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悪魔使いは悪役に憧れる  作者: 空色
第四章
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悪魔使いは悪役令嬢と王都に行く⑥

 レヴィがエドワードを軽く揺さぶると、エドワードは漸くフリーズ状態から復活した。だが、目の前には氷の如き眼差しの青年──エドワードの護衛騎士のキースが鎮座していた。


「キース……?」


 エドワードが恐る恐るキースの様子を伺った。本来ならば立場はエドワードの方が上なので彼の顔色など伺う必要もないのだが。エドワードの様子に彼は諦めたのか溜息を一つ吐いた。


「この件はまた()()

「ごっ……、後日……?」


 それだけ言うと立ち上がって、腕を組み直すと今度はレヴィを見下ろした。レヴィは「僕の番か!」と背筋を正して身構える。対象が自分からレヴィに移った事でで一瞬ほっとしたエドワードだったが、キースの言葉に再び顔を青くした。


「それで、エドワード様の()()だという貴方は此処で何をしていたのですか?」

「ああ、お屋敷の使用人に頼まれた買い出しついでに町を散策していたら、怪しい人影を見かけて──」


 レヴィは経緯を説明した。説明という程内容もなかったのだが、素直に話す事にした。レヴィの話した内容にエドワード達は思い当たる節があったのか顔を見合わせた。


「その屋根の上にいた人物の顔は見ていないのですか?」

「逆光になってたし、登った時はもう居なかったから」


 レヴィがそう言うとキースは少し考え込んだ様だった。


「もしかしたら、今回は()()()を引いたのかも知れませんね」

「ああ、そうだな」


 キースに言葉に、エドワードも同意するように頷いた。そして、ふと思い出したかのようにレヴィを振り返った。


「──ところで、貴方は何処のお屋敷に勤めているのですか? 引き留めたのは私達ですが、早く戻った方が良いのでは?」

「ノースブルック侯爵だよ」

「「!!」」


 レヴィがそう言うと、再度二人は顔を見合わせ、目を丸くした。彼等の様子に一人レヴィは首を傾げたのだった。



 ◇◇◇



「──と、言う訳で連れて来ました!!」


 買い出しから戻ったレヴィあっけらかんとした様子で後ろの三人組を示した。勿論、買い出しの品はきちんと購入済みである。


「何が、『という訳で』よ!」

「レヴィ、話が見えないわ」

「何も説明していない」


 ケイシー、エミリア、キースの順で口々につっこまれるが、当のレヴィ本人はけろりとしていた。エミリア達は頭を抱えた。


「まあ、皆玄関で立ち話も何だし、入って入って!」

「お父様!?」


 後からやって来た侯爵が軽い調子で怪し気な三人組を屋敷に上げようとするので、エミリアは更に頭を抱えた。しかし、侯爵は自分の娘の様子にきょとんとすると茶色い短髪の騎士を指差して言った。


「だって彼、キースでしょう? ()()()()()()の。エミリアは覚えてないかな?」


 その場にいたほぼ全員が凍りつき玄関に立つ騎士とモリーと交互に見た。


「「「「………はああ!!?」」」」


 数秒の間を置いて絶叫が起こる。


 ──通りで。誰かに似てると思ったら、モリーさんだったのか。確かに茶色い髪に青い瞳。顔立ちもどことなく似ている。


 周囲が絶叫する中でレヴィは一人納得していた。


「ええ、そうですわ。にしても意外です。侯爵様が私の愚息の事など覚えてらしたなんて」

「ま、まあね」


 モリーの冷えた視線に侯爵がビクリと震えた。その様子が数分前のエドワードとキースの姿に重なって、レヴィは既視感を感じた。


「聞いてないぞ!」


 小声でエドワードがキースに抗議する。


「お久しぶりです、侯爵様。侯爵様、顔見知りだからといって、ホイホイ屋敷に上げないでください。経歴書にはあった筈ですよ。見てないのですか?」


 侯爵に恭しく挨拶をすると、驚くエドワードにキースが呆れたように溜息を吐いた。事実、エドワードは経歴書をきちんと読んでいなかった。そもそもエドワードの護衛騎士はなろうと言う者がキースとブレッドしか居なかったのだ。つまり、経歴書等はほぼ素通りである。エドワードがちらりととブレッドを見た。


「俺は知りません。興味もないので」


 聞く暇もなくブレッドが答えた。「そうか」とエドワードは項垂れた。


「ところで、この方は何方様なの?」


 エミリアがレヴィに尋ねた。そこでまだ、三人組が自己紹介をしていなかった事に思い至った。

 エドワードは今更だがピシリと姿勢を正して自己紹介した。


「申し遅れました。私はエドワード・ヘンリー・フォーサイス。フォーサイス王国第一王子です。本日はノースブルック領で起きた、人身売買未遂事件の事でノースブルック侯爵にお話を伺いに来た」


 エドワードの自己紹介に再び大絶叫が起こったのは言うまでもない。

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