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悪魔使いは悪役に憧れる  作者: 空色
第四章
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第一王子は護衛騎士と捜査する⑩

 エドワード、キース、ブレッドの三人は雑貨屋兼情報屋【砂時計】を出ると急いで王城の執務室に駆け込んだ。そして、此の度の夜会の出席者の名簿を最初から事細かに見直した。勿論、見直しただけでは無い。その出席者の家族構成から所属する派閥、領地の場所、経済状況に至るまで粗方調べ尽くした。

 しかし──


「何も出て来ない!?」


 頭を掻きむしってエドワードは叫んだ。

 そう、王城に戻ってからの数日間、彼等は執務室に籠もって書類を漁っていたが、目ぼしい情報は()()出て来なかったのだ。


「何もって事はないですが……」


 確かに幾つか不正の証拠は見つかった。しかし、今回の件とは関係無さそうなので、後々手順を踏んで対処することにしたのだ。


「あの情報屋に担がれたのでは?」


 ブレッドは胡乱げな目をエドワードとキースに向けた。


「僕等を騙して何の意味があるんだ?」


 全ての表情が抜け落ちた顔でエドワードがブレッドに問う。


「ただの悪戯?」


 ブレッドが一つの可能性を上げた。


「「「……有り得る」」」


 そう口にした3人の頭の中には人を食った様な顔で笑う店主の顔がありありと浮かんでいた。

 書類の山に埋もれた三人は手を止めて口々に散々に店主の文句を言い合った。暫く言い合った後、不意にキースが言った。


「──そもそも情報屋の欲しい情報とは何なのでしょうか?」

「そこからか……?」


 顎に手を当てて思案し始めたキースにうんざりした表情をブレッドは向けた。


「確かに何の情報とは言って無かった。僕等が勝手に今回の件についての情報だと思い込んでいただけかもしれない」 


 ──今になってその可能性に思い至るなんて!


 エドワード再び叫んで頭を掻きむしりたくなった。


 ──この数日間は無駄だったって事!?


 エドワードはがっくりと肩を落とした。夜会は既に明日に迫っている。


「夜会はもう明日だぞ!?」


 エドワードがと悲痛な声を上げた。


「今から店主に会って新たに……といのは流石に難しいですね」

「資料漁りはもううんざりだ」 


 米上を揉みながら言ったキースに頬杖をついてブレッドが嫌そうな目を向けた。暫くキースは悩んでいたが、はっとしてキースが掌をポンッと叩いた。


「もう一つ手はあります」

「何だ!?」


 エドワードとブレッドに身を乗り出してキースに期待に満ちた目を向ける。


「折角、資料を最初から見直したのです。此処は王子が頑張って夜会で情報収集するのはどうでしょうか? 情報戦は貴族の必須項目です。エドワード王子にはいい勉強になるでしょうし」

「それ良いな!」

「それは僕しか頑張らないやつじゃないか!?」


 がっくりと項垂れるエドワードに対し、ブレッドは良い笑顔を向けた。


「大丈夫です。王子は参加者から私とブレッドは使用人から話を聞けば良いのです」

「うむ、それなら……」


 何だか良い様に言いくるめられている気がしない事もないが、他に方法が無いならとエドワードは納得した。情報収集等はブレッドは不得意だろうが、キースは何とかするだろうという期待はある。後は、エドワード自身がどの程度出来るかにもよるだろう。


 ──実戦あるのみ!


 エドワードは自分でいつも通り無理矢理自分の気持ちを上げる事にした。



 ◇◇◇




 ──夜会当日



「眠れなかった……」

「大丈夫ですか?」

「もっと肩の力を抜いた方がいいですよ」


 極度の緊張と心配であまり眠れないまま翌日に迎えてしまったエドワードは青白い顔で椅子にもたれかかっていた。服装は白地に金の飾りが肩についた上着、下は黒いパンツの夜会様の正装に着替えている。側にはいつも通りの二人が控えている。

 王城では夜会の準備が着々と行われ、もう時期大勢の出席者がやって来るだろう。既に到着した者も居るようで王城の前には数台の馬車が停まっている。恐らく出席者の中でも身分の低い者達だろう。


「──そう言えば、ノースブルック侯爵家のエミリア嬢も今回がデビュタントだったな」

「ええ、エドワード王子と同い年ですからね。確かご友人のリード子爵家のケイシー嬢と一緒だとか」


 緊張を紛らわす為に振った会話だが、思いの外明瞭な返答が返って来てエドワードは目を見張った。この数日間、エドワードとブレッドと共に執務室に籠もりきりで資料に埋もれていた筈なのにいつ知ったのか甚だ疑問である。候爵家でも私的な会話はしていなかった。


「母からの手紙にそう書いてありました」


 エドワードの疑問に気付いたのかキースが言った。


「キースの母親はエミリア嬢の乳母(ナニー)だったな」


 納得はしたが、こまめにやり取り出来る母親がいるキースにエドワードは少しばかり羨ましくなった。

 他愛ない話をしている間にも馬車が次々に増えていく。夜になれば王城の広間は綺羅びやかな世界に早変わりしているだろう。


 ──気を引き締めないと!


 エドワードは自身を叱咤激励した。



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