悪魔使いは悪役令嬢を仲間にする⑮
「ロベルトさんからは、ずっと精霊の気配がしていました。しかし、肝心の精霊の姿が無い。それは、ロベルトさんと契約している精霊が《精霊の剣》を守っていたからですよね? 契約した精霊は本来契約主を守ります。だというのに、ロベルトさんが危険に晒されていても姿を見せなかったのは、そう言う事ではありませんか?」
レヴィはロベルトを見て、反応を見る。ロベルトはゆっくりと頷いた。
「私に万が一の事があれば、私と契約する精霊に剣を精霊界に持って行かせるつもりでした。勿論、それが前侯爵様の意志でもあります」
「それは、私を本当の意味で侯爵として認め無い。認められていないという事だろうか」
「いいえ、それは違います」
困惑する侯爵に対して、ロベルトはきっぱりと言った。
「前侯爵様は坊っちゃん……いえ、旦那様を次期侯爵として認めておられました。例え能力不足だろうと、お人好しで頼り無かろうと、多少情けなかろうと今の侯爵は旦那様です。旦那様は侯爵として一番必要な素質を持っていらっしゃいます」
「なら……」
「ただ、剣に関しては別です。《精霊の剣》はその名の通り人の世のものでは無く、精霊界のものです。それ故、あの剣の存在が侯爵家に災いをもたらす様な事があるのではと前侯爵様は危惧しておられました。それならばいっその事無い方が良いのではとの前侯爵様の判断です」
「だから、私にその剣の存在を隠していたのか? つまりは、私達を守る為だったと?」
「その通りでございます。ですが、私が迂闊にも侯爵様のお側を離れた為に侯爵様にご迷惑をおかけしました」
ロベルトは侯爵の前に立ち恭しく頭を下げた。
「っ! ロベルトは悪く無い! 私の方こそ本当にすまなかった。ロベルトまた戻って来てくれるか?」
「侯爵様がお許し下さるのならば。このロベルト、侯爵家とともに骨を埋める所存でございます」
「ロベルト!」
侯爵とエミリアの顔がぱぁっと一気に明るくなった。ロベルトが彼等に信頼されている証しだろう。
「さて、では私達はこれからの事を話合わねばなりません。陛下に報告するにしても侯爵様が彼等に騙されていたという証拠は必要です」
「騙されていたとしても人身売買は重罪よ。証拠があったとしても処罰を受けなければならないのではない?」
エミリアが不安そうにロベルトを見る。
「いいえ、お嬢様、証拠の有る無しは重要です。侯爵様の適性はともかくとして、一味をエミリア様が機転を効かせ捕らえた事、囚われていた者達も一部は無事に保護できている事、これは大きな功績と言えるでしょう。少なくともエミリアお嬢様は処罰を免れる事が出来るでしょう」
「そんなに簡単に行くかしら」
「その様に交渉するのですよ。それに、ああいった輩は叩けば埃が出るものです。他にも騙されている者がいるかも知れません」
侯爵の方をロベルトが向く。
「侯爵様、あの輩達の事で何か思い当たる事はありませんか?」
「直ぐには……オーガストが使っていた執務室を調べてみよう。何か出てくるかもしれない」
「そちらは以前私が調べましたが、行方不明になった子供達の事以外では何も出て来ませんでしたわ」
モリーが冷ややかな視線を侯爵に向ける。
「そっ、そうか……。相変わらず仕事が早いなモリーは」
「ですが、もう一度調べてみましょう。見落としている事があるかもしれません」
少し考えてから、ロベルトが言った。
「分かりましたわ。──所で先程から気になっていたのですが、何故当然の様にこの場にその子がいるのですか?」
モリーはレヴィに視線を向けた。
「助けて頂いていながら疑いたくありませんが、敵ではないにしても、味方とは言い切れませんわよね。ロベルトさんの事を《精霊使い》だと看破したことにしても、貴方のお友達の事にしても普通では無いでしょう? 一体貴方達のは何者なのですか?」
モリーは鋭い視線をレヴィに向ける。しかし、レヴィは気にした様子も無くヘラリとしている。
「何者と言われましても……。紹介状に書いてあった通りなのですが」
少し困った風に答えるが、モリーの目は厳しい。
「本当にただの教会の孤児だと?」
「はい」
レヴィはモリーににこりと笑って言う。
「ただの孤児が《精霊使い》を看破出来る筈は無いと思いますが、違いますか?」
「世の中にはそういう人もいるという事ではないでしょうか」
「それでは答えになっていません」
ヘラヘラと返答をするレヴィに対して、苛立ちからか徐々にモリーの口調が厳しくなっていく。
「モリー!」
その様子を横で見ていたハラハラしていたエミリアが慌ててモリーを窘める。
「ロベルト! そっ、それよりも私の聞きたい事があるの!」
「何でしょうか?」




