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屍の勇者  作者: 春夏 秋冬
3/6

第一章 二話 始まりの日 (後編)

「あ、ありがとうございます!」


ハルノは胸の前で手を合わせ、目を輝かせていた。

俺が見たこと無いほど目が輝いているな…

俺にも、あんな顔して欲しいな…


「いえいえ、勇者として、当然の事をしたまでです。」


「てめーは黙ってろ」


あっ、しまった!つい心の本音が!

ハルノが、(てめーはあっちで、ゴミと話しかけとけ)と、訴えているような、目をしていた。こ、怖いですよ。ハルノさん…

くるりと、向きを変え表情を一瞬で、変え勇者と話を続ける。

村の人達も、勇者を囲み、感謝の言葉を、口々に言う。


「あれ、勇者様、そのお方は?」


勇者ばかり気にしていて、気づかなかったが、隣に黒いフードを被った小さい子供がいる。


「この子は、私の連れです。その…人と話すのが苦手なので、なるべくそっとしておいてください。」


その子は小さく会釈をした。


「そういえば勇者様はどうしてこの村に?」


ハルノが、上目遣いをしながら、そう尋ねる。 あ、あざとい…。


「実は仲間と、はぐれてしまって。背の高い黒髪の奴なんですが…来ていませんか?」


「来てねーから帰れ」


「お前は地獄に還れ」


ハルノに鋭い返しを食らう。

だんだん罵倒が辛くなってきた…


「まーまー。二人とも落ち着いてください。私の為に争わないでください。」


何処ぞのヒロインか。


「ですよねー!私もつい、言い過ぎてしまいました。」


ハルノが一瞬で、ころっと表情を変える。

お、オマエ…

そんな会話をしていると、唐突に

グルルルルルルルルルルルルルルルルル!!

という音が聞こえ、


「な!ま、また悪魔か!」


村人がざわめき始めると、


「す、すいません。私のお腹です…」


んだよ、脅かしやがって。冗談じゃねぇよ。

俺はアイツ(勇者)を睨みつせていると、


「実は道に、迷ってしまっていて。3日間何も食べてないんですよ。」


「そ、それなら私が手料理を振るいます!」


え、今ハルノが言ったか?


「え、本当ですか!」


これは不味いことになった。


「ええ!実は私、料理には結構自信があるんですよ!」


当の本人はこう言っているが、ハルノの手料理は正直いって、ヤバイ。毒かと、思った。

勿論本人には言えるわけがない。言ったら殺されてしまう。他の村人も同じだった。味を思い出して震え出すもの、合掌する人までいた。


「それでは、ごちそうにな」


「いやいやいや!俺が料理するよ!いや、俺にさせてくれ!」


「はあ、なにアンタ?」


「いや、その…な!俺も勇者様の事少し悪く言ってしまったのと、ハルノを助けていただいたお礼を、なぁ!」


勇者に全力で目で訴えると、察したのか


「それでは、お言葉に甘えさせていただきます。」


「おう、甘えろ甘えろ!」


そうして、俺は1人の人間の命を救った!


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


家に帰ると俺特製のカレーを奢ってやった。

フードを被っていた奴はカレーをマジマジと眺めていたがアーサーが食べ出すと、スプーンを持ち、一口食べると、がっついて食べだした。


「オマエ、フードとらねーの?邪魔だろ?」


というと、頭を小さくフルフルと、振ってまたがっつきだした。


流石、3日間食ってないだけであったぶん直ぐに全部食い尽くしてくれた。


「大変美味しかったです。お粗末様でした。」


「お、おう、」


こんなに、礼儀正しくされるとさっせまで散々言っていた俺に、罪悪感を覚える。


「ご馳走していただき、たいへんあつがましいとは、思いますが、一晩だけ、泊めていただきませんでしょうか?一晩だけでも!」


「はぁ?なんで、俺が…」


ついさっきのことを思い出す。


「アンタ、勇者様になんかやらかしたら、ただじゃ済まないからね…!」


「仕方ない、一晩だけな!」


「本当にありがとうございます!」


「1つ質問をしたいのですが、」


「ん、なんだ?」


「この村には用心棒はおられないのですか?」


用心棒というのは街や村などで、悪魔から村人を守るためにつけられる護衛の人の事だ。大きな街ではいるらしいが、こういう小さな村だと、なかなかいない。


「こんな小さな村に居ると思うか?」


「おられないのですね。でしたら、」


アーサーは自分の手持ちから何やら探りだし、一本の剣をとりだして、机の上に置いた。


「これを、貴方に譲ります。」


「な、なんで、俺だよ?」


「貴方は悪魔が、現れた時に、逃げたのではなく、ハルノさんを助けるために走り出した。」


「だからまた、悪魔が来たとしても貴方なら倒すことができる。そう思ったまでです。」


「受け取って頂けますか?」


「…ああ、分かった。有り難く頂く。」


「…はい。」


その時のアーサーはとても優しく、微笑むような顔をしていた。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


飯も片付け終わって、1枚しかない布団を敷くと、「あ、私達は寝袋があるので」と言った。寝袋あんなら外で寝れよ…。

部屋の電気を消して、布団に入ると、


「貴方にとって勇者はどういう存在ですか。」


と、いきなり尋ねてきた。


「どうって。何、正直言っていいのか?」


「構いません。」


「金に目が眩んだゲス野郎。」


「貴方は、配慮という物を知らないのですか……?」


なんだよ、オマエが言えって、言ったんじゃん。


「実は僕が、勇者じゃなかった頃も、だいだい同じ気持ちでした。」


「金に目が眩んだゲス野郎って?」


「いえ、そこまでではなかったんですけど。」


「父が、冒険家で。一度も会った事がないんですよ。」


最低な父親だな。


「息子を捨てる程、冒険は大切なのかってとっても腹が立ちました。」


「じゃあ、なんで勇者になったんだよ」


そう聞くとアーサーは少し切なそうに、


「故郷の村に大量の悪魔が攻めて来て、村の人、母親までが、殺されてしまいました。」


俺は目をかっと開き、アーサーを見つめた。昼間の明るい顔は全くなく、といっても悲しそうにというわけでもなく、思い出を思い出している、そういう顔だった。


「俺はそれが許せなかった。だから、残った友や、親族を置いて1人で悪魔抹殺の為に勇者になりました。」


「全然正義の勇者ぽくはないですよね。そのときは、復讐心しかありませんでした。」


「でも、旅に出て仲間と出会い、成長して行き勇者の良さを沢山知りました。勇者でなかったら、体験できなかったこともたくさんありました。」


「勇者というのも案外悪くないですよ。」


アーサーはこっちを向き昼間の笑顔を見せた。


それが、アーサーの最後の笑顔だった。

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