()()があるのだ。


 ──せめて、彼等の()()が分かればよいのだが。


 もしも、彼等(ローズブレイド王国)の真意が本当に他国との関係改善だけであれば、この恐れは軽減されるだろう。


 ──目的さえ分かれば………か。


 さて、一体どうやって探りを入れようかと頭を悩ませる国王であった。




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