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白猫の恋わずらい  作者: みきまろ
第5部
69/100

*** 記念小話 チョコレート ***

お話の途中ですが、「白猫の恋わずらい」お気に入り登録2500件、「同月光編」1000件突破、さらに逆お気に入りユーザー100名様を記念いたしましての小話です。

皆さま、本当にありがとうございます!! 今後とも精進いたしますので、何卒よろしくお願いします^^









休日の午後、ルゥとお茶を飲んでくつろいでいると、玄関を叩く音がした。


「はい?」


扉を開けると、菓子屋の箱を持ったユハがいた。


「よお、カール。アドルフ菓子店の新作が・・・」


バタン! 鼻先で締め出す。


「なんだよ、せっかく休憩時間に抜け出して買ってきたんだぞ。今日からの販売なんだ」


「いいから仕事に戻れ。明日受け取る」


「今日食った方がうまいに決まっているだろう。ルチノーさんは? いるのか?」


「いない。出かけている」


「・・・嘘をつくな。開けろ」


「うるさい。帰れ」


扉越しにしばらく言い合っていたが、急に静かになった。あきらめたか。


「すまない、ルゥ、お茶の続きを・・・ルゥ?」


「わぁ、チョコレート? ありがとうございます」


「いえ、中に何か入っているらしいんです。食べる時は一口でどうぞと言われました。気を付けてくださいね」


「はい。何が入っているのかしら、楽しみ!」


出窓から、菓子の受け渡しをするルゥとユハがいた。


「ルゥ・・・・・」


俺の苦労をなんだと思っているんだ。

脱力して、がっくりとうなだれる。

ユハはそんな俺を見て、にやりと笑う。


「では、これで失礼します。午後の勤務があるので」


「はい、ありがとうございました」


あっ、こら、なぜ手をとる。

あああ、手の甲にキスだと!? ふざけるな!


「ユハをうちにあげるなと言ったろう」


「窓越しでも?」


「だめだ」


「んもうっ」


菓子を置いてルゥの手をとり、石鹸を使って気のすむまで洗う。

赤くなってしまった甲に口づけ、指の一本一本まで何度もキスをした。ついでに両手で頬を包んでたっぷり口腔を味わい、くだけた腰を支える。


「ん・・・ふぅ・・・・っ、カール、何なの・・・」


「消毒」


「・・・馬鹿」


うるんだ瞳で睨まれても、余計そそるだけだ。

いけない、まだ昼間だぞと自分に言い聞かせ、ルゥを抱き上げて、ソファに戻る。


「お菓子、食べていい?」


「あいつがもってきた菓子なんぞ食うな」


「お菓子に罪はないじゃない。いいよ、私一人で食べるから」


ルゥは俺の膝の上にちょこんと座ったまま、ユハが持ってきた箱を開ける。

一粒とって、口に運んだ。


「んっ、んんん!」


きゅっと目をつぶって、口元を押さえる。


「どうした?」


「おいしーい! 中に何か液体が入ってる」


ぱっと顔を上げての極上の笑顔。

これが、ユハが持ってきた菓子のおかげだと思うと悔しい。


「やっぱり食べたくなった?」


俺のしかめっ面をどうとったのか、あーん、とルゥが差し出したので、一つ食べてみた。

これ、口辺りはずいぶんいいが、中身は純度の高い蒸留酒じゃないか?

ルゥは酒を飲めただろうか。一緒に飲んだことはなかったような・・・。

箱を見ると、いつのまにか数がかなり減っている。


「おい、ルゥ、それくらいにしておいたほうが・・・」


「ん? なぁに? くすくす・・これ、おいしぃねぇ」


やっぱり。

気付けば、耳まで真っ赤に染めて、すっかりできあがったルゥがいた。

以前またたびの実に触れたときのようだ。


「ねぇ、カール、もういっこ、あーん」


「いや、もういい」


「なぁにぃ? せっかく私があげるって言ってるのに、いらないのぉ?」


じとっと睨んでくる。

ぐ。からみ酒か。


「わかった。食うよ」


「いいもん。嫌々食べる人なんかにあげないんだから」


ぷいっと前を向いて、一口齧る。

割れた箇所から琥珀色の液体がこぼれ出た。

白い顎を伝って、胸元に入り込む。


「いやぁん、こぼれちゃった。どうしよう」


「拭いてやる。こっちを向け」


「そんなこといって、カールはすぐえっちなことするからだめー」


「だめって、おい」


べたついて気持ちが悪いのは自分だろう。


「くすくす。拭かせてなんか、あげなーい」


そういって、ぴょんと俺の膝の上から降りて駆けだす。


「待てって、ルゥ!」


酔って走ったりなんかしたら、さらに酔いがまわる。案の定、ぐらりと小さな体がかしぐ。


「ルゥ!」


「だめー」


支えようと伸ばした手を避けられる。

さらにソファの周りをぐるりと一周して、捕まえようとしたところをするりと逃げられた。


「くすくす・・・カール、こっちだよ」


台所を抜け、玄関ホールを二周したところで追いかけるのをやめた。

ルゥは笑いながら二階に駆け上がって行く。

どうなっても知らないぞ、俺は。

溜息を一つついて、追いかけっこで散らかった家の中を片づけることにした。


俺だって、いつもいつもルゥに振り回されているばかりじゃないんだ。

呼べばすぐ来ると思うなよ。

あぁ、掛けておいた上着が落ちてるじゃないか。

菓子の包みも散らかしっぱなしだ。


・・・声が聞こえなくなったな。

足音もしない。


いや、我慢だ。ユハの寄越した菓子なんか食うから悪い。

ルゥは酒を飲んだのは初めてだろうか。

あの中身、結構度数の高い酒だったな。

いやいやいや、俺は途中でめたんだ。

服だって、拭いてやろうとしたのに、「えっちなことするからだめ」ってなんだよ。

そんないつでも手を出しているわけでは・・・ないとはいえないが。


「・・・ルゥ?」


少し心配になって、階段下から呼びかけてみる。

返事はない。

まさか急性飲酒(アルコール)中毒で倒れたとか!?

焦って二階に上がると、踊り場にぺたんと座り、真っ赤な顔をして服を脱ごうとしているルゥがいた。


「あ、カール」


どうも、服を脱ぐのに一生懸命になっていて、返事をしなかったらしい。


「だ、大丈夫か?」


「んんん、暑いぃ。暑いの・・・」


袖は脱げたが、襟から腕を出そうとして頭がつっかえて出せなくなっている。

ボタンをはずそうにも、酔っているせいでうまくできない。


「カールぅ、助けて・・・」


「君ね・・・、ははっ」


自分の服に絡まって助けを乞う姿に頬が緩む。

まったく、ルゥにはかなわない。

万歳をさせるように裾から持ち上げて脱がせた。


「ありがと。カール、好き」


下着一枚で抱きついてくる。

これは・・・困ったな。押し倒してもいいものか?


「ね、キスして?」


頬を染めてねだられれば、断れるわけもない。

酔っ払ったルゥ、いいかもしれない。

ユハ、よくやった!


ルゥの望み通り、濃厚なキスをしながら、抱き上げて寝室に運んだ。

寝台にそっと降ろし、髪を撫で・・・・ん?


「ルゥ? おい、ルゥ!」


「ん・・・もう食べられない・・・」


むにゃむにゃと罪のない寝言を言う彼女は、すでに夢の中。

ゆすっても少々いたずらしても起きない。


「・・・それはないだろ・・・」


くそ、ユハめ、覚えてろよ。

楽しいはずの休日の午後を、一人悶々と過ごすハメになった俺だった。






次の日の隊舎。


「カール、すまん! 昨日の菓子の中身、酒だったろう。ルチノーさんは大丈夫だったか?」


「・・・ふっ・・・・。ユハ、ありがとうな」


「? なんだ?」


「酔った彼女はすごかったぞ。ちょっと耳を貸せ」


「なんだ」


「あのあとな、彼女の方から、×××で×××で×××だったんだ」


「!!!!????? ×××で×××で×××!? そんな・・・!」


「しかもな、×××で×××で×××だ」


「~~~~~!!!!」




その日一日、ユハさんで憂さ晴らしをしたカールなのでした~。





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