悪魔使いは悪役令嬢と王都に行く⑨
──デビュタント3日前。
最後の調整の為にエミリアとケイシーは白いドレスに身を包んでいた。あれだけ渋っていたケイシーもデボラ夫人に圧されるままである。
──流石、大商会の女主人!
とレヴィは内心で感嘆していた。
現在二人が着ているのはイブニングドレス──夜会用の正装だ。
今回二人にとってはデビュタント。国王を始めとする王族に拝謁するのだ。今回はエドワード第一王子も出席するだろう。国王の子供はエドワードを含めて三人いるが、現在成人しているのは第一王子のエドワードだけである。残りの二人はエドワードの継母に当たる現王妃の息子・第ニ王子のヨーゼフと娘・第一王女のオリーヴィアである。どちらもまだ成人には満たない。
「ケイシー本当によく似合ってるわ!」
「エミリア! お世辞は止めて」
ケイシーを褒めるエミリアの声でレヴィは我に返った。ケイシーは綺麗なドレスに馴染めないのか、エミリアに褒められる度顔を赤くしている。
エミリア自身も真っ白なドレスに身を包み気分が高調しているようだ。エミリアのドレスは滑からなシルクの生地に同じ白の糸で細かな刺繍が施してある。一見ただ真っ白に見えるの白いドレスだが、エミリアが動く度、光の加減でその緻密な刺繍が浮かび上がる。レースで袖は肘まであり、袖が広がっており優美だ。大人しいデザインにも関わらずとても手の混んだ出来である。
一方のケイシーのドレスだが、首の詰まったデザインで袖は無い。特徴的なのは腰にレース出で来た大きなリボンがつていて、ケイシーが動くたびに揺れるのだ。
──二人とも綺麗だなあ! でも、エミリア様は悪役令嬢っぽくない!
キャッキャッと盛り上がるエミリアとケイシーの側で、レヴィは内心で不謹慎な事を考えていた。そして、意識を自分に戻した。そのレヴィは何をしていたかと言うとその横で採寸されていたのだ。
──なんで、僕まで……。
と、内心思わないでもないレヴィであった、
「あら、騎士も正装するものよ」
とデボラ夫人にはにんまりと笑われた。
勿論、会場には大勢の王国騎士がいて、会場を常時護衛している。その上、レヴィ達は会場に入れる訳では無いので正装する必要は無いと思っていたのだ。
──盲点だった!!
レヴィとロイドはお揃いの騎士服をいつの間にか仕立てられていたのだ。正確には仕立てた訳ではなく、元からあった騎士服に手を加えただけなのだが。
「これぞ! 侯爵家エミリア・ブランドン専属の騎士!」
豪奢な扇を仰ぎながら「いいわあ」と一人ご満悦のデボラ夫人にしてやられたと思うレヴィであった。
レヴィが着ているのは上は黒、下は白色で金の飾りが着いているノースブルック侯爵家の騎士の正装だ。それに少しばかり手を加えられている。元々騎士服は多くの騎士の体型に合わせた予備があるので、大仰に仕立てたりはしないが、細かな修正はするらしい。因みに当日は髪もきちんとセットされるらしい。
──これを着てロイドと並ぶのか!?
背が高い美少年と並ぶ自分を思い浮かべ、レヴィは何ともいたたまれない気持ちになった。基本何時も一緒るが、そもそもの体型が違うのであまり格好はしたことが無い。
勿論、侯爵家のお仕着せも同じものだったが、他の使用人達も着ており、レヴィとロイドが二人だけ同じ物を着ている訳ではないのでノーカウントだ。
美少年ロイドと平凡なレヴィとでは優劣が如実に現れるだろう。この騎士の正装は彼の美しさを際立たせるだろう。そして、きっとロイドは数多くの令嬢達から熱い視線を送られる事だろう。
──なんてっ、なんて羨ましい!!
容易に想像出来る事だけにレヴィは内心でギリギリと歯ぎしりをしていた。
「レヴィもよく似合ってるわ!」
「そっ、そうかな?」
邪気の無い笑顔でエミリアに云われると何も言えないレヴィである。
一方のロイドはというと、ヨハンに服装を整えて貰いながら
「レヴィと一緒……!!」
という感動に打ち震えていた。きっと彼が狼の姿になっていたならば、耳を垂らし、ブンブンと勢い良く揺れる尻尾が見えていただろう。その様子を養父は冷めた目で見ていた。
「いよいよ、3日後はデビュタントですね!」
「そうね……」
レヴィが気持ちを切り替える為にエミリアに言うと、エミリアは少し顔を曇らせた。
「心配事ですか?」
思わず口をついて出た言葉にレヴィ「しまった」と思った。エミリアにだって聞かれたく無い事もあるだろう。
「話せばスッキリするかもしれないわ! 良かったら話してみて! だって……と、友達でしょ!」
ケイシーが横から頬を染めて言うと、エミリアは一瞬目を丸くしてから「そうね」とはにかんだ。




