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悪魔使いは悪役に憧れる  作者: 空色
第一章
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悪魔使いは悪役令嬢を仲間にする④

 モリーからの報告を聞いてエミリアは酷く驚いた。


「まさか、オーガストが!?」

「お嬢様、声が大きいです。誰かに聞かれたらどうするんです?」

「うぅ……。だって仕方ないじゃない。人払いはしてあるんだから大丈夫よっ!」

「念には念をです。まだ決まった訳ではありません。それにいくらオーガストが雇用を管理しているといっても、一人では無理があります。協力者がいるのかもしれません」

「協力者なんて! オーガストはお父様が連れてきたのよ!?そんな人が」

「それが一番信用ならないんです」


 困惑するエミリアにピシャリとモリーが言い放つ。


「旦那様は確かに悪い方ではありません。が、少々、お調子者で、騙されやすい。おまけに頭の出来もイマイチです。あれで、よく奥様と結婚出来たと常々思っておりました。お嬢様が、奥様に似て本当に良かったと……」

「……モリー貴女お父様を貶したいの?」


 つらつらと侯爵の欠点を挙げていくモリーにエミリアの目が徐々半眼になる。その様子に気付いたモリーははっとして申し訳無さそうにする。


「申し訳ありません、お嬢様。つい本音が……」

「貶したいのね。それから、そういう事は心の中で言って」


 申し訳無さそうにしてはいるが、台詞はまるで反省していないモリーに半ば呆れた様子でエミリアが言った。だが、悲しい事に思い当たる事が多くて反論できない。


「やはりロナルドさんを呼び戻せれば一番良いのですが」

「どういう事?」

「ロナルドさんは先々代から侯爵家に仕えていらした方。御年を召していますが、とても優秀な方です。必ずやお嬢様の力になって下さるはずです」

「なら、お父様に頼んで……は出来ないわね」


 言いかけて辞めた。エミリアの父がロナルドを追い出したのだ、頼んで呼び戻すのは流石に無理だろう。


「ロナルドに密かに会えないかしら?」


 相談すれば、何か良い解決案を貰えるかもしれないわ!


 思い付きでエミリアが言った。しかし、モリーが苦虫を噛み潰したような顔をして首を横に振る。


「お嬢様、それは出来ません」

「どうして? ロナルドに何かあったの?」

「私もお嬢様と同じ事を考えてロナルドさんの行方を探したんですが──」


 モリーが重々しく告げた。


 ──彼は現在行方不明です。



 ◇◇◇




「楽しそうだな」


 ロイドは食堂で向かいに座るレヴィを見て言った。


「分かる? 詳しい事はまた夜にでも話すよ」 

「ああ、また教えてくれ」


 楽しそうに笑うレヴィを見て、目を細めて微笑むロイド。すると、あちこちで食器を落とす音やぶつかる音がする。いつも澄まし顔の美少年は、少し微笑んだだけでこの破壊力だ。但し、彼の目の前に座る彼の相棒を除く。

 当人とその相棒──レヴィはここ数日で既に見慣れた光景には、眼もくれず黙々とご飯を口に運んでいる。


「お前らホント仲良いよな」


 隣にドカッと乱雑に一人の少年が座る。少年の名はコリン彼はレヴィ達より1ヶ月前に雇われた茶髪の少年だ。確か彼も辺境の村出身と言っていた。


「当然だ」


 コリンは素っ気なく答えるロイドに呆れた顔をする。


「お前なあ。それより、レヴィ良い事ってなんだ?オイラにも聞かせておくれよ」


「別に大した事じゃないよ」


 普段愛想の良いレヴィにまで素っ気なくされてコリンは眉を八の字にさせている。


「気になるじゃん。オイラにも教えてよ。ここってみんな直ぐ辞めちゃうみたいで、オイラ友達いないんだよ~」


「そんな事は知らん。俺のレヴィから離れろ」


 情けない事を言っているコリンを冷たくあしらうロイドだが、言った台詞に周囲が凍りついた。


「俺のって……」

「ロイド、止めて。誤解される」


 レヴィに冷たく言われて「誤解って?」とロイドは不思議そうに首を捻っている。その後ろに頬を染め、何やらヒソヒソと話す女性陣が見えたが、気付かない振りをした。甚だ不本意である。


「それより、コリン。そんなに直ぐに辞めちゃうの?こんなに待遇良いのに?」

「そっ、そうなんだよ。おかしいだろ。3ヶ月前に辞めたやつとオイラ仲良かったんだ。そいつも、遠方の村出身でな。オイラみたいなのは、普通なら侯爵家でなんて働けないだろ。待遇だって悪くない。なのに突然居なくなっちまって。友達なら何か一言くらいあっても良いだろうに」

「突然居なくなったの? 何の前触れもなく?」

「友達だと思われてなかったんじゃないか? 俺とレヴィの間には強い絆が──」

「ロイド、止めて」


 レヴィは、コリンの心の傷を抉りつつ、周囲に誤解を撒き散らしていく相棒を静止した。ロイドはコリンに恨みでもあるのか。とレヴィは溜め息を吐いた。


 ──コリンの言う事が本当ならば、使用人は解雇されている訳ではなく、居なくなっているという事は確定で良いだろう。モリーの様子から、恐らく犯人はオーガストだろう。そうでなければ、使用人の雇用を管理している執事の彼が気が付かない筈がない。なら、居なくなってる使用人達は何処へ行ったのだろうか。


 1日の仕事を終えて、早々に自室に戻った。昼間騒いでいたコリンがやって来るかと思っていたが、何故か生暖かい眼で見送られてしまった。心当たりが在り過ぎて辛い。

 早速二人は今後の方針を話し合う事にした。議題は『悪役令嬢育成計画第一段オーガストを排除しよう!』だ。


「さて、ロイド君。オーガストの悪事を暴いてお嬢様の信頼を得る為に必要なことは何だと思う」

「オーガストってのをボコッて吐かす」

「……うむ、もう少し平和的なやり方でお願いします」


 流石脳筋。拳にものをいわせるか。


「何故ダメなんだ。一番手っ取り早いだろ?」


 首を捻るロイドにレヴィは苦笑しながら説明する。


「確かに手っ取り早いけど。相手は侯爵家の執事で僕達は辺境の孤児。万が一にもしくじった時には僕達は不利になる。だから、確実な証拠と証人が必要になる」

「なるほど」


 納得した様子のロイドにレヴィは満足そうな顔をしたが、「だが、しくじらなければ良いだろう」とロイドに一蹴されてしまった。ガックリと項垂れるが気を取り直して続ける。


「居なくなってる使用人の所在を見つける。そうすれば、オーガストが何をしているか一発で分かるからね。情報収集は僕がするとして、ロイドはオーガストを見張って欲しいんだ」

「見張るだけでいいのか?」


 訝しげにレヴィを見る。若干つまらなさそうにしているが、そのまま続ける。


「見張って、オーガストの1日の行動を細かく調べて欲しいんだ。そこから何か分かるかもしれない。重要任務だよ!ロイド!!」

「重・要・任・務!!」


 重要任務と聞いてロイドは目を輝かせた。チョロい。とレヴィは思ったが、顔には出さないでおいた。

 ウキウキと浮かれているロイドを後目にレヴィは空中に魔法陣を描く。赤い稲妻と共に拳二つ大の黒い塊が三匹現れる。その黒い塊は大きな紅い目、ピンと尖った耳、ぽっこりした腹、鉤のある長い尻尾とコウモリのような羽を持っていた。彼らは小悪魔と呼ばれる者でレヴィと契約している。喚ばれた事が嬉しいのかキュイキュイ、ピイピイ、ギュイギュイと耳障りな鳴き声を上げている。 



「久しぶりだね!キュイ、ピィ、ギュイ!」


 レヴィが左から順に名前を呼んでやると嬉しそうに擦り寄っていく。一見すると不気味な姿をしている彼らはレヴィが物心付く前から側にいた。その為レヴィにはとてもよくなついていた。


『レヴィ会いたかった~』

『久しぶり~。今日は何の用?』

『お菓子くれるの?』


 小悪魔達が口々に話始める。


「今日は君達にお願いがあって呼んだんだ。皆聞いてくれる?」


 レヴィは持っていたビスケットを小悪魔に一つずつ配りながら、尋ねる。


『了解!』


 と声を揃えて返事をした。だがその声はレヴィ以外に聞くものはいなかった。



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