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悪魔使いは悪役に憧れる  作者: 空色
第四章
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悪魔使いは悪役令嬢と王都に行く⑤

 庭園を抜けた先にあったのは白亜の城だった。この城は白壁で一見質素に見えるが、よく見ると精巧な彫刻が彼方此方に施してあり、上品な美しさを持っていた。また、直ぐに汚れそうな白い壁は汚れ一つ無く、真っ白なままで丁寧に掃除がされている事も伺えた。ただ、確かに城自体は広く立派な建物ではあるのだが、人の気配は疎らで何処か陰鬱な雰囲気を醸し出していた。


 ──これが離宮ってやつかな?


 レヴィは建物を見上げ、ヨハンに見せて貰った本の中にあった建物を思い出しながら眺めていた。


「王妃様が住んでたのかな?」


 先程の文官達の話を思い出して呟いた。何となく陰鬱な雰囲気もそのせいかと考えたのだ。流石に王妃の崩御ともなると国中に通達されるので辺境にまで話が届いていた。比較的最近の出来事なのでレヴィの記憶にも新しい。

 キョロキョロと辺りを見回しながら、壁沿いに進んでいくと上の階のカーテンが揺れているのが見えた。其処には先程見た光の玉と同じものがフヨフヨと浮いている。


 ──何かあるのかな?


 レヴィは首を傾げた。その光の玉はレヴィを誘っている様にも見えたからだ。レヴィは悪魔使いという特性上、あまり精霊が寄り付かない。中位の精霊や人と契約している精霊ともなれば別だが、大抵は逃げて行ってしまう。


 ──怪しい感じは無さそうだけど……。


 念の為、レヴィは靴の先でポンポンと自分の影蹴ってみた。影の中に居るはずの黒犬(ブラックドッグ)からは何の反応も無い。敵意や悪意に敏感なこの犬が反応しないという事は特に危険は無いという事らしい。


「よしっ!」


 レヴィは覚悟を決めると適当な台を探した。恐らく食料品か何かが入っていたと思われる木箱を見つけたレヴィはそれを移動させ台にして適当な木によじ登った。その木の枝からレヴィはカーテンが揺れている部屋のバルコニーに辿り着く。その時、風が一際強く吹いてカーテンが大きく捲れ上がった。


「!!」


 レヴィは赤い瞳を大きく見開いた。カーテンが捲れ上がった先には、大きな青い宝石の様な瞳を涙で潤ませた少年がいた。歳も背丈もレヴィと同じ位、髪は金髪でとても身なりの良い少年だった。


 ──もしかして……。


「君が王子様?」


 レヴィは思わず声をかけてしまった。少年が驚いてこちらを振り向いた。

 声をかけて仕舞ってから、レヴィは流石に拙いと思った。王宮に住むレヴィと同じ年頃で、明らかに身なりの良い少年なんて王族しか考えられない。


 ──人を呼ばれたらどうしよう! 僕捕まっちゃうの?!


 強い風が吹いた事でフードが捲れた事にも気付かず、レヴィそんな事を考えた。


「だっ、誰?」


 少年は青い瞳を大きく見開きこちらを凝視している。レヴィは無理矢理笑顔を作った。


「ふふっ、驚かせた?」


 笑うレヴィに対して少年は未だレヴィを凝視したままだ。その目は泣いていたせいで赤く腫れている。随分と泣いていたらしい。


「何処から入ってきたの?」 


 尋ねる少年に答えずレヴィはぐいっと少年に近付いて言った。


「何で泣いてるの?」




 ◆◆◆




 それがレヴィとエドワードの出会いだった。その後も、夕暮れ時になるまで色々と彼と話してはいたが、正直あまり覚えてはいない。彼が、確かにフォーサイス王国の第一王子エドワード・ヘンリー・フォーサイスである事は聞いた。それ程にレヴィは内心動揺していたのだ。


 ──今更だけど、よく誰にも見つからなかったな……。いくら人の気配が無いと言っても木によじ登ったり、バルコニーに忍び込んだり、気付かれそうなものだけど。エドワードも人を呼ばなかったし、あの後何とか無事に教会に戻れたから良かったものの、見つかってたらどうなっていただろう?


 今考えても不思議だが、運が良かったのだろうと結論付ける事にした。エドワードに再会するまで忘れていた……というより、あれは夢だったのでは無いかとすら思っていた出来事だったのだ。

 レヴィは自分の横で未だフリーズしている少年をちらりと盗み見た。

 金の髪は日の光を浴びて輝き、瞳はサファイアの様に深い青色をしている。よく見れば顔立ちも整っているのだが……。


 ──何だろう? この残念な感じは。


 優しげな顔立ちは人の良さの滲み出ていると言えば聞こえは良いのだろうが、微妙に違う。不遇な境遇による彼自身の自己肯定感の低さのせいか、王子らしからぬ庶民的な雰囲気せいか、彼の良さを全て相殺している。そして、結果的にとても残念な雰囲気の少年と化していた。


 ──何か勿体ない。


 成長した(エドワード)への単純な感想だった。レヴィは一つ溜息を吐くとフリーズ状態のエドワードを揺さぶった。

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