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悪魔使いは悪役に憧れる  作者: 空色
第四章
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第一王子は護衛騎士と捜査する⑧

 

 ◇◇◇



 三人の姿が完全に去ったのを見届けると店主は笑うのを止めた。


「ふう。本当に()()()ですねえ」


 誰にとも無く一人呟いた。

 先程まで目の前の椅子に座っていた金糸の少年の顔を思い出すと口元に微笑を浮かべた。

 彼は貴族の──もっと言えば王族の少年らしくなく表情豊かで、嘘が下手だ。本人は必死で隠してはいるようだが、周囲にはバレているだろう。そして、良くも悪くも彼はとても()()()()


 ──エドワード第一王子。第一王子でありながら実父の国王にすら軽んじられている少年。


 フードをバサリと脱ぎ捨てると枯草色の髪が顕になる。切れ長のアイスブルーの瞳に冷ややかな色が灯っている。


 ──だが、事実は違うだろう。


 エドワード王子がただ本当に軽んじられているだけならば、今頃良からぬ事を企む連中の格好の餌食になっていた筈だ。

 しかし、実際の彼には忠義に厚いとはとは言えないが、腕前の良く、安全な──邪な考えのない、不穏分子と繋がりのない──護衛がつき、そういった類の者達とは遠避けられている。だからこそ、彼は真っ直ぐに育っているとも言える。

 店主から見れば彼は()()()()()()()()()()というよりも、どちらかと言えば()()()()()()()だ。

 店主が思考に耽っていると商品の影からキュキュッと鼠の鳴き声が聞こえた。店主が声の方を向くと赤い目を光らせた鼠達が数匹顔を出す。店主はその中の一際大きな鼠を手に乗せた。手に乗せられた鼠は 店主の方を大人しくじっと見ている。


「ラッタル。お客さんは帰ったよ。さあ、行っておいで」


 店主がその鼠──ラッタルに言うとラッタルは掌からひらりと降り、他の鼠達と共に彼方此方へと散って行った。

 この()こそが彼の情報源であった。勿論、唯の鼠では無い。【旧鼠(きゅうそ)】と呼ばれる東方の妖魔で人に害なす事もあるらしい。

 その昔、店主がこの店【砂時計】を開くずっと前に船荷に紛れているのを見つけたのだ。店主との相性も良く店主の()()としたのだ。

 従魔とは魔女──精霊使いや悪魔使いも含む──が精霊や悪魔、魔獣の類と契約を結ぶ事を言う。つまり、彼はフォーサイス王国に隠れ住む魔女の一人であったのだ。

 魔女の多くはその歴史から人に紛れ、魔女とは知られずに暮らしている。このフォーサイス王国にも多数の魔女が存在している事だろう。


「行きましたね」


 店主は椅子に座り直した。半日後には彼等は店主の望む情報を持って帰ってくるだろう。

 この鼠の従魔は有能で小さな体を活かして町の彼方此方、細い場所や狭い場所、人の入れない場所に入る事が出来るので重宝していた。何より、彼らの集める情報は役に立った。

 ただ、この鼠にも入り込めない場所はある。それが、フォーサイス王国王城である。

 フォーサイス王国王城の中心部には嘗て初代国王と共に国を建国した精霊女王が守護している。この国の()()()()と言っても過言は無いだろう。彼女が認めなければ王にはなれないとまで言われているが、建国以後、問題無く王位継承が行われている事から、これは眉唾だと店主は考えている。

 兎も角、精霊女王の守護するあの城は中心部に行けば行程侵入が難しくなる。陰謀渦巻く王宮内の情報が手に入れられないのは情報屋の店主にとっては痛手である。精霊女王の守護するあの城は中心部に行けば行程侵入が難しくなる。

 しかし、実はもう一箇所侵入出来ない場所があった。それが、エドワードの住む白亜宮だ。その離宮は限られた者しか入らず、人気も少ない為、捨置かれいると思われているが王宮の中で最も守護が強い。

 つまり、そこに住むエドワード彼は王宮内で王子と身分を除いても重要な存在である事が伺える。


 ──しかし、その大事な王子様が市政でたった二人の護衛しか付けずに外歩き……。違和感が拭えませんねえ。


 今まで何も無かったのは運が良かったと言えるだろう。鼠達に周囲を確認させたが、他の護衛は近くにいなかった。


 ──最初に彼に出会った時は、何処かの貴族の子供で王宮との伝手が出来ればいいという程度でしたが、気になりますねえ。


 恩はその為に売った様なものだったが、意外な伝手が出来て店主はにんまりと笑った。店主は立ち上がり、店の奥に入ると占い師の様なローブを脱ぎ捨てると、白シャツに黒いパンツ姿の細みの三十代前後の狐顔の男が姿を表した。

 これこそが雑貨屋兼情報屋【砂時計】の店主であり、魔女カストルの本当の姿である。

 あの占い師の様なローブを脱いでしまえば誰もカストルが【砂時計】の店主だとは思わない。


「さあ、私も情報収集に参りましょうか」


 カストルは楽し気な足取りで店を出た。




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