第一章 四話 フードの少女
「アキト殿にはアーサー殿にの代わりに勇者になって頂きたい!」
「拒否する。」
「即答だな!?」
勿論だ。俺は『働かない イズ ベスト』をモットーに生きている。
働いたら負けだ。
「そうか…それなら仕方ないな…」
お、諦めてくれんのか?
「これが何かわかるかっ?」
少女は俺の前にズイっと差し出して見せる。
…どうみても趣味の悪いペンダントにしか見えない…
「これは『死者の棺』というもので死んだ人間を腐らないでそのままに保管し持ち運べれる便利な道具だ。」
死者を持ち運べれる?え、それ便利か?
「よくみてみるがいい。中に居るのは誰だ?」
中にいるのは…
「俺!?」
「正解だ。」
「待て待て!俺はまだ死んでねーぞ!」
「さっきも言っただろう。アキト殿の魂をアーサー殿の体に入れていると。そして、魂の入っていない肉体は事実上、死んでいることになると。」
聞いてねぇよ!初めて聞いたぞ!?
「しかも、この棺を壊したら…ふふふ」
コイツめちゃくちゃ怖い!
「まて!そもそもなんで俺なんだ!?」
「そうよ!勇者様を殺した男よ!?」
「いや、殺してねーよ!?」
「その通り。アキト殿はアーサー殿を殺してはいない。実はその日眠れなくて外に行ったのだ。そしたら家から誰か出てきたんだが、私が近づくと逃げるようにどっか行ってしまった。家に戻ると暗くて余り見えなかったが、確かに二人ともいたぞ。」
「じゃあ、その逃げるようにどっか行った人が犯人なの?」
「恐らくな。」
よ、良かった。これで俺はシロだ!いや、今の俺、全然よくねーな。
「で、なんで俺なんだ?」
「うむ。それは…昨日の食べたものが美味しかったからだ!」
…は?
「あの食べ物がもう忘れられないんだ!出来れば毎日食べたいくらいだぞ!」
待って?俺ってそんな意味のわからない理由で勇者にならないといけないのか…?
「さあ、もう一度聞くぞ。アキト殿は勇者になるのか?ならないのかっ?」
「…わかった、なってやるよ。」
「本当かっ!?」
「ただし!条件がある。」
俺は少女の前に指を突き刺した。
「その棺を俺に持たせろ。」
「よいが…それが条件でいいのか?」
コイツ…チョロい!
「ああ。それだけで充分だ。」
少女から手渡しで貰う。
ククク。隙があったらこれ持って逃げてやる。
「あ、ちなみにこの棺は私じゃないと解除できないようにしてあるぞ!」
コイツ…しっかりしてやがる…!
「まーそういう事だハルノ。お前とはこれで…」
「私もいくわ。」
「なんで!?」
ハルノはリュックサックをからっていた。妙に静かだなと思ったら、準備に行っていたのか…気が早い奴だ。
「質問なんだが、旅行くのか?」
「何を言っているのだ?当たり前ではないか。」
デスヨネー。面倒くせーな。
「どうやっていくんだ?」
「歩きに決まっているだろう。」
「もうやだ。やっぱ勇者辞める。」
「そのくらいでやめんの!?」
当たり前だ。
その時不意に
「話は聞かせてもらった!」
だ、誰だ!?
キョロキョロするとハルノの家の屋根におじさんが立っていた。
「お、おじいちゃん!?」
「おー叔父さん!何かいい案があるのか?」
「お前の叔父さんではないぞ!アキトォ!その名で呼ぶなぁぁ!」
こういうことばかり怒るんだからあの叔父さんは。
「ま、それはいいとして…何かいい案があるのか?」
「ああ。あるぞ。だがその前に…」
「ここから降ろしてくれ。」
もー馬鹿ばっか。
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「その案は!私『わし』も同行しよう!」
仲間ってこんな簡単に増えるっけ?
「あっ、もちろんわしは戦えんぞ?だがわしにはこれがある!」
ジャジャーンという感じで後ろにある車を指す。やっぱわけーなこの叔父さん。
「そ、それは魔道車ではないか!」
「おお!知っているのかい?お嬢ちゃん!?」
「勿論だ!とても欲しかったんだ!」
お前は得ても運転出来ねーだろ。
「これは魔力で、動く。わしが運転してやろう。」
「さすがおじいちゃん!」
「いや、でも叔父さん村長だろ?いいのか村は?」
「叔父さんと呼ぶなぁぁ!…村のことは既に副村長に任せてあるから心配はいらん!」
気が早い一家だなぁ…
「それじゃあよろしくね!おじいちゃん!」
「ああ。よろしく頼むぞ!叔父さん殿!」
「ああ。よろしく!」
少女ならいいのかよ…
「あ。申し遅れたが、私はナツメだ!よろしく!勇者アキト殿、勇者ナツメ殿!」
こうして俺の人生最大の不幸が訪れた。勇者アキトとして勇者アーサーの代理として旅に出ることになった。




