ヴィルヘルミーナの最後の女王④
ルミエールとナタリーがベルトランに来て、一か月が過ぎた。
「もう車椅子はいりませんね」
「えぇ。本当にこの国にはお世話になったわ。
きちんとお礼をして、ヴィルヘルミーナに帰りたいけど……」
これからのことを、ルミエールとナタリーは、何度も話し合ってきた。
二人とも、一度は祖国を見に行き、現状を確かめたいという思いがある。
そして、できるだけ早く、国を再興したい。
そのためにはどうすればいいのか。
国土の状態にもよるが、ルミエールが一人で呼び掛けても、各国に散った国民がすぐに戻ってくれるとは思えない。
諸々のことを考え合わせ、ベルトランの協力をあおぎ、再興の準備を進めるのが現実的かと思う。
でも、と二の足を踏んでしまうのは、いつも一緒だったはずの存在が欠けているから。
「ったく、あいつ、何してるんでしょうね。遅すぎます」
「ふふ、私たちが見つけられないのかも」
「そうですかね。呑気にお菓子作りなんてしてたら許しません」
「そうねぇ。新作の研究をしてくれてるなら、許してあげてもいいわ」
名は、口にしない。
言ったら泣いてしまいそうだから。
他にも、不安要素ならいくらでもある。
ザイルは死んだのだろうか。
フィダーイーはどこへ行ったのか。
国へ戻っても安全なのだろうか。
わからないことばかり。
唯一はっきりしているのは、ルミエールが持っているのは、ナタリーが隠し持っていてくれた冠だけということ。
他はすべて失ってしまった。
「どうしたもんですかね」
「そうねぇ……」
そろって溜息をついていると、扉を叩く者があった。
「失礼します。ルミエール様、あの、フロリアン様が午後のお茶をご一緒にとご所望です」
「……また?」
ナタリーが眉根を寄せる。
「昼食もご一緒したばかりなのですが……」
ルミエールも困り顔で答えた。
「……はい。今度は午後のお茶をとのことなんです」
「そうですか……」
「あの、ご都合が悪いでしょうか」
フロリアン付きの侍女は、うつむいてもじもじと両手を合わせている。
ナタリーが聞いてきた噂話と、この一か月の付き合いから、フロリアンの我が儘ぶりはよくわかっているルミエールである。
自分が行かなければこの侍女が叱られる。
「わかりました。準備ができ次第お伺いするとお伝えください」
「ありがとうございます!」
ルミエールの返事を聞いた侍女は、ほっとした表情でフロリアンの元へ戻って行った。
「いくら王妃様の頼みだからって、そこまでお付き合いしなくてもいいんじゃないですか?」
あんな甘えたがりの我が儘王子の相手をするより、ヴィルヘルミーナのことを考えたい。
いつまでもベルトランに頼っているわけにはいかないのだから、今後の生計について少しでも見通しを立てたい。
そう思うナタリーは、行くと返事をしたルミエールを呆れたように見つめる。
「決めたわ、ナタリー」
「何をですか?」
そんなナタリーの心情など知らぬふりで、ルミエールはぎゅっとナタリーの両手をつかんできた。
「この国への恩返しよ。フロリアン王子の我が儘を直す」
「はい? そりゃ無理ですよ。あの王子の我が儘は筋金入りです」
「う。じゃぁ、我が儘は無理でも、起き上がれるようにする」
フロリアンが我が儘なのは、自分で動けないからだ。
一日中寝台で寝ていれば、当然退屈するし、苛々もする。
何の病気なのかは知らないが、見たところさほど悪いようにも見えない。
起きて、散歩でもできるようになれば、気が晴れるのではないか。
「それならできるかもしれませんね」
「でしょう? 王子様が身も心も元気になれば、王妃様も喜んでくださるわ。
今の私には他にできそうなこともないし、やってみる」
ナタリーの賛同を得たルミエールは、まずは手本を見せようと、フロリアンの部屋まで歩いて行くことにした。
念のため、ナタリーは空の車椅子を押して横を歩く。
フロリアンは、寝台に半身を起こして待っていた。
ベッドサイドにお茶の用意がしてある。
「遅いよ!」
ルミエールの顔を見た途端、フロリアンは拗ねたように言い放った。
短めに切られたくせっ毛は蜂蜜色で、幼さの残る輪郭を飾る。
薄青の瞳は、機嫌が良ければくりくりとして可愛らしいのだが、今は気持ち吊り上がって見える。
部屋に控える侍女たちは、一様にぐったりした顔をしていた。
ルミエールが来るまで、駄々をこねるフロリアンの機嫌をとっていたのだろう。
「申し訳ありません。今日は自分の足で歩いてきたものですから」
「え……。あ、ほんとだ。
治ったの? ルミエール」
「まだ完全ではありませんが、こうして動けるようにはなりました。
自分の足で歩けるってすばらしいですね」
「ふぅん」
「フロリアン様もたまには起きて、歩いてみませんか?
好きなところに行けるってすてきですよ」
「……僕はいいよ」
予想通りの答えに、ルミエールはこっそり笑みをもらす。
「そうですか? 残念です。フロリアン様と一緒にお散歩できたらいいなと思って、歩行訓練をがんばりましたのに」
「散歩?」
「えぇ」
「一緒に?」
「はい。ベルトランのお庭は手が込んでいることで有名なんですよね?
ぜひ見てみたいんです。
あと、フロリアン様のお話によく出てくる庭師さんにも会ってみたいですわ」
「そっか。そうだよね。僕も昔はよく庭で遊んだんだ。
いつの間に、部屋から出なくなっちゃったんだろう。
うん、いいよ。僕が歩けるようになったら、庭を案内してあげる」
フロリアンの顔がぱっと明るくなる。
そしてあたかも自分で思いついたことであるかのように、散歩の計画を話しはじめた。
「……ってことで、庭師には連絡しておくからね。
ルミエールも、庭が見たいなら見たいって早く言ってくれればよかったのに。
僕だって準備がいるんだよ」
「申し訳ありません。
お世話になっている身としては、あまり贅沢を言ってはいけないかと思いまして」
「庭の散歩が贅沢ぅ?
ルミエールの国ってどんだけ貧乏だったの。
あ、保冷石も自分で作るんだっけ? そんなの買えばいいじゃない。
魔術って節約のために習得するわけ?」
フロリアンの言い様に、傍らに佇むナタリーはイラッとするが、ルミエールは涼しい顔で受け流した。
「節約になるかどうかはわかりませんが、便利ではあります。
もしよければ、治癒力を高める魔術陣というのがあるのですが、お書きしましょうか?」
「そんなのがあるの?」
「はい。足の傷が治るまではと魔術を使うのを控えていましたが、もう大丈夫です。
もしフロリアン様が嫌でなければ、ですけど」
バルトロメウスの魔術嫌いを思い出す。
フロリアンも、魔術に嫌悪感があるだろうか?
「それを使えば早く歩けるようになるんでしょう? 頼むよ」
「わかりました。では後程準備してお持ちしますね」
「うん! ルミエール、大好きだよ!」
「ありがとうございます」
フロリアンの現金な反応に内心あきれつつも、ルミエールは王妃への恩返しの一歩になったと胸をなでおろす。
侍女達にお茶の準備をさせるフロリアンは、ルミエールが入室してきたときのような、拗ねた様子はない。
きっとこの方は自分に素直なだけなのだ。
そう思うことにして、午後の一時を少しでも楽しく過ごせるよう気持ちを切り替えた。
「なんだこれは!」
翌朝、自室でナタリーと共に朝食後のお茶を飲んでいたルミエールの元に、バルトロメウスが飛び込んできた。
手には昨夜急いで仕上げて届けた、魔術陣が書かれた羊皮紙が握られている。
「おはようございます、バルトロメウス様。
女性の部屋に無断で入ってらっしゃるのは、礼を失すると以前も申し上げ……」
「うるさい。これは何の呪いだと聞いている」
バルトロメウスの前に立ちふさがり、ルミエールを守ろうとしたナタリーを押しのけて、第一王子はぐいぐいと迫る。
「呪いではありません。治癒力を高める魔術陣ですわ。
ほら、私の元にも同じものが」
飲みかけのカップをテーブルに置いたルミエールは、文机の引き出しから同じ文様の羊皮紙を取り出す。
右手人差し指と中指を自分の額に、左手は取り出した羊皮紙に描かれた魔術陣にかざして術文を読み上げる。
すると、ルミエールの魔術陣とバルトロメウスの持つ魔術陣とが反応して、淡い光を放った。
「うわっ」
驚いたバルトロメウスは、羊皮紙からぱっと手を離して飛びのく。
「そんなに驚かなくても……。
ヴィルヘルミーナでは、医師が薬と一緒にこの魔術陣を処方するんですよ。
腕のいい術士は腕のいい医師でもあります。
ルミエール様の魔術陣はとってもよく効きます」
「何をわけのわからないことを!
これがフロリアンを害するものではないと、どうやって証明する!」
「証明と言われても……。フロリアン様のところへ行かれたのですか?
お元気そうではありませんでしたか?」
「それは……、顔色はよかったが」
行ってきたのか。
フロリアンの部屋でバルトロメウスに会ったことはなかったが、案外弟思いのようだ。
今だって、フロリアンのために怒っているのだ。
「その魔術陣のおかげですよ。
ついでにルミエール様の作戦のおかげです。
一緒に散歩をするんだとはりきってましたから」
「作戦?
あぁ、まぁ、散歩がどうとかは言っていたが。
しかしそれとこれとは別だ。魔術なんぞ、信用できん」
「よく効きますのに」
ルミエールが、残念そうに手元の魔術陣に目を落とす。
せっかく恩返しをしようと思ったのに。
魔術陣がなくても、フロリアンはその気になっているようだから、近々散歩は実現するかもしれないけれど。
「どうすれば信じてくれるんですか?」
ナタリーが問う。
「……そうだな。
馬屋に、先日事故で脚の骨を折り、処分を待つ馬がいる。
それを治してみろ」
「馬、ですか」
「どうせできんだろ。こんなもの、紛い物だ」
ふんと鼻を鳴らしたバルトロメウスは、取り落とした魔術陣を拾ってルミエールに突き返す。
「できますよ」
「何?」
「人と馬とでは少し術式を変えなければなりませんけど。
脚の骨ですね。わかりました」
魔術陣を受け取ったルミエールは、その場で羽根ペンを取り、さらさらと陣に書き足しはじめた。
「馬屋はどこですか? 案内してください」
すっと立ち上がったルミエールを胡散臭そうに見つめながらも、バルトロメウスは馬屋までの案内を引き受けた。
バルトロメウスに案内されてやってきた馬屋には、栗毛の立派な馬が横たわっていた。
右前脚には痛々しい手当の跡がある。
親切な馬屋番が教えてくれたことには、馬は怪我をすると痛がってその箇所を振り回したり無理に立とうとしたりしてしまい、なかなか治らないそうだ。
しまいには自分の体重で他の脚まで故障させてしまったり、仮に腹に布をまわして吊して脚の負担を減らしたとしても、吊るした腹の皮膚が炎症を起こしたりして死んでしまう場合が多いという。
今も、馬は荒い息をして、体に汗をかきながら起き上がろうともがいている。
「痛いの?」
ルミエールは、一通り馬屋番の話を聞くと、苦しむ馬にそっと手を伸ばす。
「おい、やめろ」
「姫様、危ないですぜ。気が立ってますから、特に後ろ脚には気を付けてくだせぃ」
バルトロメウスと馬屋番が声をかけたのは、ほぼ同時だった。
「大丈夫よ」
心配してくれた二人には感謝の微笑みを向け、苦しむ馬の瞳をじっと見つめた。
脚をばたつかせ、細かく震えていた馬は、ルミエールと見つめ合ううちに大人しくなる。
「うん、ここが痛いのね」
馬が落ち着いたのを見計らって、ルミエールは包帯が巻かれた脚を優しく撫でた。
「こりゃ驚いた。どうしことでぃ。
王子様、この方はどなたです?」
「……」
馬屋番の問いには答えず、バルトロメウスはしかめっ面で腕組みをした。
ヴィルヘルミーナの元女王たるルミエールがベルトラン城に滞在していることは、公にはされていない。
ルミエールの周辺の世話をする侍女や、フロリアンの侍女たちには口止めをしてあり、一般の使用人には王妃の旧友のご息女とだけ言ってある。
馬屋番は不機嫌そうな王子に肩をすくめ、たおやかな姫が馬の患部に何かを巻きつけて固定するのを見守った。
「姫様、それはなんです?」
「魔じゅ……いえ、お守りですわ。
この馬が早くよくなりますようにと」
「へぇ。姫様のお守りなら効きそうですねぃ。
よかったですね、王子。ご自分のせいで怪我をさせたと、気になさっておいででしたから」
「この馬はバルトロメウス様の馬ですの?」
「へぃ、それはそれは生まれたときからかわいがられて」
「余計なことを言うな」
馬屋番の言葉を途中でさえぎったバルトロメウスは、ぷいと横を向く。
拗ねたような横顔は、フロリアンとよく似ていた。
馬屋を後にした二人は、ルミエールの部屋へ向けて連れ立って歩く。
バルトロメウスは馬に付き添いたそうなそぶりをしていたが、案内してきた手前、勝手に帰れとは言えなかったのだろう。
渋々と言った体でルミエールの横を歩く。
それでも、怪我の治ったばかりのルミエールに合わせてゆっくりと歩いてくれているようで、この冷たいのか優しいのかわからない王子に、ルミエールは少し興味をそそられた。
そういえば、第一印象があまりに悪く、つい足が向かなかったのだが、国王にバルトロメウスのところにも顔を出してやってくれと頼まれていたのだった。
せっかくだから、何か話してみよう。
えーっと、会話、会話……。
「あの、フロリアン様は何のご病気ですの?」
ルミエールは、自分よりずいぶんと背の高いバルトロメウスを、首をのばして見上げながら話しかける。
「何ということはない。ただ、弱い」
バルトロメウスはといえば、ルミエールを一瞥もせずに、まっすぐ前だけを向いて答える。
「寝台から起きられないほど、お体が弱いのですか?」
ルミエールはあきらめずに会話を続けようとする。
バルトロメウスは、馬屋から城内につながる渡り廊下の途中で足を止めると、ゆっくりと瞬きをして、ルミエールを正面から見つめた。
薄青の瞳に、探るような色が宿る。
「それを知ってどうする。
王族の健康状態を知りたがるなど、叛意があると思われても仕方ないぞ」
「そんな。ただ私は心配して」
予想外の言葉に驚いたルミエールは、胸の前で手を組んで身を縮めた。
バルトロメウスは、じっとルミエールを見つめる。
短くはない時間、そうして見つめられて、居心地悪く感じたルミエールが身じろぎした。
それが合図だったかのように、バルトロメウスは、片手を額に、もう片方の手を腰に当てて、はぁ……と長い溜息をついた。
「ニヨルド号は、走れるようになるのか?」
「え?」
ニヨルド号?
急に変わった話題に、一瞬ついていくことができないルミエール。
しかし、走れるかどうか、とルミエールに聞いてくるということは、先ほどの馬のことかと見当をつける。
「一晩たてば、ずいぶんとよくなっているはずです。
二~三日で骨もくっつくはずですわ。
でもあくまでも治癒力を高めるだけですから、走れるかどうかはあの馬のがんばり次第ですね」
「そうか」
「フロリアン様のことも、少しでもよくなれば、みなさん喜んでいただけるかと思っただけで、他意はありません」
弁解をするなら今しかないと、ルミエールは急いで付け足す。
そんなルミエールにちらっと視線を送って、「ふ」とバルトロメウスが微笑んだ。
「まぁ、そうだろうな。
おまえはその手の嘘をつけるようには見えない」
微笑みというより微苦笑といった感じだが、初めて見た笑みにルミエールはどきりとする。
「嘘なんてつきません。正直であれと幼い頃から言われて育ちました。
施政者が嘘つきでは、国民はついてきませんわ」
「そうか? 優しさと正直さだけでは国は切り盛りできんと俺は思うがな。
よくそんなふわふわした考えで、その年まで生きてこられたな」
「私、ふわふわしてますか?」
「している。さらに言うなら、その小さな体でおそろしい魔術を使えるなど、信じられん」
「魔術は、さっきの治癒の魔術陣もそうですけど、おそろしいものばかりではありませんよ」
渡り廊下から一歩出て、足元に咲く白い花の花びらを一枚とる。
ルミエールは口中で何事か唱え、手のひらに乗せた花びらにふぅっと息を吹きかけた。
一枚の花びらが二枚に、二枚が四枚にと増え、ルミエールとバルトロメウスの周りを舞った。
折よく吹いてきた風が、ルミエールの金色の髪を揺らし、翻ったドレスの裾を花びらが彩る。
「……美しいな」
目を細めたバルトロメウスは、ルミエールに一歩近づき手を伸ばす。
「でしょう?」
伸ばされた指先が、雪のように舞う花びらの一枚に触れた。
触れられた途端、幻影の花びらはふわりととけて、空中に消えた。
次々と生まれ、舞い踊る花びらの中、ルミエールが微笑む。
「いや、美しいのは花びらではなく……」
バルトロメウスが言いかけたその時。
ざぁっ……!
ひときわ強い風が、花びらをさらった。
ルミエールは髪と裾を手で押さえる。
風が収まった時には、幻影の花びらはすっかり消えてなくなっていた。
「何か、おっしゃいましたか?」
「なんでもない」
バルトロメウスが顎で先をうながす。
そろそろ戻らないと昼食の時間だ。
フロリアンから呼び出しがあるかもしれない。
髪を整え、服に着いた埃を払って、ルミエールはバルトロメウスの隣に並ぶ。
ふと見上げたルミエールと、バルトロメウスの目が合った。
反射的に、ルミエールはにこっと笑いかける。
バルトロメウスは、ルミエールが期待した笑みを浮かべることはなかったが、さりとて拒絶される感じもなかった。
ゆっくりと、二人で歩く。
少しだけ、王子との距離が近づいた気がした。
渡り廊下を通り中庭を横切るバルトロメウスとルミエールを、上階から見下ろす存在があった。
侍女に手伝ってもらい、歩行訓練を始めたフロリアンだ。
「あれは、ルミエール?」
窓枠にしがみつき、無意識に立ち上がる。
寝たきりでいたために萎えた足は、自分を支えられずにすぐによろめいた。
慌てた侍女が腕を差し出す。
「なんで……。一緒に散歩しようって約束したのに」
フロリアンは、唇を噛む代わりに、侍女の腕をぎりっとつかむ。
「うっ。フロリアン様、痛いです」
「兄さんも兄さんだ。
何でも持っているのに、僕がようやく見つけた光まで奪うなんて」
「フロリアン様、爪、爪が!
あううぅ……!」
侍女の白いブラウスに血が滲むのにも構わず、フロリアンは眼下の二人を睨みつけた。




