13 発見
短くてすみません(><)
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「な・・・んだ、これは」
エメの指示通りに進んだ山中で、竜巻にでも襲われたような場所に出た。
周囲の木々はなぎ倒され、元は家でもあったのか、生活用品や木材が散らばっている。
何か手がかりがないかと馬を降りると、足元に赤いリボンが落ちていた。
子どもでも住んでいたのか?
いや、どこかで見覚えがあるような・・・。
他に何かないか調べようとすると、
「ヒイィィン・・・!」
連れてきた馬が呼んだ。
振り返ると、木立の中から一頭の馬がこちらを伺っていた。
背には荷物を載せている。
「なんだ、どこの馬だ」
怖がらせないように、そっと近づく。
手綱を持って首を撫でれば、ブルル・・・っと鼻先を寄せてきた。
人には慣れているようだ。
水を与え、荷をほどく。
一番大きな袋を開けようとしたら、中身がびくっと動いた。
「!」
危うく取り落としそうになる。
中からうめき声が聞こえた。
危険な動物でないことを祈りつつ袋を開けて、驚いた。
「ジェラール王子!?」
「う、うぅッ」
中から現れたのは、猿轡をされ縄で縛られたジェラール王子だった。
「ゆっくり召し上がってください。
まだまだありますから」
手近な倒木に腰かけて、俺が差し出した水と食料を、王子はがつがつと食べた。
いつからあんな状態でいたのだろう。
まさか攫われてからずっとなのか。
よくご無事でいてくれたものだ。
満足するまで飲んで食べて、ふぅ、と王子が人心地ついたところで、最も尋ねたいことを口に乗せた。
「ジェラール王子。白猫は一緒ではありませんでしたか?」
「・・・っ」
お父上の親衛隊員ですと名乗った俺に対して、それまで少なくとも警戒はしていなかった王子だったが、ルゥのことを尋ねた途端、あきらかに怯え、不審そうな目を向けてきた。
「白猫です。王子と一緒に攫われたはずなのですが」
「しらない」
本当か嘘かわからないが、ぷいと横を向いて言い切られてしまった。
しかしここであきらめるわけにはいかない。
「本当に? 王子とお城で何回か遊んだことのある白猫ですよ」
「しらないよ」
「そうですか・・・」
一緒に攫われたのではなかったのか?
そのとき、左手中指に嵌めた魔術具が光った。
エメからの通信だ。
『カール、どう? なんだかすごいところにいるわね。
あら? 隣にいるのは?』
「あぁ、こちらは・・・」
俺がエメに王子のことを説明しようとしたとき、その王子がびっくりした顔で俺に飛びついてきた。
「カール!? おまえ、カールっていうの?」
「え? あ、はい。カール=ヘルベルト=ヴュストと申します」
そういえば、親衛隊員だとはいったが、名前は言わなかったか。
ぱぁっと王子の顔が明るくなる。
「うわぁ、ルチノーのいうとおりだ。カールがさがしにきてくれた」
「!
ルゥを知ってるんですね!」
それから俺は、ルゥと共に過ごした時間のことをジェラール王子から聞き出した。
幼い王子から情報を得るのはひどく苦労したが、根気よく言葉を重ね、エメも魔術具を通して助け船を出してくれて、どうにか必要な事柄を知ることができた。
はじめにルゥのことを知らないと言ったのは、またルゥを狙ってきた輩だと思ったからだそうだ。
『フィダーイー、か。
私のせいで、ルチノーちゃんが見つかっちゃったってことね』
「ルチノーは、ぜったいにカールがきてくれるっていってた。
だからだいじょうぶだよって」
王子の話を聞きながら、先ほど拾ったリボンを見つめる。
やはりこれはルゥのリボンだったのだ。
かなり乱暴だと思われる男の存在。
木端微塵の小屋。
ルゥはどれほど恐ろしい目にあったのか。
「それで、ルゥは今どこに?」
「・・・わかんない。
ぼく、ふくろいれられた。
そのあと、ごおっておおきなおとがして、うま、はしった」
『たぶん力が暴走したんだわ。
その後、自分でどこかに移動したのか、そのフィダーイーの男に連れ去られたのか・・・』
「くそっ・・・!」
拳で自分の膝を打つ。
ようやく追い付いたと思ったのに、手がかりがここで途絶えてしまった。
こうなったら、ヴィルヘルミーナがあったという土地まで行ってみるしかない。
俺は王子を近くの領主の館まで送り届け、ルゥの痕跡を探すことにした。




