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忘却1-22
忘却1-22
俺は畳んであった医療用緊急搬送台を妊婦さんが住んでいる家へと押し入れた。すると青空が「み君。手伝って!」と言った。
家の中へと入ると青空と妊婦さんが居た。破水しているのだろう、床が濡れている。俺と青空が肩を貸して妊婦さんに医療用緊急搬送台へと何とか乗って貰う。
青空は慌てて 外へと出て行く。昇降機を押しに行ったのだろう。俺は電話口側に置いて在った妊婦印の警報器を鳴らす。
これで非常事態である事が各部屋へと伝えられる上に消防署へと通達された。と同時に自身の居場所を教えてくれる代物。
青空が戻って来て押し入れから布団を取り出した後、妊婦さんへと布団を掛ける。夏用の布団だと直ぐ様 分かる。
医療用緊急搬送台の上で妊婦さんが苦しんでいる。俺らは何の知識も知恵も無い、こんな事しか出来ない無力さを感じた。




