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悪魔使いは悪役に憧れる  作者: 空色
第五章
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悪魔使いは悪役令嬢と夜会に行く②

 ノースブルック候爵・マクシミリアンとエミリアが無事会場入りしたのを確認するとレヴィとロイドは使用人用の控室に向かった。一般的な使用人はここで夜会が終わるまで待機しするが、有事の際はその控室からは呼び出されるだろう。

 レヴィは通路を歩きながら、周囲を見回した。一見、通路内の彫刻や調度品や物珍しさからの行動に見えるが実際は違う。


 ──()()()()()()


 レヴィは感嘆した。少し見回しただけで、数多くの精霊な気配がしている事に気がついたからだ。


 ──散策してみたいけど、あまり彷徨くのも問題だよね。


 現在レヴィはノースブルック侯爵家の使用人だ。不用意な行動は避けたい。特に今の服装は目立つ。ロイドなんてすれ違う使用人の女の子達に頬を赤らめさせている。

 実のところ、レヴィとしてはエドワードの住んでいるらしい白亜宮に行きたいと思っている。あそこは多くの精霊がいたので王宮の面白い話が聞けそうなのだ。しかしながら、精霊達が人間の行動にどの程度の興味があるかは不明だし、悪魔使いであるレヴィの相手をしてくれるとは思わないが。


「此方で御座います」


 王宮の使用人に案内されて、控室にやって来てレヴィは目を見張った。そこにはエドワード第一王子の護衛キースがいたのだ。




 ◇◇◇



 きらびやかな会場にエミリアは目を細めた。


 ──眩しい……。


 王族はまだ入場していない様で、先日会ったばかりのエドワード王子殿下の姿もない。 

 マクシミリアンに伴われ、エミリアは挨拶しながら会場を回っていた。その多くは、ノースブルック全侯爵時代からの縁故である。しかし、エミリアの表情は硬く、緊張しているのが伺える。


「エミリア!」


 そんな彼女の様子に気付いたのか、ケイシーが声をかけた。ケイシーは彼女の次兄であるエイダン・リードに伴っている。彼もまた燃えるような赤毛で榛色の瞳をしている。背は高く、がっしりとした体格の青年だ。


「やあ、初めまして。ノースブルック候爵マクシミリアン・ブランドンだ。君がケイシーのお兄さんのエイダン君かい?」

「はい! お初にお目にかかります。リード子爵家の次男エイダン・リードです」


 マクシミリアンがにこやかに言うと、エイダンは緊張した面持ちで答えた。こういった場には慣れていないようだ。


「ケイシーは家でも良く働いてくれているよ」

「本当ですか? 妹は粗野だ……だぁ!?」


 エイダンが突如として奇声を上げたので、マクシミリアンとエミリアはびくりと肩を揺らした。足元を見ると見事にケイシーに足を踏まれたらしい。


「ふふっ」


 ケイシーとエイダンのやり取りが思わずエミリアは笑みを零した。今度はケイシーとエイダンが一瞬目を丸くして、彼女を凝視する。


「ご、ごめんなさいっ」


 その様子にエミリアは慌てて、頬を赤らめさせる。


「少しは緊張が溶けたんじゃない?」


 どうだとばかりにケイシーが胸を張った。その様子にエミリアは可笑しさが堪えられなかった。


 ──ゴォンゴォン……


 開式を告げるベルの音に参加者の注目が一箇所に集まった。上座には背が高く金糸の男性と少年──陛下とエドワード王子殿下である。そして、プラチナブロンドの夫人──王妃殿下。


 ──エドワード王子殿下だわ!


 エミリアは先日会ったばかりの少年に目が惹きつけられた。白い礼服に身を包んだ彼は先日会った時の印象と打って変わって何倍も輝いて見えたのだ。


「──新たに社交界に加わる面々に祝福を!」


 国王陛下の祝辞が終わると、名が呼ばれた順番に国王陛下と王妃殿下に挨拶する。候爵令嬢のエミリアの順番は早く、エミリアは緊張の面持ちで前に出た。その時、ふとエドワードと目がが合った。すると、彼はエミリアに向かって微笑んだのだ。


「!」


 その瞬間、エミリアは胸が高鳴るのを感じた。


 ──やだ、何かしら?


 跳ねる鼓動に戸惑いながらも、挨拶を恙無く終えたエミリアはケイシーが無事に挨拶を終えるのを見守る事にした。

 ケイシーも無事に挨拶を終えたが、その次に呼ばれた令嬢にエミリアの視線が釘付けになった。


「──次! ミランダ・カーネル前に」


 スカートの膨らんだ白いドレス、ふわふわした茶色い髪、潤んだような緑の瞳。成長して更に愛くるしい顔立ちになっているが、エミリアに良からぬ噂が出来た原因とも言って良い令嬢その人だったのだ。


 ──彼女も今年がデビュタントだったのね。


 エミリアは言い知れない不安を胸に覚えた。無意識に掌を固く握っていた。





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