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悪魔使いは悪役に憧れる  作者: 空色
第一章
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悪魔使いは悪役令嬢を仲間にする⑨

 

 自室に戻って来たレヴィは目をぱちくりさせ、扉を閉めて、少し考えてからまた開けた。


「何で一回閉めるのよ」

「いや、部屋を間違えたかと」

「あってるぞ」


 レヴィは赤毛の少女とロイドを交互に見て、不思議そうに首を捻った。  


「ロイド、男の部屋に女性を連れ込むのは良くないよ?」

「あら、レヴィってば紳士ね。そこの顔だけの男と違って」

「俺は別に連れ込んでない。コイツが勝手に押し掛けてきたんだ」


 取り敢えずロイドに注意したが、何故か互いに火花を散らし合っている。レヴィ睨み合う二人を不思議そうに見て首を傾げる。


「そうなの、クレア?」

「コイツの名前はケイシーだ」


「ケイシー?」とレヴィは更に首を傾げた。説明がないので全く要領を得ない。


「もう!失礼ね。レヴィと話したいっていうから、わざわざ私の方から来てあげたのに!」


 ケイシーが口を尖らせて、ロイドを睨む。


「僕に?というか、君らいつの間にそんなに仲良くなったの?」

「「仲良くなんかない!」」

「息ピッタリなんだけど……」


 何気無い質問のつもりだったが、全力で否定してくる二人の圧力にレヴィは若干引いてしまった。


「まあ、そういう事にしておくよ。でもなんか嬉しいな。ロイドって僕以外の人にあんまり自分から関わろうとしないから心配してたけど、ちゃんと友達出来るんだ」

「レヴィ……」


 レヴィがのほほんと言うとロイドは白い頬を赤く染めて嬉しそうな顔をする。その後ろで「別に友達じゃないわよ」とケイシーは口では否定していたが、頬を僅かに赤く染めて満更でも無さそうだったので、レヴィは「これが所謂ツンデレか……」と一人で納得していた。


「ところで、僕に何か話があったんじゃなかったの?」


「あ」とロイドとケイシー二人は顔を見合わせる。


 ロイドはオーガストの屋敷内での行動や、ケイシーの友人だったという消えた使用人の事、オーガストを尾行した時の旧館での事をレヴィに説明した。そしてこれから、旧館に行き隠し通路を確かめに行こうとしていることも話した。 


 二人の話を聞いてレヴィは腕を組んで唸る。


「ねぇ、ケイシー。使用人がいなくなり始めたのっていつ頃からか分かる?」

「新しい侯爵になってからよ」

「バチェラー商会と取引を始めたのは?」

「それも新しい侯爵になってからよ。前は別の商会が来ていたそうよ」


「へぇ、短い間によく調べたね」とレヴィはケイシーに関心した。ケイシーも一月程前に雇われたばかりだった。


「そうか。参ったな。この件侯爵様が関わってる可能性がある。しかも、使用人を拐っているとしたら人身売買だろうね」

「やっぱり!」

「それがどうかしたか?」


 ケイシーは薄々感付いていたのか納得したような顔をしているが、ロイドは要領を得ないとばかりに首を捻る。


「もしこの件を暴いて侯爵様が関わってたら、下手すると侯爵一家は極刑になる」

「当然よ!」

「でもね、恐らくお嬢様とモリーさんは知らないんじゃないかな。ロイドの話だけじゃ、侯爵様についてはわからないけど」

「知らないで済まされ無いわ!」


 ──お嬢様達は今調べてる。知ったらどういう行動取るんだろうね。


 憤慨するケイシーを後目に窓の方を眺めながレヴィは考える。それから手を叩いてくるりと二人の方を向く。


「さて、旧館に隠し通路探しに行くんでしょ? 急がないと」

「え?」


 ケイシーがきょとんとした顔をする。レヴィもケイシーの顔を見て小首を傾げる。


「だって、バチェラー商会が誘拐した人達を売ってるんだったんだら、オーガストが商会に使用人を引き渡すのは今日じゃない」

「なっ!!」


 ケイシーが目見開く。


「商品を納品したら、荷馬車が空くでしょ?誘拐した使用人を詰め込むにはピッタリ!」

「あんた早く言いなさいよ!」


 わざとおどけてみせるレヴィを文句を言いつつ、バンと勢い良く扉を開け、ケイシーが飛び出していく。その後にロイドとレヴィが続く。


「…………」

「どうしたの?ロイド」


 旧館へ向かう途中、急に立ち止まったロイドにレヴィが問い掛ける。


「正門の方に馬車が何台か来たみたいだ」

「馬車?お客様かな?」


 レヴィが首を捻る。ロイドも同じように首を捻る。


「ちょっと!あんた達急ぎなさいよ!」


 少し先からケイシーが二人を急かす。


「とりあえず今は急ごう!」


 レヴィとロイドが走り出した。





 ◇◇◇






 エミリアからの連絡を受けたダレルは数台の荷馬車を引き連れてやって来た。


「お嬢様から確認したい事があるとお伺いいたしました」

「はい、父から私のデビュタント用のドレスのお話しをされたと伺いましたの。やはり自分の事ですので、どうしても気になってしまって。夜遅くにお呼び立てしまい申し訳ありません」


 エミリアは申し訳無さそうな様子でダレルに詫びた。


「いえいえ、お気に為さらずに。一生に一度ですから」

「はい、本来ならばいらっしゃった時にお話しするべきでしたのに」


 エミリアは何とも申し訳無さそうな顔をするが、内心ではモリーの為にも一刻は時間を稼がなければいけないわ!とエミリアは意気込む。


「それで、お詫びの印に商会の皆様に軽食を用意いたしましたの。下働きの方達にも是非振る舞わせて欲しいのですが、よろしいですか?」

「お嬢様はお優しい。ですが、そこまでお気を遣われんで構いませんよ」

「いいえ、気持ちだけの細やかなものですから」


 エミリアはにっこりと淑女の笑みを貼り付けた。


「では、お断りするのも失礼ですな」

「では、ご用意致します。下働きの方達は使用人の食堂に、お通し致しますわ」


 エミリアは侍女を呼んで、軽食の準備を用意を言いつける。


「私達はそれまでドレスについての話をいたしましょう」

「そうですな。お嬢様と良い商談が出来ると良いですな」

「ええ」


 一方、モリーは静かに荷馬車に近づいていた。手にはバスケットに入れた軽食をもっている。これならば怪しまれずに荷馬車の中を探れるだろう。


 その時誰かがかたをポンポンと叩いた。


「!!」 


 モリーは心臓が止まるかと思った。それでも、悲鳴を上げ無かったのは誉められていいだろう。モリーが恐る恐る振り返るとそこには、茶髪に琥珀色の瞳の見知った少年がいた。


「ああ、コリンじゃない。驚かせないで」


 モリーはほっと安堵の息を漏らした。


「すみません。あの……モリーさんレヴィとロイド見かけませんでしたか?」

「あの二人は見てないわ?どうかしたの?」

「二人とも部屋にいないんです」


 罰の悪そうな顔をして尋ねるコリンに対してモリーは顔を青ざめさせた。


「いない?」

「はい、レヴィに明日はいつもより早く起きるように伝えようと思って、部屋に行ったんです。でも部屋に二人ともいなかったんです。それで、探してたんですけど、誰も知らないって。ロイドは昼間クレアと一緒だったみたいなので何か知ってるかもって言われてクレアを探してたんですけど、……クレアもいないみたい……なんです」



 顔を益々青ざめさせるモリーに対してコリンの顔色も悪くなる。


「レヴィとロイドとクレアの三人がいないの?」

「はい。あの……三人に何かあったんでしょうか?」


 コリンが不安そうに尋ねるが、モリーは首を左右に振る。


「分からないわ。……貴方、少し手伝って貰えるかしら」


 コリンを巻き込むのは不本意だが、時間がない致し方ないだろう。


「──荷馬車の中をですか?」

「少し探したいものがあるの。中は私が見るから、ここで誰か来ないか見張って欲しいの。出来るわよね?」

「えっ?……はい、わかりました」


 モリーは詳しくは話さず見張り役をコリンに頼むとコリンは困惑した顔で渋々了承した。


「誰か来たら合図してくれる?」

「あ、あの本当に大丈夫なんですか?」

「少しだけだから」


 念のための確認をすると、モリーは一台づつ荷馬車の中を確認していく。不安そうな顔でコリンは荷馬車の外で見張っている。

 全ての荷馬車を見て廻ったが特に変わったところは無かった。


 ──バチェラー商会は関係無かったのかしら?私達の思い過ごし?なら、使用人達は何処へ行ったの?


 モリーが悶々と考えていると、荷馬車から出てきたモリーに気付いたコリンが走り寄ってくる。


「モリーさん、探し物は見つかりましたか?」

「いいえ、無かったわ」

「じゃあ、厩舎の方に止めてあった方ですかね?」

「えっ?」


 コリンの何気無い言葉にモリーは目を見開いた。


 ――荷馬車がもう一台ある!?


「コリン。何処に止めてあったの? 直ぐに案内して!」

「はっ、はい!」


 必死の形相のモリーに、気圧されてコリンが頷いた。

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