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悪魔使いは悪役に憧れる  作者: 空色
第二章
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悪魔使いは東を目指す②

「頼み事ですか?」とレヴィは思わず聞き返した。


 驚くレヴィににっこりと微笑みを浮かべロベルトは続きを話し始めた。


「──まず一つ目ですが、リード子爵領に向かう際にランドルフ侯爵領を通り、ランドルフ侯爵家に何か異変が起きていないか確認して来て欲しいのです」


 ──ランドルフ侯爵家……三大侯爵の一つだ。紋章は盾。《精霊の盾》の保有者だ。


「ランドルフ侯爵家というと《精霊の盾》を持つ侯爵家ですか?」

「ええ。今回、当家の《精霊の剣》が狙われた事から、他の侯爵家も狙われていると考えるのが自然ですな」

「でも、オーガストとダレルは捕まっていますよ? 彼等を尋問すれば良いのではありませんか?」


 ロベルトは静かに首を左右に振った。


あの男(オーガスト)がそう簡単に口を割るとは思えません。それに、オーガスト個人の仕業であるとは到底考えられません。何らかの組織ぐるみだと私は考えています。そうであるならば、他の者が動いている可能性が十分にあります。早急に対応すべき問題ですが、私が今侯爵家を離れる訳には行きません。そこで貴女です」

「僕……ですか? 僕が行っても問題ありませんか?」


 レヴィは現在侯爵家に勤めているとはいえ、《精霊の○○》に関してはまるっきり部外者だ。怪しまれたり、下手に警戒されはしないだろうかと心配になる。


「いいえ、確認するだけならば、寧ろ顔が割れていない方がいい事もあるでしょう。幸いリード家とはそれなりに親交があります。ケイシーお嬢様に私が子爵宛に手紙を書いて渡します。リード子爵ならば、きっと協力してくれる事でしょう」


 ロベルトの手紙の内容と、リード子爵次第という事か。ケイシーのあの性格からして、リード子爵は決して()()()ではなさそうだが、協力が得られるかどうかは別問題だ。


「そういう事なら分かりました。僕も()()()()()()調べてみます。──ところで、一つ目という事は他にも頼み事があるんですよね?」

「ええ、もう一つは簡単です。マーティンを同行させて貰いたいのです」

「マーティンを同行ですか? それは何故ですか?」


 レヴィは少し拍子抜けしてしまった。1つ目の内容から無茶ぶりされるのではと考えていた。しかし、難易度は低いが理解に苦しむ。レヴィはロベルトを見た。


「これはまだ私の憶測なので言えませんな」


 そう言ってロベルトは不敵に笑った。



 ◆◆◆



 ──なんか怖いな。手の上で踊らされている感じがする。あちら(ランドルフ侯爵領)に行けば自然と理由がわかるのかな?


「レヴィどうしたの?」 


 ぼんやりと考え事をしていたレヴィはマーティンに心配そうに声をかけられはっとする。


「マーティンはケイシーがどうして嫌がってるかわかる?」


 ああーとマーティンが苦笑する。ケイシーがロイドに乗るのを嫌がるのは何かしら理由があるらしい。


「実はケイシー様は以前乗馬の最中に馬から落ちた事があって、それ以来馬に乗るのが苦手になってしまわれたのです。だから、ロイドに乗るのがきっと怖いんです」


 レヴィは意外だなと思った。ケイシーは一人でマーティンを探しに侯爵領までやって来る様な豪胆な性格だし、狼の姿のロイドを怖がらないので平気なのだとばかり思っていた。


「ちょっとマーティン!?」


 ケイシーが顔を真っ赤にして怒っている。あまり知られたくなかったらしい。


「大体、レヴィは魔法使いなんでしょ! こう、もっと、パッと行ってパッと帰ったりできないの!?」

『無茶ぶりだな』


 ロイドが口を挟むと、ケイシーはキッと睨んだ。


「転移系の魔術って事? 出来なくもないけど……」

「出来るんだ!」

「出来るの!?」


 マーティンとケイシーが目を大きく見開く。ケイシーにいたっては瞳が期待に満ちている。レヴィは気不味そうに目を逸らした。


「でも、僕自身が行った事のある所しか転移出来ないし、自分以外を移動させられないんだよね」


 ──僕の魔術は精度がイマイチなんだよねぇ。


 とレヴィは心の中で独りごちた。

 ケイシーはガッカリしたように肩を落とす。


「でも、魔獣用の鞍もつけるから振り落とされたりしないよ。僕もいるし、安心してケイシー」


 レヴィがそう告げるとケイシーはグッと唇を噛んだ。葛藤しているらしい。


「わかったわよ! 絶対振り落としたりしないでよね!」


 たっぷり数秒かけてケイシーが宣言した。ケイシーの覚悟が決まったので、ようやく出発する事が出来そうだ。



 ◇◇◇



 日が高くなる頃には、出発の準備も整っていた。もとより、レヴィ達は来たばかりで荷物が少ないので準備も早かった。


「4人とも気をつけてね」


 エミリアが態々見送りに出て来て、レヴィ達に声をかける。


「ケイシー様、手紙をよろしくお願いします」

「わかったわ」


 そう言って、ロベルトがリード子爵に宛てた手紙を渡した。ケイシーはそれを鞄の中に丁寧にしまった。


「みんな早く戻って来てくれよな! 待ってるからな!」


 エミリアとロベルトと共に見送りにやって来たコリンが声を掛ける。どことなく……かなり寂しそうだ。


「出来るだけ早く戻って来るね」


 レヴィはそう言って、エミリアとロベルト、そしてコリンに見送られながら出発した。





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