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悪魔使いは悪役に憧れる  作者: 空色
第三章
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悪魔使いは潜入する⑱

「そうだ。お前に渡すものがある」


 そう言ってロイドはマーティンに視線を移すと、鞄から何かを取り出した。ロイドが取り出したのは半透明の花だ。


「うわぁ、綺麗!」


 マーティンがロイドが取り出した花を見て目を輝かせた。


「これが、さっきの話しに出てきた“浄化の花”?」


 サイモンも興味深そうにその半透明な花を見る。


「ああ。精霊の泉に咲く花だ。これで邪気を祓えるらしい」

「でも、どうして僕に?」

「お前が持っていた方が良いと、あの精霊が言っていた」

「精霊様が?」


 マーティンが首を傾げながら、じっと花を見つめていると、その横でサイモンは突然思い立った様に鞄からノートを取り出し、パラパラとページを捲り始めた。そして、「これだ!」とノートの1ページを三人に見せた。


「これは?」


 ノートに並べられた植物の名前を見て、三人は首を傾げた。


「これは全てアーロン山脈に自生する植物なんだ。この薬草が流行病に効果があった。つまり、その“浄化の花”と一緒でアーロン山脈に自生する植物は何らかの形で精霊の力の恩恵を受けていた。だから、本来効く筈の無い薬が効いた」


 サイモンは今度は温室で栽培されている植物のリストを取り出して、三人に見せた。


「因みにこの薬草はランドルフ侯爵家の温室で現在栽培されている。効果が出ないのはそのせいかも知れない」


 サイモンが興奮気味にいった。


「確かに同じ薬草でも、育つ場所によって効果が異なる場合もある。“浄化の花”と同様に邪気を祓う効果があったのかも」

「でも、アーロン山脈に自生する植物に邪気を祓う効果があるかどうやって調べるの? フィンレー様で直接試すわけにはいかないよね」

「どうしようか……」


 四人が頭を悩ませていると、突然外がバタバタと騒がしくなった。四人は扉の外の物音に耳をすました。


「フィンレー様の容態が急変した!」


 聞こえた声に四人は顔を見合わせた。




 ◇◇◇



 ──三人が病室を後にした直後。



「──ご覧になりましたか?」


 アラスターが窓辺に佇む男──このランドルフ侯爵家の主、ハリソン・ランドルフに声をかけた。


「ああ、あの子か」


 ハリソンは窓辺から階下を見下ろしていた。その視線の先にいるのは金茶の髪の少年──マーティンだ。


「顔は母親似だな。あの女によく似ている」

「ええ」


 ハリソンは疲れた顔で忌々しげに少年の姿を目で追った。


「何故妻ではなく、あの女の子供なのだ。しかも、おかしな連中とつるんでいる様だな……」


 ハリソンはマーティンから、他の二人に視線を移す。亜麻色の髪の男はランドルフ領でも、腕利きの薬師だと有名だが、流れ者で素性が知れない。もう一人に関しては言わずもがなだ。


「リード子爵は何を考えているのでしょう。タイミングが良過ぎます。今まで(マーティン)が見つからなかったのも、リード子爵のせいなのでは……。彼を探す為に不名誉な噂まで立ててしまいました」


 アラスターは自身の犯した失態に苦悶の表情を浮かべる。幾ら焦っていたとは言え、禄に確かめもせずに似た特徴の子供に声をかけてしまったのだ。子供の側には両親がおり、『人攫い』等とと騒がれてしまった。


「リード子爵はランドルフ侯爵家に恩を売るつもりなのか……何か企んているのではありませんか?」


 アラスターの言葉にハリソンはフンッと鼻を鳴らした。


「あの子爵がそんな事を考えられるものか。謀略、策略とは縁の遠い男だぞ。少なくとも人柄()()は信用出来る。誰かに入れ知恵でもされたならば別だが、そもそもリード子爵家は精霊に護られた家だ。悪心を持つものなど近付けぬ。何にせよ、そこまで気にかける必要派無い筈だ」

「ですが……」


 アラスターは疑念が払えず表情を曇らせる。


「それよりも今、最優先事項はフィンレーだ。あの子の容態はどうなのだ?」

「容態は……悪化する一方です」

あの子(フィンレー)がもし死ぬ様な事があれば、私はあの女の子供(マーティン)を我が家に迎え入れねばならん。今は誰でも良い。あの子を救ってくれるのであれば」


 ハリソンはキツく拳を握り締めた。その時、慌てた使用人が部屋に飛び込んで来た。


「侯爵様! た、大変です!」

「無礼だぞ!」

「構わん。続けろ」


 アラスターが使用人を叱りつけるが、ハリソンが静止する。青い顔をした使用人が慌てた様子で続けた。


「フィンレー様が危篤です!」


 使用人の言葉を聞きハリソンは顔を青くし、急いで病室に向かう。


「テオドール! フィンレーは!?」


 病室に着くと既にテオドールが処置をしていた。


「旦那様」 

「フィンレーは無事なのか!?」


 振り返ったテオドールにハリソンが掴み掛かる。テオドールの表情は固い。


「はい。何とか。しかし、今は一時的に落ち着いていますが、今夜が峠でしょう」


 テオドールの言葉にハリソンはその場に崩れ落ちた。アラスターに支えられながら立ち上がるとテオドールに縋り付いた。


「どうか、どうか……!! フィンレーを助けてくれ!!」


 病室にハリソンの悲痛な声が木霊した。




 ◇◇◇




「今夜が峠らしい」

「急だな……」


 バタバタと走り廻る使用人から事の次第を聞いた四人は再度サイモンの部屋に集まった。


「どうする?」

「どうするもこうするも、今夜やるしか無いね」

「確証が無いのに危険じゃ無いの?」


 マーティンが不安そうに顔を曇らせる。


「魔障はともかく悪魔が相手なら話は別だよ」


「何せ悪魔使いだからね!」とレヴィが胸を張った。


「何もしないよりはマシかもしれない。万が一の時は……そうだな、皆仲良く牢屋に入ろうか」


 サイモンが悪戯っぽく言うと、マーティンは力無く笑った。


「さぁ、皆! 準備に取り掛かろう!」


 レヴィの掛け声と共にそれぞれ準備に取り掛かった。




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