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悪魔使いは悪役に憧れる  作者: 空色
第四章
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第一王子は護衛騎士と捜査する⑦

 ──雑貨屋【砂時計】


「──で、今度は見つかりましたぁ?」


 アイスブルーの細い目を更に細めて店主が言った。商品を磨きながら尋ねる姿はただ世間話をしているかの様だ。


 ──情報源は店主だろ!


 とエドワードは内心で突っ込んだ。

 最初、彼はオーガストに興味を持っている風であった。彼にしては珍しく、何か分かれば教えろとまで言っていた。しかし、彼等がオーガストを毎回逃しているせいか、見つけられないせいか、段々と店主の自身に対する扱いが乱雑になっている気がするエドワードであった。


 エドワード達は侯爵邸を出ると一度王城に戻ってから怪し気な雑貨屋兼情報屋【砂時計】に再びやって来ていた。

 エドワードは店主の座る机の前にあった椅子に勝手に腰掛ける。


「ああ、恐らく」


 エドワードは短く言うと、机に頬杖をついて店主を見る。店主は何に使うのかよく分からない商品を只管磨いている。


「だが、酷い目にあった」


 少し口を尖らせて言うと店主はちらりとブレッドの方を見た。


「おや、お怪我をされたみたいですねぇ。大丈夫ですかぁ? 腕の良い医師でも紹介致しましょうか?」


 ブレッドは肩に白い包帯を巻いており、怪我をしているのは一目瞭然だった。幸い彼の怪我は出血こそ多かったが、大した怪我では無かった。

 店に入って来た時点で分かっていただろうに、今気付いたとばかりに嘯く。エドワードは更に口を尖らせた。


「当たりだった」


 エドワードが言うと店主は商品を磨く手を止め、エドワードの方を向いた。薄暗い店の中で全身を覆う占い師の様なローブは周りが見えているのか怪しい。


「捕まえられました? 何か分かった事は?」


 店主が彼らしく無く真面目な声で言うので、エドワードも姿勢を正して、無言で首を左右に振った。


「そうですか」

「だが、侯爵に話は聞けた」 

「ほう?」

「エドワード様」


 キースがエドワードの言葉を止めた。侯爵に聞いた話には第二王子ヨーゼフや王妃の事も含まれるのだ。もしも、重罪人と王妃や王子に関わりがあれば王室の大スキャンダルと言う事になる。情報屋に話すにはリスクが高すぎるとキースは懸念したのだ。

 キースはエドワードに視線で訴えるとエドワードも「わかっている」とキースに視線で返した。


「……店主、侯爵から聞いた内容は精査が必要だ。迂闊に話す事は出来ない」

「構いませんよ」


 意外にも店主があっさりと引き下がった事にエドワードは拍子抜けした。彼とは付き合いは長くは無くても、彼の性格はある程度把握しているつもりだった。店主は生来の性分か興味のある事柄にはとても貪欲であの手この手を使ってくる厄介な人物だった。


「ふふ。まぁ、命あっての物種と言いますしねえ?」


 エドワードの拍子抜けした顔を見て間を置いて笑い出した店主はそう言う。恐らく、エドワードとキースの雰囲気からどういった内容か当たりをつけたのだろう。


「すまない。何か分かればまた教える」


 エドワードが真面目腐った顔でそう言うと、何が面白かったのか店主は更に笑い転げた。


「ふふ、別にいいですよお。相変わらずエドワード様は面白いお方だ。それに私は()()なんです」


 意味有り気にニヤニヤと笑う店主にエドワードとキースは顔を顰めた。


 ──店主は何か情報を手に入れたんじゃないだろうか?


 エドワードの脳裏にふとそんな疑問が過ぎった。有り得ない事ではない。彼はプロの情報屋なのだから、もしかするとエドワード達の行動も筒抜けかもしれない。その可能性がすっぽり抜けていた自身の頭をエドワードは殴りたくなった。


「店主。何か()()()()()は入ったのか?」

()()()()は何も?」


 意味深に笑う店主にエドワードはうんざりした。


 ──厄介だ。


()()()()()()()」と彼が以前言っていたのをエドワード思い出した。


 ──新しい情報が欲しければ、情報を渡せって事か!?


 エドワードは頭を抱えたくなった。エドワードの反応が面白いのか店主はまだ笑い転げている。


「ふふふ。エドワード様、私にも手に入れるのが難しい情報というものもあるのですよ。くくくっ」

「え?」


 ──この店主が手に入れられない情報?


 店主の言葉にエドワードは目を丸くする。


 ──これはヒントだ。


 直感的にそう理解する。


「近々、王城では盛大な()()があるそうじゃないですか?」

「ああ、あるな」

「勿論、ご出席なさるのでしょう?」

「!?」


 店主はニヤニヤと笑う。エドワードとキースは顔を見合わせると、直ぐに立ち上がった。


「用事を思い出した! 失礼する!!」


 三人組は急いで店を後にした。


「またのご来店をお待ちしておりまぁす」


 三人組の背に店主はそう声を掛けたが、彼の声三人の耳には入らなかった。



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