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白猫の恋わずらい  作者: みきまろ
第5部
86/100

13 発見

短くてすみません(><)


*****




「な・・・んだ、これは」


エメの指示通りに進んだ山中で、竜巻にでも襲われたような場所に出た。

周囲の木々はなぎ倒され、元は家でもあったのか、生活用品や木材が散らばっている。

何か手がかりがないかと馬を降りると、足元に赤いリボンが落ちていた。

子どもでも住んでいたのか?

いや、どこかで見覚えがあるような・・・。

他に何かないか調べようとすると、


「ヒイィィン・・・!」


連れてきた馬が呼んだ。

振り返ると、木立の中から一頭の馬がこちらを伺っていた。

背には荷物を載せている。


「なんだ、どこの馬だ」


怖がらせないように、そっと近づく。

手綱を持って首を撫でれば、ブルル・・・っと鼻先を寄せてきた。

人には慣れているようだ。

水を与え、荷をほどく。

一番大きな袋を開けようとしたら、中身がびくっと動いた。


「!」


危うく取り落としそうになる。

中からうめき声が聞こえた。

危険な動物でないことを祈りつつ袋を開けて、驚いた。


「ジェラール王子!?」


「う、うぅッ」


中から現れたのは、猿轡さるぐつわをされ縄で縛られたジェラール王子だった。






「ゆっくり召し上がってください。

 まだまだありますから」


手近な倒木に腰かけて、俺が差し出した水と食料を、王子はがつがつと食べた。

いつからあんな状態でいたのだろう。

まさか攫われてからずっとなのか。

よくご無事でいてくれたものだ。


満足するまで飲んで食べて、ふぅ、と王子が人心地ついたところで、最も尋ねたいことを口に乗せた。


「ジェラール王子。白猫は一緒ではありませんでしたか?」


「・・・っ」


お父上の親衛隊員ですと名乗った俺に対して、それまで少なくとも警戒はしていなかった王子だったが、ルゥのことを尋ねた途端、あきらかに怯え、不審そうな目を向けてきた。


「白猫です。王子と一緒に攫われたはずなのですが」


「しらない」


本当か嘘かわからないが、ぷいと横を向いて言い切られてしまった。

しかしここであきらめるわけにはいかない。


「本当に? 王子とお城で何回か遊んだことのある白猫ですよ」


「しらないよ」


「そうですか・・・」


一緒に攫われたのではなかったのか?

そのとき、左手中指に嵌めた魔術具が光った。

エメからの通信だ。


『カール、どう? なんだかすごいところにいるわね。

 あら? 隣にいるのは?』


「あぁ、こちらは・・・」


俺がエメに王子のことを説明しようとしたとき、その王子がびっくりした顔で俺に飛びついてきた。


「カール!? おまえ、カールっていうの?」


「え? あ、はい。カール=ヘルベルト=ヴュストと申します」


そういえば、親衛隊員だとはいったが、名前は言わなかったか。

ぱぁっと王子の顔が明るくなる。


「うわぁ、ルチノーのいうとおりだ。カールがさがしにきてくれた」


「!

 ルゥを知ってるんですね!」


それから俺は、ルゥと共に過ごした時間のことをジェラール王子から聞き出した。

幼い王子から情報を得るのはひどく苦労したが、根気よく言葉を重ね、エメも魔術具を通して助け船を出してくれて、どうにか必要な事柄を知ることができた。

はじめにルゥのことを知らないと言ったのは、またルゥを狙ってきた輩だと思ったからだそうだ。


『フィダーイー、か。

 私のせいで、ルチノーちゃんが見つかっちゃったってことね』


「ルチノーは、ぜったいにカールがきてくれるっていってた。

 だからだいじょうぶだよって」


王子の話を聞きながら、先ほど拾ったリボンを見つめる。

やはりこれはルゥのリボンだったのだ。

かなり乱暴だと思われる男の存在。

木端微塵の小屋。

ルゥはどれほど恐ろしい目にあったのか。


「それで、ルゥは今どこに?」


「・・・わかんない。

 ぼく、ふくろいれられた。

 そのあと、ごおっておおきなおとがして、うま、はしった」


『たぶん力が暴走したんだわ。

 その後、自分でどこかに移動したのか、そのフィダーイーの男に連れ去られたのか・・・』


「くそっ・・・!」


拳で自分の膝を打つ。

ようやく追い付いたと思ったのに、手がかりがここで途絶えてしまった。

こうなったら、ヴィルヘルミーナがあったという土地まで行ってみるしかない。

俺は王子を近くの領主の館まで送り届け、ルゥの痕跡を探すことにした。




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