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悪魔使いは悪役に憧れる  作者: 空色
第二章
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悪魔使いは東を目指す③

「最初からロイドに乗って行くんじゃ無いのね」


 乗り合い馬車に揺られながらどこかほっとしたようにケイシーが言った。現在一行は乗り合い馬車に乗り、ノースブルック領の東の町を目指していた。旅の工程としては東の町まで約2日、山越えに約3日、そこからリード領まで約2日の計7日間だ。


「そうしたいけど流石に目立ちすぎるからね。まず、山の麓の町まで行って、そこから一気に山脈を越えるんだよ」

「山脈を!?」


 マーティンが驚いてレヴィを見た。

 それもその筈、北部ノースブルック領から東部のランドルフ領、リード領に最短距離で行く為にはその間にあるアーロン山脈を越えなければならない。しかし、そのアーロン山脈の山間は非常に険しく通常旅人はアーロン山脈を大きく迂回する道を通る。


「普通は迂回しなきゃならないけど、ロイドに乗っていればある程度険しい道も通れるから」

「険しい道っていうより、殆ど人が入らない様な道だから獣道ばかりだって話だよ」 


 大丈夫なの? とマーティンが不安そうに眉尻を下げた。


「大丈夫、大丈夫! 一応、薬草の採取用の山道もあるみたいだよ」

「アンタ何でそんなに軽いのよ!?」


 不安になるマーティンにつられてケイシーも段々と青褪めている。少し泣きそうな顔になっている。対象的なレヴィはというと笑顔のままだ。


「安心しろ、意外とどうにかなるもんだ」

「どうにかなってくれないと困るわよ!」


 ケイシーに怒鳴られて、ロイドは眉を顰めた。ロイドはロイドなりの励ましの言葉をかけたつもりだったのだが、ケイシーの恐怖心を煽っただけだったようだ。




 ──2日後──



「きゃああぁああ!!」

「!!!!?」


 山間をケイシーの絶叫が木霊する。マーティンの方は今にも気を失いそうだ。

 狼に変身したロイドは三人を背に乗せ、ヒョイヒョイと断崖絶壁を駆け上がっていく。


『五月蝿い』

「ケイシー、口閉じないと舌噛むよ?」


 レヴィがケイシーに振り向き様に言った。


「前見なさいよ! 前! 何でアンタ平気なのよ!?」

「うーん。慣れかな?」

「慣れ!?」


 呑気なレヴィの様子にケイシーとマーティンは驚愕の表情を浮かべ青褪める。

 暫くして、ロイドは山の開けた場所までやって来ると休憩を取る為に3人を降ろす。ケイシーとマーティンは顔面蒼白でぜぇはぁと荒い息をしている。


 ──行きと帰りでこれを繰り返すのかと思うと気が遠くなりそうだわ。


 ケイシーは荒い息を整えながらブルリと身を震わせた。


「う〜ん。初心者にはやっぱり厳しかったかなぁ。これでもまだ、初心者向けなんだけど」


 ──初心者向け!?


 レヴィの言葉にケイシーとマーティンの間に衝撃が走る。二人は同時に勢い良くレヴィを見た。そんな二人にレヴィはキョトンとした表情を向けた。一体、普段どんな事をしたら、此れを初心者向けだと言えるのか全く理解出来そうにない二人であった。


『ふん。軟弱な奴らめ』

「アンタらが異常なのよ!」


 ロイドの悪態にケイシーはすかさず言い返す。ケイシーの方はまだ言い返せるだけの元気はある様だ。


 ──ケイシーは意外と元気だな。良かった良かった。


 などとレヴィの方は呑気に考えていた。


「さあ、しっかり休んだら今日は野営する準備を始めよう」


 そう言いつつ、レヴィは薪拾いを始めていた。まだ日は高いが今日は此処で野営をするつもりらしい。漸く息を整えたマーティンがレヴィに声をかけた。


「レヴィ、待って。今登って来たのって、獣道ですら無かったよね? 崖だよね崖!」

「そうそう。ついでに薬草採取しようと思ってさあ。アーロン山脈の崖に生える薬草は高値で売れるって評判なんだよね」


 レヴィは「やあ、豊漁豊漁!」と言いつつ、いつ取ったのか分からない薬草を手に持っている。


「「はぁ!?」」


 ケイシーとマーティンの声が綺麗にハモった。二人は唖然とした表情でレヴィを見つめるがレヴィは特に気にした様子も無い。


「じゃ、じゃあ、もっと緩やかな道もあるって事?」


 マーティンは恐る恐るレヴィに尋ねた。返答を聞くのが恐ろしい。


「あるんじゃないかなあ? まぁ、こっちの方が早いし」

「何でそんな肝心な所がフワッと曖昧なのよ!」


 呑気なレヴィの返答に怒鳴るケイシーと愕然とするマーティンであった。


 ──帰りはアーロン山脈に入る前に山道を確認しておこう……。せめてもう少し緩やかな道を通りたい。


 と心に決めるマーティンだった。


 因みに、このアーロン山脈を越えるの3日間でケイシーとマーティンの二人はレヴィとロイドに()()()()()()が通用しない事を実感する事となった。

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