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悪魔使いは悪役に憧れる  作者: 空色
第二章
32/279

悪魔使いは東を目指す⑪

 ──ノースブルック領を出発してから7日目


 レヴィ一行はリード領に到着して………いなかった。正確にはリード領の入口付近で足止めを食らっていた。

 途中までは順調だった。ランドルフ領から朝早く乗り合い馬車に乗り、リード領の入口付近まで乗せてもらった。本当はリード領の中心部まで馬車に乗って行く事も出来たのだが、


「マーティンを先に教会に送って行きましょう。音信不通だったんだもの。シスターや他の子達も心配してるわ。私もクレアにも会いたいし」

「そんな、僕は後でも……」

「だって、此処からなら教会の方が近いでしょ? 一度中心部まで行って戻るなんて面倒よ。それに教会に行けば、馬車に乗れるわ」


 というケイシーの一言で先にマーティンの育った教会の孤児院に行く事にしたのだ。

 そして現在──


「──何で元の場所に戻るのよ!」

「ケイシー様落ち着いて!」


 リード領に入ろうとすると何故か元の場所に戻ってしまうのだ。痺れを切らしたケイシーが明後日の方向に向かって吠えている。先程からこんな調子でリード領入る森の入口付近で足止めされている状態だ。


「何でって言われてもね」

()()されてんな」


 ロイドが心底嫌そうに顔を顰める。


「邪魔って何よ?」


 振り返り様にケイシーがロイドを凝視した。


「言葉通りの意味だ」

「僕達が入れない様にしてるんだよ」


 ロイドがぶっきらぼうに言放つ。その横でレヴィがロイドの台詞に補足しながら答えるとマーティンが首を傾げた。


「誰が、何の為に?」

「リード領に出入り出来なかったなんて、今までそんな事一度も聞いたことないわ」


 ケイシーがそう言うとマーティンも大きく頷いた。


「その()()は恐らく《精霊》だろうね。理由はやっぱり、僕とロイドのせいだと思う。ケイシーやマーティンを入れない様にする意味は無いだろうし」

「どうするのよ」


 ケイシーが不安そうに眉を下げる。このままだと、日が暮れてもケイシーやマーティンは家に帰ることは出来ないだろう。


「まあ、方法はあるよ」

「「本当に!?」」


 レヴィが胸を張るって答えると、ケイシーとマーティンの瞳が一気に輝いた。しかし、その横でロイドが眉間に皺を寄せる。


「俺は、オススメはしない」


 何時もレヴィに賛同するロイドだが、今は何故かとても渋い顔をしている。その表情を見てケイシーとマーティンは酷く嫌な予感がした。


「一体、どんな方法よ」


 ケイシーとマーティンが不安そうにレヴィを見る。


「森全体を燃やす」

「はあ!?」


 レヴィがどうだ! とばかりに胸を張ると、ケイシーとマーティンが唖然とする。


「レヴィは加減を知らないんだ。森と一緒に俺達も丸焦げ決定だな」

「「な!?」」


 ロイドの一言で更に顔を青くする二人。


「駄目に決まってるでしょ!?」

「要は、僕達を入れなくしている相手をお引き出せば良いのだから……」

「何で燃やすって発想になるのよ!」

「大丈夫、大丈夫!」

「アンタの『大丈夫!』はいい加減聞き飽きたわよ」


 ケイシー怒られ、レヴィは態とらしくぷくーと頬を膨らませた。


「仕方ないなー。もう一つ方法はあるよ」

「何よ」


 ケイシーが半眼でレヴィを見るとレヴィはニッコリと笑って答えた。


「ケイシーとマーティンだけリード領に行く」

「それだけ? アンタ達はどうするのよ」

「ここで待つしかないよね」

「だな」


 ──まあ、上手くいくか分からないけど。


 レヴィは心の中で呟いた。

 レヴィとロイド()()をリード領に入れない為に精霊が魔法をかけているならばこの方法で十分だろう。ただ、精霊は人とは違う。()()()()()では無く()()()()()に対して魔法をかけていたならば意味はない。ただ精霊が何を条件にしているか分からない以上、試す価値はあるだろう。


「じゃあ、行ってくるわね」

「うん、いってらっしゃい」


 呑気に道端に座り込んだレヴィと言葉を交わしてマーティンとケイシーが神妙な面持ちで森に入って行った。


 ──結果、ケイシーとマーティンは元の場所に戻って来た。


「お帰り」

「…………」

「駄目だね」

「………………」

「僕達がはなれれば入れると思ったんだけど……」

「もうっ、何なのよ!?」


 我慢の限界に達したのかケイシーが身体をプルプルと震えさせながら叫んだ。


「仕方ないな………よし!」

「あ!」


 待ってましたとばかりにレヴィが立ち上がる。気付いたロイドが止める間もなくレヴィの足元から小さな火の粉が散った。火の粉は一瞬にして大きくなり、火柱が渦を巻くように上がっていく。

 火柱が身体を包み込む程大きくなった時、レヴィは異変に気が付いた。


 ──あれ……?


 ハッとして辺りを見回すが、辺りが白い。


「何これ……? 霧!?」

「どうなってるの!?」

「チッ! 何なんだ」


 森が徐々に霧に覆われていく。動揺するロイド達の声は聞こえるが、霧が濃くなるのと同時に姿が見えなくなっていく。何も出来ない間に霧が周囲を覆ってしまった。




 霧の中に人影が浮かび上がる。その人影はニンマリと笑う。


 ──さぁて、御主の正体暴いてやろうぞ。


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