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ロスト・メモリー  作者: 黒草さくら
#2 新たな同類と磨く技術は
15/27

憧れた夢


※6/6 大編集を実施



とても綺麗だった。


踊るように繰り出される無数の剣撃。


相手を寄せ付けない剣の間合い。


それでいてどことなく余裕のある雰囲気をかもし出している。


俺もこんなふうに剣を振れたなら…。


どんなに気持ちがいいだろう。


晴れ晴れするような気持ちになるのだろうか。


それとも…



ーーーーーーーーーーーーーーー



目が覚めるとイフが目の前にいた。

イフと契約してからもう数週間。だいぶこの光景にも慣れてきた。


『おはよう、マスター。夢でも見たか?』

「ああ…。おはよう」


夢…か。


なぜだろう。

不思議とみたことがないという感覚がない。

むしろいつも見慣れていた気がするぐらいだ。


もしかすると…これは俺の記憶…?

失う前の…俺が見て、感じていた本当の記憶。


だとしたら…前の俺は、剣を…?


「…バンに頼んでみるか」

『何をだ?』

「いや、なんでもない」


もしかしたらそれで記憶が…戻るかもしれないな。

しかし…でも、俺は本当に、


本当に(・・・)それを望むのか…?


それだけが…気がかりだな。


「記憶…か」


一体クシンはどうしてるんだろうな。

自分の記憶とどう向き合っているのだろうか…。

直接聞いてみるか。





「…おはよう、フアイ」

『おはようだぜ』


広間に行くとフアイが籠手を磨いていた。

他に人はいない。


「おっ、おはよう、二人共。よくねむれたか?」

『ま、いつも通りだな』

「まぁまぁ…かな。それよりクシンはどこに?」

「ん? どこだろうな…、朝だから散歩じゃないかな?」


散歩、か。

じゃ、散策がてら探すかな。


「わかった。ありがとう」

「いいよ。気をつけてな」






さ、クシンも探すけどバンも探さないとな…。

色々聞かないといけないし。


「バンはどこにいったんだろう…」

『ん? なんか目的があるのか?』

「ああ、実はさ…」


そういってイフに話そうとしたとき、


「どーしたの?」

「うわっ?!」

『うおっ?』


びっくりした…ってバンか。

うん、ちょうどよかった。探す手間が省けたな。


「よかった、探さずにすんだよ」

「ん?それってどういう?」

「実はさ…」


〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「へー。夢で、ね」

「そ、だから教えてもらおうと思ったんだけどさ」

「いいよ、僕も暇だからね」


無事、バンに剣を教えてもらう約束をとれた。

それだけでホッ、としてしまったが本題を忘れてしまってはいけない。

クシンに相談したい。じゃないとすっきりしない気がする。


「どこにいったんだろう…?」

『どこだろうな〜』


クシン。俺が目覚めたら近くにいた人物。

彼は行っていた。自分も記憶喪失なのだと。

だからだろうか。

妙に親近感を感じるのは。

そして、また…





〜クシン視点〜


…また、ここにきていた。

そこは小さな公園で。

僕が…【俺】が…目覚めた場所だった。


今でさえ普通に生活しているが昔…十年前は他人ともまともに話せなかった。

一部の限られた人としか話せなかった。

その、一部はフアイと、バンと、カンムと、ビビンと。

そして…あの《爺さん》。


ここで倒れていた俺を見つけてくれたのが爺さんだった。

彼は俺にとって恩人であり、親のような存在であり…憧れだった。


あんな風になりたいと思った。

誰にでも手を差し伸べられる。まるで身内の様に扱ってくれる。

【親切】を具現化したようなあの人になりたいと思った。


だから爺さんのことはできるだけ助けたかった。

守りたかった。力になりたかった。

でも…爺さんは…


「あ、やっと見つけた」

『クシンはっけーん』


「…レイか」


彼は不思議な人だ。


数週間前のあの日、いつも通りに散歩していたら目の前に空から落ちてきた。

とても驚いた。だって空から降ってきたのだから。

酷い怪我だった。

まるであの日の俺の様に。だから助けた。


そして彼は目覚めた。…記憶を失って。

しかし、なぜかとてもスッキリした顔をしていた。

本人にそんな意識はなかったのかもしれない。

でもその顔からはある気持ちが感じ取れた。



まるで「これでよかったんだ(・・・・・・・・・)」……と。



レイの体が動くようになってからはこの街を案内した。

街の景色を物珍しそうにみていた。

ギルドにも案内した。


「なにしてたの?」

「ここに来た時のことを思い出していたのさ」

『クシンがここに来たときか?』

「うん、そう」


そして冒険者となり難易度が最も高いと言われていた精霊術師にあっさりなってしまった。

その契約の相手が彼の隣りにいる精霊、イフリート。

正直規格外である、としか言いようがない。

精霊の大洞窟での発想も、常人とは違う何かがあった。


しかし、それでも、俺はこの人物に親近感を感じてしまう。


|お互いに記憶喪失だから《・・・・・・・・・・・》。




…と、レイはなにか僕に用があってきてるはず。

物思いにふけってる場合じゃないよね。


「で、どうしたのさ?僕になにか用?」

「ああ、相談にのってほしいんだけどさ…」

「ん?僕は全然いいよ」

「よかった。相談なのは…」




「俺の記憶の話なんだけど」


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