プロローグ
楽しんでいただければ幸いです。
季節は冬、街は雪に覆われていた。
部屋の中では、昔ながらの暖炉が勢いよく燃えている。
その暖炉の目の前には、老婆が椅子に腰かけ暖を取っていた。
「おばあちゃん! えへへへっ」
その部屋の中に入ってきた子供が、人懐っこい笑みを浮かべて老婆に駆け寄った。
老婆はゆっくりと振り向き、笑みを浮かべる。
「おやおや、――。今はお勉強の時間じゃなかったのかい?」
子供はばつの悪い顔をする。
「仕方のない子だねぇ。まあ勉強ばかりじゃ息も詰まるじゃろうて、おいで」
その老婆の言葉に子供の顔がパッと明るくなり、無邪気に抱き着く。
「えへへ。おばあちゃんはやっぱり優しいや。お母さんは勉強、勉強ってうるさくって嫌い!」
老婆は少し困ったような顔をする。
「嫌いなんて言っちゃいけないよ。あの子もお前のためを思って言ってるんだ」
「は〜い」
多少不満はあるが、大好きなおばあちゃんの言う事なので素直に頷く。
「まあ少しやり過ぎではあるから、そこは私から言っておくとしようか」
「わぁい。おばあちゃん大好き!」
子供の笑顔につられ、老婆も静かにほほ笑んだ。
「ねえ、お婆ちゃん。お話ししてよ」
「――は、お話しが好きだねえ。さて、何を話そうか」
「わくわく、わくわく」
「そうさねぇ、じゃあとっておきの話をしてあげよう」
「とっておき?」
「そうさ、――が大好きな大冒険のお話だよ。それはね――――」
そう、それはある村の少年の物語。
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