路地裏と物音は幽霊フラグ
「はぁ……」
すっかり迷子になってしまいました。調子にのってお母様と離れたのがいけなかったのかしら。
田舎貴族の娘として生まれた私にとってはこれが始めての大きな町です。ついつい興奮してお母様と離れてしまい、今にいたるわけです。
ここは先ほどまでいたあの綺麗な整備された道などではなく、もっと薄暗い……いわゆる路地裏というところにきてしまいました。
こんなところが安全とも思えませんし、早く表どおりに出たいのですが、道がわかりません。
あたりはだんだん薄暗くなってきますし、お母様もきっと心配されているでしょう。
もう二度とこんな風にはいたしませんので、どうか神様、お母様に会わせてください。
心の中で祈っても効果はないだろうということがわかっていても思わず祈ってしまうほど私は途方にくれていました。
「誰かいらっしゃいませんか!」
もうこうなったら人に聞くしかありません。正直怖いのですが、このままいるのも怖いので恐る恐る声をかけてみます。
薄暗い路地裏には私の声が響くだけであたりには何の音もしません。それがさらに不気味さを伺わせて私は思わず体をぶるりと震わせました。
あまりにも静か過ぎるのです。いくらなんでももうちょっと音が聞こえてもおかしくないのではないでしょうか。
「……まさか、幽霊が出るとか、いいませんよね」
恐ろしくなって私は呟きます。その声にもこたえる人はおらず、ただ私の足音だけが響きます。
と、突然後ろからがさこそと音が聞こえてきました。
「ああ!誰かいらっしゃるんですのね!」
やっと人に会えたと思い私は後ろを振り返りますが、誰もいません。
がさこそとした音は止まっています。よくわかりません。仕方がないのでもうちょっと場所を移動してみることにします。
そう思い前を向くと、さっきより近いところでがさこそっと音がなります。
「何なんですの!」
ゾッとして後ろをぱっと振り返りますが、音は消えます。
前を向くと音がなり、後ろを向くと音が止まります。しかもだんだん音が近づいてくるのです!
「ヒッ……」
その場に座り込みたくなりましたが、そんなことをしている場合ではありません。すぐにこの場から逃げ出さなければなりません。
走りにくいドレスのすそをつかみ、私はぱっと走り出します!
すると、
がさこそという音が、猛烈な勢いで私を追ってきました!
「いやあああああああああああああ!!!!」
声の限りに絶叫します!怖い怖い怖い怖い!!!誰か助けてください!幽霊なんてもう嫌です!
がさこそがさこそがさこそがさこそがさこそがさこそがさこそがさこそがさこそがさこそがさこそがさこそがさこそがさこそがさこそがさこそがさこそがさこそがさこそがさこそっ!!!
『フラグキター(゜▽゜)-!』
え…………
『幽霊フラグなんて珍しいね、なんちてっ☆』
え…………?
『しっかし残念!フラグぶっ壊し神がきたからにはフラグはへしおりますっ♪』
だ、誰ですの…………?
『ぶっちゃけーただのー』
『ねずみでしたっ☆』
…………
『フラグ建設ご苦労様!そっしてお疲れ様!そっしてさようなら!フラグはちゃーんとへし折りまっした!やったねっ☆』
…………町に、出られましたの。
フラグーフラグーフラグが思いつきませぬ。
何かいいフラグがあったら教えてください。お願いします。
フラグ神の口調が……どうしてこうなった