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悪魔使いは悪役に憧れる  作者: 空色
第五章
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悪魔使いは三賢人に招待される⑦

 

 雷に寄って抉れた岩の側で、目の前のアーヴァンクはフーフーと鼻息荒く何度も地面をかいている。レヴィは痺れる身体を引き摺りながら、後ろへと下がる。しかし、とうとうレヴィの背が崖にぶつかってしまった。


「ひぇっ」


 ──しまった!


 レヴィがそう思うより早く、アーヴァンクが跳びかかる。レヴィはぎゅっと目を瞑った。


 ──ドスッドスッドスッ。


 鈍い衝撃音が聞こえた。しかし、暫くしてもレヴィには何の衝撃も痛みも無い。恐る恐る目を開くとアーヴァンクは目の前で光の矢を数本受け絶命していた。その後ろにはフレディがいる。この光の矢は魔術師フレディが放ったものだろう。


「──無事か!?」


 イライアスの叫び声が聞こえた。ほっとしたレヴィはずるずるとその場に座り込んでしまった。三人の老人慌ててレヴィに駆け寄って来た。


「怪我は!? 何処か痛い所は無いかの!?」


 駆け寄って来た老人達は皆青い顔で息を切らせていた。それでも、イライアスは素早くレヴィの脈を取り、怪我をしていないか確認していく。


「どうじゃ?」


 イライアスの横からドミニクが顔を出した。


「目立った怪我は無いが、……感電しておるな。先程の雷のせいであろう。命に別状は無い」


 イライアスの診断にドミニクはほっとした顔をした。一方のフレディ何かを思案する様な顔で表情は晴れなかった。




 ◇◇◇




「──最後の薬草はあれじゃ」


 レヴィはイライアスによって治療を受けると、あっという間に痺れも取れて回復した。この治癒の速さにはイライアスも目を瞠る程だった。感電した原因は岩場が湿っていた事とレヴィが直前に水溜まりに足を突っ込んでしまった事らしい。

 その後暫しの休息を挟むと、レヴィはドミニクに連れられて崖の上にやって来ていた。そこには美しい紅紫の花が点々と咲いている。


「おお!」


 レヴィは感嘆の声を上げた。喜びその場で飛び跳ねているレヴィの横でドミニクはふむ、と考え込む。


 ──消炎作用や鎮痛剤、胃痛薬の材料の様じゃが。痛み止め、鎮痛薬でも作るつもりかのう? 他にも手に入りやすい薬草もあるというのに。そもそも、子供一人でホーウッドの森に行かせるとは一体何を考えておるのか……?


 ドミニクの内心は釈然しない。それはイライアス、フレディも同様だった。それぞれ内心ではレヴィに対する疑問が首を擡げていた。

 魔術師フレディはレヴィの使った魔法に興味を持った。あれは古代魔法であり、威力も大きいがその分魔力の消費量も多い。並の術者精霊の力を借りずに使用したなら直ぐに魔力切れを起こしてしまうだろう。しかし、魔法を使用した後もレヴィはピンピンしていたのだ。つまり、魔力量がそれだけ多いという事だろう。

 しかしながら、もっとの根本的な謎があった。()()()()()()()()()()のかという事だ。恐らくはこのレヴィの()()である事は明白だが、古代魔法は廃れてい久しく、知っている者も少ない。フレディの様に魔術について研究している者ならば、フレディ自身も知っている筈だが、レヴィの年頃の子供を弟子にしている者を彼は知らなかった。そもそも魔法を覚えるならば、現代魔法の方が使用しやすいのだ。何故そんな魔法を敢えて教えたのかという事も疑問に思えたのだ。

 そして、もう一人医師イライアスもレヴィの治癒の速さを疑問に思った。勿論、異常に治りが早い人間は存在する。しかし、レヴィの場合は少し違うと考えた。フレディ曰く、あれだけの魔法を使用した後に魔力切れを起こすどころか全く変わりが無かったという点だ。精霊の力を借りた気配が無いならば、レヴィが周囲の魔素を利用或いは吸収している可能性があるのだ。

 そして老人達の意見は一致した。


 ──何とも興味深いではないか!!


 兎も角、このレヴィという()()()()がこの学者肌の老人達の興味を唆ったのは間違いない。

 そこで老人達は考えた。この子供を自らの研究所に置きたいと。その為にはどうすれば良いかと。


「──レヴィよ。もう少し大きくなったら儂らの研究所を訪ねて来ると良い。より多くの知識と知恵を与えてやろう」


 ホーウッドの森を去る時、この三人の老人はレヴィにそう言って去って行った。

 少し勿体つけた言い方をしたのは、この門番に自分達が()()という事を尋ねれば分かるだろうし、誰もが憧れる王立高等学院(アカデミー)の入学資格を得る事が出来るのだ。喜んでやって来るだろうと思っていたのだ。

 それから数年間この老人達は今か今とレヴィが訪ねて来るのを心待ちにしていたのだ。

 しかし、老人達は分かっていなかった。この時のレヴィが認識と言えば──。


 ──親切な()()()()お爺さん達のお陰で課題がクリア出来た。でも、()()()ってよく分からないなあ!


 という程度だったのだ。

 そして、再会する迄の数年間、記憶の片隅からすっかり抜け落ちてしまっていたのだ。



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