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悪魔使いは悪役に憧れる  作者: 空色
第三章
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悪魔使いは潜入する⑲

 ──夜


 昨夜の雪は嘘だったかのように空気は澄み渡っており、空は美しい満月が浮かんでいる。

 しかし、反対に医療塔周辺は、彼の容態の急変により重苦しい雰囲気を纏っていた。


「フィンレー様も亡くなってしまうのかしら」

「シッ、縁起でもない!」


 医療塔の付近で使用人の誰かが不安そうに呟やき、別の使用人が窘めた。コソコソと話す使用人達の背後から静かに何者かが忍び寄っていた。彼等は会話に夢中で忍び寄る影には気付かない。「うっ」という僅かな呻き声と共に使用人達は気を失った。


「──さぁ、マーティン急いでついて来て!」


 レヴィが小声でマーティンを誘導する。マーティンが周辺を見渡すと複数の使用人達が気絶したり、眠っていたりする。


「う、うん。あの人達は……」

「大丈夫。気絶してるだけだよ」


 不安に駆られるマーティンをレヴィが宥めながら先を急がせる。先頭をロイド、レヴィ、マーティンの順で連なって進む。ロイドとレヴィが使用人を気絶させ、人目を忍んで医療塔の中を進んでいくのだ。一方のサイモンは別の方向から、睡眠薬の入った香を焚き、外にいる使用人達をを眠らせていた。


「着いたよ」


 レヴィが病室の前に辿り着くと部屋にはテオドールがフィンレーの様子を見ていた。


「テオドール先生」


 レヴィがテオドールに声を掛けた。テオドールが振り返った。特に驚いた様子は無いく、振り返った彼の目はギョロギョロとしており様子がおかしい。


「まさか、そちらから態々出向いてくれるとは思いませんでしたよ」

「テオドール先生?」


 様子のおかしいテオドールにマーティンがゴクリと生唾を飲み込んだ。


 ──やっぱり、この人が()()()()だったんだ!


 レヴィはテオドールの様子に確信を持つ。


「ロイド、テオドールを部屋の中央へ」


 ロイドは素早くテオドールの背後に回り込み、抑えつける。あっさりと捕まった事にテオドールにロイドは少し拍子抜けした様子だ。ロイドはそのままテオドールを部屋の中心に連れて行く。


「マーティン」


 レヴィの合図でマーティンははっとする。マーティンは慌てて水筒に入れられた薬湯を持つと、フィンレーに近付いた。この薬湯はレヴィがアーロン山脈で採取した薬草をサイモンが調合した物だ。マーティンは彼を抱き起こし口元に薬湯を無理やり流し込む。


「ぐふっ」


 飲ませた薬湯はフィンレーの口に上手く入らず咽てしまう。


「飲んで下さい」


 マーティンが祈るような気持ちでフィンレーの口元にもう一度薬湯を持っていく。フィンレーが薬湯を僅かに飲み込むと痣に如実に変化が現れた。それを確認すると、レヴィはテオドールを中心にして床にチョークで魔法陣を描き始めた。


「貴様等、何をしている!」


 異変に気付いた使用人達と執事アラスターが慌てて病室に駆け込んできたが、レヴィは構わず描き続けた。


「悪魔の顕在化です。本来目には見えない悪魔をこの陣の中で具現化します」

「悪魔!?」


 レヴィの言葉に使用人達がどよめいた。


「悪魔の顕在化だと!? それでは悪魔に力を与える事になるのだぞ! 何を企んでいる!!」


 飛び込んで来たアラスターが怒鳴り声を上げた。


 ──企むも何も、ランドルフ侯爵家のご子息様を助けようとしているのに失礼だなぁ。


 レヴィはアラスターを一瞥するが、そのまま陣を描き続けた。一通り陣を描き終わると、レヴィは使用人達の方を見据え嘲笑う。


「失礼だなぁ。今までは"浄化の花"を使って弱体化しか出来なかったんでしょう? だから、悪魔が復活する度に病が流行っていた。禄な封印もしていなかったんじゃないの?」

「我々を侮辱しているのか!?」


 アラスターがレヴィを睨みつけた。その後ろからランドルフ侯爵が現れた。


「あれをお前は退治すると言うのか? ランドルフ侯爵家の人間でも退治出来なかったのに」


 ハリソンがレヴィを睨みつけた。その表情は厳しい。


「まさか!」

「何だと?」


 レヴィはニンマリと笑って答えるとハリソンは目を瞠った。


「こんな上級悪魔中々お目にかかれないのに、退治してしまうなんて勿体ないよ!」

「レヴィ何いってるの!? 退治するんじゃ……!!」


 フィンレーを抱きかかえたままのマーティンが困惑する。


「いいや、使役するのさ。この僕がね」


 言葉と同時にレヴィの紅い瞳が煌々と輝き、魔法陣が勢いよく光を放った。


 ──オオオオオォ……!!!


 陣からは獣の咆哮と強風が漏れ出した。


「な、何だ!?」

「下がって!」


 レヴィが声をあげる。魔法陣から轟音と強風と共に黒い靄が溢れ出す。それは徐々に獣を形取っていく。


「マーティン! 今だ!」

「浄化の花! 悪魔バルバスの力を削いで!!」


 レヴィが叫ぶと、マーティンが眩い光を放つ“浄化の花”悪魔に向かって投げつける。


 ──オォオォォォ!!!


 獣が更に大きな咆哮をあげた。


『我、【茨の悪魔】の名を以て此処に悪魔バルバスとの盟約を求む!』


 陣から()()()茨が伸びるとシュルシュルと獣に絡みついていく。獣は抵抗するが、抵抗すればする程茨は獣にきつく絡みつく。絡みついた茨に獣は引きずり倒され床に叩き付けられる。


 ──オオオオオオォ!!!


 獣が悲鳴を上げた。


『我……、悪魔バルバスは【茨の悪魔】の生命ある限り……御主に従う!!』


 一際強い風が吹き荒れ、窓ガラスが弾け飛んだ。


「キャアア!!」 

「ヒエエ!」



 彼方此方から、使用人達の悲鳴が上がった。強風が収まるとそこには一匹の黒い獅子の様な獣が力無く座り込んでいた。


「バルバス、お前に命じる。フィンレー・ランドルフの病を治せ」

「……御意」


 フィンレーの身体を光りが包むとフィンレーの痣は完全に消えており、顔色も良くなっている。


「フィンレー!」


 ハリソンがフィンレーに駆け寄って無事を確かめる。


「一体何が起きたのだ」


 ──悪魔バルバス。この悪魔の能力は()()()()()()とそれを()()()。この悪魔が齎した病を治したければ、バルバスを捉えればいい。まぁ、上級悪魔だけあってそれが難しいのだけど。


 レヴィは困惑する周囲を見渡してどうだとばかりに胸を張った。

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