番外編 RINFONE(リンフォン)
お久しぶりです。
梅雨ですな!雨がすごいです。
ということで番外編を書きました。
題名で分かる人もいるやもしれませんがホラーです。
今回の主登場
巫凪龍太、桜カオル、パトリシア・ユピテル、神崎紗奈、余語志郎、??
キーンコーンカーンコーン…。
時期は梅雨。
授業が終わった後の喧騒は騒がしい。
外は雨だが、嫌いじゃない。
「授業終わったね龍太くん」
「そうだな。今日はどうしようかな」
「今日は特に何もないわよ?」
パトリシアが俺達に近付いてきた。
「ない?」
「じゃあ今日は生徒会休みだね!」
「ま、まあね?」
「書類やらなくていい!やった!」
カオルは書類仕事があまり好きじゃない。
故にカオルは一般授業が苦手だ。
だがこの学校は二年生になると魔法や魔術の授業が増える。
おかげでカオルは最優秀の成績な結果、苦手でも問題ないらしい。
ソーサリーズバトルと言う魔法使い同士がバトルするという文化がこの学校にあるせいでカオルは負け知らずなのだ。
「ならたまにはみんなでご飯とかいいかもね」
というパトリシアの言葉で一緒に出ることになった。
俺とカオル、パトリシア、余語に紗奈を加えた五人。
俺達は街に繰り出し、何がいいか盛り上がる。
カオルが「あ!」と声をあげた。決まったらしい。
「天婦羅とか!」
「あぁいいわねテンプーラ」とパトリシア。
やってきた天婦羅の店はそこそこいい店だった。
「えらっしゃい。っと魔法使いかい。どんどん頼んでいってくれぇい!」
店の大将。天婦羅大将が俺達の格好…主にパトリシアを見て思ったんだろう。
要するに儲けさせてくれってことなんだろうか。
「魔法使いってそんなに金あるイメージ…あるかもなぁ」
俺の呟きは店の喧騒で幸い誰にも聞こえなかった。
事実パトリシアは俺達より比べ物にならないくらいお金持ちだしな。
通され、俺達は和室の座敷に案内され俺とカオル、余語はテンションが上がったが紗奈とパトリシアは普通だった。
慣れているのかもしれない。
紗奈は広報部。つまりアイドルとして活動している。こういう食事は多いのかもしれない。
俺は紗奈に言った。
「葉山も誘ったが仕事だったから残念だったな…」
「残念て?」
「いや俺はカオル、余語とパトリシア…お前はボッチ」
「失礼かよ!」
「意図があって言ったわけじゃねぇ!」
「しょうがないって、だいたい今日仕事だし」
と紗奈は言った。葉山は紗奈が付き合っている男だ。
今日は来れないとのこと。大人の休みは少ないからな。
深く聞いてもこちらが悪いだけなので気にしないことにする。
「そうか。カオル何頼む?」
「とりあえず天婦羅なんかを頼みたいな!あとご飯を!」
「あいよー」
そして皆してわいわいと料理を食べる中
「あら…」
「どうしたのパトリシア?」
「足元に何か…あらこれは…」
「かんかん箱?」
「志郎は知ってるの?」
「まあうん。忘れ物かな?」
「さぁ…」
とパトリシアは言いながら中身を開けると、多角形の形をした立体のようなのが出てきた。
動かしガチャリと動き開く。
「パズル?」
「みたいね」
そこでようやく俺は二人が何かをしていることに気づき声をかけた。
「何してんだ?」
「龍太、これ忘れ物かしら?」
「かんかん箱?」
「パトリシアの足元にあったんだ」
「忘れ物かもな」
「ふぅん?」
「とりあえず大将にあとで渡すか」
「そうね」
パトリシアはご飯を食べながら持ったパズルを遊んでいた。
飯が終わった後みんな帰路に戻る。
「龍太に言わなくて良かったのかい?」
「大丈夫よ。玩具だし」
パトリシアはかんかん箱だけ大将に渡しパズルだけ掠め取っていたのだ。
「まあ、そうだね。取りに来るかもわからないし」
ガチャリ。ガチャリとパズルを楽しそうに動かす彼女を見て余語も楽しくなった。
~~~~
次の日、
「え?パトリシアが今日休み?。あ、逃がした。」
「わたし追いかける~。ん、連絡だけはあったみたい。でもそれだけだったっぽい」
「任せる俺回復するわ。昨日の天婦羅で胃もたれしたか?」
「そんなにたくさん食べてたっけ?あああうおりゃ!」
俺とカオルはそんな話を生徒会室でゲームしながら喋っていた。
~~~~
ガチャリ…、ガチャリ。
「これは…熊?すごくリアルね」
写真を撮り余語に送る。
すぐに返事が来て、
「体調は大丈夫かい?それ昨日の!今は熊だね!」と来た。
「次を目指すわ」と返し。
パズルを弄る。辞められないのだ。楽しい。完成が見たい。好奇心の性だ。
ガチャリ…ガチャリ…ガチャリ。
音だけが静かに響く。
~~~~~
次の日の放課後
「で、今日も休みだったな」
「うん。連絡来た。休むって」
「それだけ?」
「それだけ。パティちゃんどうしたんだろう?」
「様子見にいくか?」
「先輩達が行ってくれたけど寝てるのか返事なかったんだって」
「志郎は?」
「話してはいるみたいだけど、時々だって。写真送ってくるみたい」
「写真?…なんの?」
「動物だって。熊って」
「つか俺にも話せよあの野郎ぅ」
余語に今ラインで伝えると
「えー」って返事が来やがった。
と、また返事がきた。
「新しい写真なら今来たよ」と。
「…はい?」
俺はその写真を見たいなと考えて返事をしたがパトリシアが見せちゃダメと送っているのか教えてくれなかった。
ちなみにカオルにも教えてないようだ。
「カオル」
「わかった」
俺の顔に書いてあったのだろう。
余語からその話しの関連がきたら俺に教えろというそんな顔をしていたのだろう。
つか俺に見せたくない写真ってなんだ?熊?。
その夜…マンションの天井からカオルがひょっこり出てきた。
ぶち破ったのはカオルだが大丈夫かなこの天井。
直したのは俺だが穴だけはそのままだ。
「どうした?」
「志郎君から来たよ」
「写真か」
「写真じゃないけど鷹だって」
「鷹?鷹の写真?」
「多分?」
俺は考える。
謎だ。
~~~
夜中になり唐突に扉がノックされた…ような気がしたから起きた。
雨音がすごく聞こえていた。
「誰だ…?」
こんな時間に…。
カオル?は…寝てるな…。
俺は玄関を見るとそこには
「っ!?」
ガチャリと扉を開けた。
「……………」
「どうしたこんな時間に…というかパトリシア…?」
綺麗な金色のツインテールではなく降ろしていて、艶も失い…彼女が普段から見せたがらない頭の角が見えていた。
金色の雨幽霊という言葉が脳裏を過ったが
「電話が…」とパトリシアが口を開く。
「電話が来るのよ…」
「いつ?」
「わからない…だけどいっぱい。なぜか不気味で」
「誰から」
「彼方って人からよ…」
「出たのか…?」
パトリシアは頷いた。
「雑踏のような話し声が聞こえたわ…何度も。変な夢も見るようになって…」
彼女は震えているようだった。
「とりあえず入れ…」
頷き、パトリシアは俺の布団に迷わず入りこんだ。
「お…おい」
「ここで寝る」
「…カオルを起こしてくる」
「今日だけ一緒に寝て」
「いやでも」
「一緒に寝て」
「だが…」
「いいから一緒に。言うこと聞いて…」
これは…だだっ子ってレベルじゃないな…。
まあカオルを起こすには時間がかかる。
余語に連絡入れようと考えたその時だ。
Prrrrrrrrrrrrrrrr。
パトリシアがびくりとし俺にしがみついた。
痛い。
着信は非通知だった。
「パトリシアこれ…俺がでても?」
彼女は何も言わずゆっくり頷いた。
俺はゆっくり通話ボタンを押す。
「もしも…」
…俺の意識は闇に引きずり込まれた。
意識が落ちる直前、
『出して』
という声を聞いた。
俺は妙な場所にいた。
暗い谷底を裸の男女が大勢、向かってきて這い上がってきていた。
崖を登り俺は必死になって逃げていた。
俺は無我夢中で喚いていた。
あいつらに追いつかれたら助からない。
早く頂上へ!早く頂上へ!早く!早く!
誰か。崖をただひたすら登り、俺は声も出せず下を見ると生気のない男女が崖を登り、俺を追いかける。
誰か!
そして俺は崖の頂上に手を掛けた。
これで逃げ切れる!
そう思った時、女に足を捕まれてしまった。
頂上に手をかけたのに強い力に引っ張られ俺は下へ引きずり降ろされそのまま落下…。
「連レテイッテヨォ!!!!」
俺を引きずり降ろした女の声だった。
俺は悲鳴を挙げる。落ちていく。
そのまま飲み込まれ
「龍太ッ!!!!!」
「龍太くん!!!!」
突然二人の声が響き、景色が切り裂かれた。
「うわぁぁぁぁぁぁ!!!っ……」
俺は、夢を見ていたらしい…。
汗と涙を浮かべて。
「ゆ、夢か…?」
目の前にはカオルと
「……黒百合?」
珍しい奴が俺の部屋にいた。
霊峰黒百合、パトリシアと同じ世界からやってきた魔法使いだ。カオルよりも濃い長い黒髪を持ち、雰囲気はカオルと似ていた。
「良かったぁ…」
その黒百合は呟きながら脱力しカオルが俺が抱きつく。
「結局どういうことだ…?」
「龍太、覚えてない?」
「あぁ」
「パティちゃんがわたしを起こしに来たの。龍太くんが倒れたって言うから」
「倒れた?」
記憶がない。
「うん。ずっとうなされてるからどうにかしようって思ったんだでもどうにもできなくて…そしたら」
「私が遊びに来たの。そしたら一大事じゃん!それで」
「俺が見ていた夢に介入したのか」
「介入?そんな感じかな。でも私の力じゃ夢を祓うのに足りなかったから」
「カオルと一緒に…か。ありがとう助かった」
相変わらず黒百合は底が見えない。だが彼女とカオルがいてくれたおかげで助かった。
「パトリシアは?」
申し訳なさそうにする彼女がそこにはいた。
「ごめんなさい…」
「いやいいよ。いったい何が…いや……熊に鷹…あれはそういうことか」
やっとわかった。
「パトリシア。お前…リンフォンを持ってるな?」
「「リンフォン?」」
カオルと黒百合が「なにそれ」って顔をしている。
パトリシアは何かわかっているらしい。
小さく頷く。
だがどんなものかまではわからないのだろう。
「リンフォン…ってなに?」と聞いてきた。
正20面体のその置物は「RINFONE」という正式名称であること、また、「熊」→「鷹」→「魚」の順に変形する。
完成が近づくにつれて次々と異変が起こるようになる。
魚が完成した時、地獄の門が開きリンフォンの使用者は死ぬどころではないだろう。周りに多大な影響と被害を与えたかもしれない。
あれは凝縮された極小サイズの地獄。地獄の門。
見つけてもどんなに魔法の才能がある奴でも手を出してはいけない物だ。
説明が終わると
パトリシアは再度「ごめんなさい」と謝る。
俺はいいさと返す。
「でもさすがだよ龍太。正体に気付くなんて」
「二人が助けてくれたからだ」
黒百合は「でも」と続け
「普通夢って覚めるんじゃ?」
最もな疑問だ。たしかにな。
「そのリンフォンがこの人は自分の存在に気付くかもしれない。今ここで絶対に殺さないとって思ったのかもしれない…龍太くんはそれだけこういう事に詳しいから」
カオルの言葉が事実ならゾッとした。
既知であるとこういう時は危険が伴うこともあるかもしれない。
それより今は
「パトリシア、リンフォン今持ってるか?」
「えぇ…持って…あれ……ないわ」
「「「!?」」」
「あれ、ずっと持ってたのに…」
「失くしたのか?」
「そう、みたい…ごめん」
「いやパティちゃんが無事ならいいよ。ね、龍太くん」
「あぁ…そうだな。ないってことはもう大丈夫だろうしな」
その言葉にパトリシアはホッとしたようだった。
「………逃げられちゃったか…」
ボソッと黒百合が何かを呟く。
その声は俺達には聞こえなかった。
「何か言ったか?」
「ううん!今からご飯。朝ご飯三人分、私が用意するよー」
「「「おぉ!」」」
「志郎も呼ぶか。あいつにもこのこと伝えなきゃな」
「そうね…」
「じゃぁパティちゃん、その間にわたしとお風呂だぁー!龍太くん!お風呂借ります!」
「好きに使ってくれ」
「え、ちょっなんでよ!?」
「髪きれいにしないとねぇ!」
「ちょっとカオルやめ!一人でやれるからー!」
カオルに連れてかれるパトリシアを尻目に俺と黒百合は笑う。
そうして、この怪異事件は無事に終わりを告げた。
俺は外を見る。雨はまだ降っていたが…。だけど
梅雨も、もうすぐ明けるなぁ…。
夏が始まる。
ここまで読んでくれてありがとうございます。
今回は都市伝説リンフォンをオレワタで書いてみました。
その正体は20世紀頃に作られた呪具であり、地獄です。
一度ハマると完成するまで止まらないうえに、怪奇現象にみまわれると言われています。
見つけたとしてもスルーしましょう。
好奇心の塊である魔女にはスルーはできなかったようですが。
物語本編自体は現在書き留めをしている状態になっています。ゆるりと待っていてくれると幸いです
今回はここまで。
ここまで読んでくれてありがとうございました