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悪魔使いは悪役に憧れる  作者: 空色
第三章
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悪魔使いは潜入する⑤

 

 日が傾き始め、夕日が室内を照らす。


「次こそは……次こそは……」


 赤く照らされた室内にはブツブツと呟きながら落ち着きなくウロウロと歩き回る金髪の壮年の男がいた。コンコンとノック音がして青い顔の使用人らしき男が入って来ると、男はピタリと立ち止まった。


「報告しろ」


 部屋に控えていた壮年の使用人が入ってきた使用人に低い声で言った。使用人は顔を強張らせ、口を開いた。


「今回も……違った様です」

「違っただと!? 何故! 何故見つからないのだ!」


 男が使用人に向かっていきなり怒鳴り声を上げた。使用人は顔を一層青くさせる。


「旦那様、落ち着いて下さい!」


 別の使用人が悲鳴の様な声を上げた。


「これが落ち着いていられるか! あの女さえ生きていたら、いや、あの女が逃げ出さなければこんなことにはならなかった!」

「あまり大声を出されては、坊ちゃんのお身体に障ります!」


 壮年の使用人の言葉に男がはっとして、部屋の中にある寝台を見た。そこには男によく似た金髪の青年が横たわっている。この青年はこの男の子供だ。青年の顔は青白く、生気が無い。辛うじて息をしているような状態である。特に異様なのは首から肩ににかけてある青黒い痣だ。


「早く見つけなければ……」


 男たちが探している女は既に亡くなっている事がわかっている。男は室内をまた落ち着きなくウロウロする。そして、部屋にある寝台に横たわる若い青年に近づいた。


 ──当家の嫡男はとうとうこの子だけになってしまった。もしこの子が死ぬ様な事があれば、我が家は断絶してしまうだろう。


 この青年はなんとかまだ生きているが、いつまでもつかもわからない。長男と三男が立て続けに亡くなった時から、男の妻は寝込んでしまっている。


 ──何故見つからないのだ。


 男はグシャリと髪を掻きむしった。実はこの男には、もう一人子供がいる。消息をたった女が産んだ子だ。女が行方知れずになっている為、子供の消息もわからない。どんなに探しても一向に見つからないのだ。


「どうして、この子では無いのだ」


 絞り出す様な声で言うと男は頭を抱えた。この子であれば、何一つ問題は無かったのだ。妻が寝込むことも、他の子たちが亡くなる事も無かったのだとそう思えて仕方がない。


「今、腕の良い薬師を探しています。ですから、どうかお気を確かに」


 使用人の男が、そっと男の側に寄った。


「何がいけなかったのだ」


 この男の子供達が、床について既に2ヶ月以上経とうとしている。


「一体、何時になったら……」


 日が完全に沈み、男の悲痛な声が薄暗くなった室内に溶けて消えた。




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