1.変身に光はつきものです
主はそこにありませんが、百合・薔薇要素がネタに絡んでおります。ご注意下さい。
前兆は何もなく、道すがら歩いていたらいきなりの出来事だった。
強い光に身を包まれた。
何事!? そう内心慌てふためいていたが、光は収まる様子を見せることなく、眩しさに目をつむることしかできなかった。
光は長いこと輝いていたように思う。
でも、どれくらいの時間だったかはわからない。
ただ、長く長く光の中に私はいて――――そこから開放された頃には全てはもう変わっていた。
世界も、私の姿も、運命もまた。
* * *
あれから15年が経った。
もしあの強烈な光に遭遇することなくそのままだったら、就職活動を始め、日本の極々普通の中小企業辺りで内定をもらい、働いて、もしかすると結婚して子供が一人か二人なんていたかもしれない。
子供の教育のことについて頭を悩ませ、旦那様と喧嘩して――――でも、私はあの光と出会ってしまった。
結局そんな未来を迎えることはなく、私は現在十五歳の少女として異世界リッシュノワで暮らしている。
そう、私はどうやら【転生】をしたらしい。
物語でよくありがちなトラック衝突だの、マンホールに落ちただの、神様の手違いで死んでしまって……などという劇的なドラマを減ること無く、光から開放されたと思った時には私は生まれて3ヶ月程の赤子になっていたのだ。
生まれたてじゃないんかーい、と思わず心の中で突っ込んだ。
だが、生まれおちる瞬間を覚えていても余り感動できたとは思えないので――――だって、自分の頭蓋骨が変形するんだよ? 怖くない? 変形が許されるのはロボットだけですよ?――――活発に動き出す生後3ヶ月くらいに前世の皆月 知登世としての記憶と意識が戻ったのは僥倖と思っている。
多少あわあわと動いて、ままならぬ現実に悶えていても現世の親には些細な違和感しか与えなかったようだ。
大変ありがたいことだ。
もし生後数ヶ月で親に捨てられたらとても生きてはいけない。
本当に、自分では何一つ満足にできない体なのだ。赤子という奴は。
自分の手では食料を得ることも、お風呂に入ることも、排泄の処理すら行えない。
親に依存して生きている生き物なのだ。
だから、育児放棄や虐待に走ることもなく私を育ててくれる親の元に生まれることができて本当に心の底から安堵しているし、感謝もしている。
どうしてこんな風になってしまったのか、それがわからないこそ尚更のことだ。