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悪魔使いは悪役に憧れる  作者: 空色
第四章
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第一王子は護衛騎士と捜査する②

 行き先が決まるやいなやエドワード達は地味な装いに着替え、外套に身を包む。そのまま城下の情報屋の元へ向かった。

 結構整った顔のエドワードだが、地味な装いに身を包むと途端にちょっと裕福そうな庶民にしか見えなくなる。その為、これまでお忍びで何度か城下へ出かけた事はあるが、トラブルなど見舞われた事は無かった。なので、今回も同行者は二人の護衛のみだ。喜んで良いのか、悲しんだ方が良いのかと悩むエドワードだった。


「──エドワード様。どうして国の諜報員を使わないのですか?」


 キースが不思議そうに尋ねる。第一王子であるエドワードが態々城外へ出てまで情報収集する必要は無いと思ったのだ。今回は国王からの命令と言う事もあり、使者を使って情報収集も問題は無い筈だ。


「諜報部に頼めば確かにより多くの情報は集められる。しかし、諜報部は既に王妃様の派閥が多い」

「つまり、集めた情報は全て王妃様に筒抜け、手柄は第二王子が横取りと言う訳ですね」

「そういう事だ。しかも、今後ろ盾の無い僕に諜報部の皆が協力してくれるか怪しい……」


 エドワードはげんなりと項垂れる。第一王妃が亡くなって久しく、エドワードは第一王子でありながら、王にすら冷遇されていた。そのせいか、エドワードを軽んじる者も多い。キースとブレッド(この二人)も一見エドワードを軽んじている様に見えるが、基本的に誰にでもこういう態度である。決してエドワードを軽んじている訳ではない。「それはそれでどうなんだ?」 と思うエドワードである。


「自分で言ってて悲しくないんですか?」


 ブレッドに指摘され、エドワードはブレッドをキッと睨む。全く以て迫力の欠片もない。


「お前は空気を読むとかしないのか?」


 キースがブレッド言うと、エドワードはそれはどういう意味だとばかりに今度はキースを睨んだ。当のキースは涼しい顔で、エドワードは少し悔しくなって唇を噛み締めた。


「まあ、何もハッキリしていない状態で国の諜報部を利用するのも憚られるしな! 何か掴めればそれこそ手柄だ」


 エドワードは何とか自分で自分を持ち直して、情報屋の元に急ぐことにした。その後ろに黙って着いていく二人の護衛は肩をすくめた。護衛となってまだ2年程だが、王子の浮き沈みには慣れた二人である。


「──長身の四十代位、髪は灰色で瞳は青の男ですかぁ〜?」


 やたら間延びした声の男はまじまじとエドワードを見た。

 大通りから少し脇道に逸れた場所に情報屋の店があった。見た目は胡散臭い雑貨屋で、名前は【砂時計】。その名の通り砂時計の絵が描かれたは看板が吊るしてある。何に使うのかよく分からない様な物ばかり売っていた。その店主も全身ローブに身を包んだ胡散臭い男だった。雑貨屋の店主というより、占い師といった出立だ。


「で、何やったんですかぁ? その男は」

「詐欺だ」

「詐欺ぃ? そんなのわんさか居るでしょ? 何でそんな奴を探してるんです?」


 店主が怪訝そうに尋ねるが、必要以上の情報を出したく無いエドワードは口篭る。


「知ってるのか、知らないのか」

「知りませんね」

「お前でも知らないのか」


 店主が気の無い返事をすると、エドワードは酷く落胆した。見た目等は色々と思う所はあるのだが、実際この男はかなり情報通で一見何でもない様な些細な事でも知っていた。なので、かなり期待していた。


「まあ、詳しく話を聞けば心当たりもあるかもしれませんがね」


 店主の目が剣呑に光るのを見たエドワードはうっと息を飲んだ。


 ──情報を出したくないのがバレてる!


 はぁと溜息を吐くとエドワードは少し考えてから話し始めた。


「奴隷の売買をしている男だ。一度は捕縛されたが、輸送中に衛兵と仲間を殺害して逃げている」

「成程、奴隷売買は重罪ですし、武術の心得のある危険人物という訳ですね」

「ああ」


 店主は納得した様に頷いた。


「そう言えば……奴隷商と言えば最近はバチェラー商会が随分と羽振りが良かったそうですよ。どんな手を使ったか、貴族の夜会に出入りするようになっていたとか」

「………」


 今思い出した風に店主が話し始めるとエドワードは渋面を作って一瞬黙り込み、それから店主に向って怒鳴り声を上げた。


「やっぱり知っているんじゃないか!!」

「ええ〜? 私は貴方の言う特徴の()は知らないと答えただけですよ? ただ、()()()には心当たりがあったと言うだけで」


 のらりくらりと躱す店主に頭を抱えるエドワード。確かに店主はエドワードの言う特徴の男の事は言っていない。


 ──何で僕の周りはこんな奴ばっかりなんだ!


 一人悶々とするエドワードを後目に店主は話を続ける。


「バチェラー商会のダレルと言う男は趣味が悪く意地汚い男で()()()()の悪党です。ですから、貴族に利用されているというなら分かるのですが、どうもきな臭い」

「どう言う意味です」


 店主の不穏な言葉にキースは眉を顰めた。


「大それた事が出来る男では無いと言う事ですよ。それに私の()()()()()が関与している。貴方達の言う()此方でも調べてみますよ」

「良いのか?」


 珍しい店主の申し出にエドワードが目を丸くすると、店主は顔を覆うローブの隙間からニヤリと笑った。


「ええ。但し、そちらでも何か分かったら教えて下さいね。情報の対価は情報という事で。私に隠し事なんて駄目ですよぉ」


 店主の言葉にエドワードはもう一度渋い顔をした。


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