天使に小悪魔、そして可愛いは正義
天使の名はまだでない
「お前、どこから来た?」
少し低めの声はかっこよく耳に良い。
「眉間にしわを寄せてはいけないよ天使様。美しい顔が台無しだ。」
一歩引かれた。同時に眉間のしわも一層深くなる。
何故だ?
「質問に答えろ。お前、俺を誰だと思ってる。」
「天使に見紛うほどの美しさを兼ね備えた男性だと思ってます。」
正直まだ疑っているのは内緒であるが。
「……それ、本気で言ってんのか?」
「もちろんですとも!」
無い胸を張って大きく頷く。
自分は女子高に通っていたが、男性を見たことがないわけではない。実際にナンパもされたこともある。
制服を着ていて、自分の周りに大勢の女の子たちが条件だが。
よって、男性がサル目ヒト科ヒト属の人間であることくらい学園の王子である私でも十分に理解している。
しかし、目の前の人物はどうだ?
ここまで綺麗な顔をした男性はTVや雑誌でも見たことがない。
羽根の代わりとなる真っ白なローブに、神秘的な採光を放つ瞳がこの世のものとは思えないほど映えるのだ。
高身長の私とあまり差のないところもあり、その魅力には本当に目を惹かれる。……ん?待てよ……魅力的?
背中に電流が走る。
そう、私は気づいたのだ!彼の正体に!!
だとしたら納得だ。
天使と呼ばれるのも不快に決まってる。
そうと分かれば言う事はただ一つ。
「はぁ……いいか俺は「言わなくて大丈夫ですよ。」
息吐く彼の手を素早く取り、指を絡める。
絡めた指先に軽くキスをして上目使いで微笑む。
「君に魅了された僕に怖いものなどありません。それがたとえ地獄でも、どこへでもいきますよ。ね、僕の小悪魔さん。」
「くたばれ。」
あれ?すでに死んでるのでは?
と思っている間にどこからともなく取り出した短剣が目前に迫り、私の眉間ギリギリでピタリと止まった。
おお〜!凄い!
拍手と共に感嘆の意を表するとげんなりとした顔で彼が項垂れる。
「……避けろよ。」
「あれ?良かったんですか?」
「……避ければ殺したのに。」
「だったらこれで正解でしたね!」
いやぁ助かったと呑気に笑えばため息をつかれてしまった。
「とりあえず手を離せ。気持ちが悪い。」
「おっと、これは失礼!女の子には喜ばれるのですが。」
どうやら彼(天使)にはダメなようだ。まあそりゃあそうだろう。
「なにせ男性と手を絡めたことなどないですからね。経験値が足りません!」
「ほんとに、とんだ不審人物だな、お前は。」
汚物でも見るかのような目が向けられ、再び1歩引かれる。少々痛い。
「それで、あなたは私をどうするのですか?」
殺さないでいてくれたのだから何かあるのだろうと、憶測をする。
事情徴収かな?なんでも答えますよ!
「そうだな、とりあえず服を脱げ。」
「何故。」
耳を疑った。
「え、そこはまず名前から聞いたりするんじゃないですか?」
「お前が質問や話を聞かないのはよく分かったからな。それよりもその変な服の下に隠してるものがないか確かめるのが先だ。」
会って間もないにも関わらず何とも言えない印象だ。変って…ただの制服なんだけどなぁ。それに隠してるものないし……。
「分かったらさっさとしろ。抵抗するなら問答無用で切り裂くぞ。」
「はい。」
まあいっか。彼が納得するならそれで万事解決だ。
結論がついたところで自身の装備を確認する。
ワイシャツの下はタンクトップ、スカートの下はスパッツ。
うん、大丈夫。問題ない。ちゃっちゃと脱ぐとしよう。
ひとつひとつボタンをはずしていく。
ワイシャツのボタンってめんどくさいよね。むしり取ったほうが早かったかも。
と、考える間に脱ぎ終わる。
あとは、スカートか。これは簡単。
そして、フックに手をかけたところで
「~~~っっ!?待て!?ちょっと待て!!?」
止めが入った。
まだワイシャツしか脱いでないが、どうしたのだろうか。
見ると彼の顔には戸惑いの色が浮かび真っ青になっていた。
空を彷徨う目が忙しない。
本当にどうした?
そして、1度目を瞑り意を決して見開くとズイと近づき、
「…………(バッ)………。」
タンクトップをめくられた。
「…………(バッ)………。」
戻された。
片手で顔を覆い、彼は再び項垂れる。
「え、何がしたかったんですか?」
意味が分からないと戸惑うとボソリと声が聞こえた。
「・・・・・・・・・・よ・・。」
「はい?」
ガバッと頭を上げた彼の顔は、先程と打って変わって真っ赤に染まっていた。
「お前、女かよ!!」
「僕の性別なんて今更いいじゃない。それよりも、そのトマトのように真っ赤で可愛らしい顔にキスをさせてくれないかい?」
そう返すと、無言で殴られた。
次話もよろしくお願いします。
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2016.9.12 修正しました。