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白猫の恋わずらい  作者: みきまろ
第4部
52/100

10 勉強会




「こんにちは、エメさん」


「いらっしゃい、ルチノーちゃん。待ってたわ」


エメさんがにこやかに出迎えてくれる。

王様の腕から飛び降りると、いつものように衝立ついたての後ろに隠れて、エメさんが用意してくれた服に着替えることにした。

聞くともなしに、王様とエメさんの会話が聞こえてくる。


「私のことは?」


「別に待ってないわ。早く仕事に戻りなさい。全く毎回毎回・・・どれだけ暇なのよ」


「暇なわけではない。おまえに会いに来てるんだ」


「あー、はいはい。ルチノーちゃん、どう? 着方わかる?」


「うん、なんとか」


着替えた姿をお披露目した私を、エメさんも王様もとっても褒めてくれた。


「よく似合うわ! あぁんっ、かわいい!」


「うむ。エメ、この間贈った服はどうした? あれもいいだろう」


「ルチノーちゃんには大人っぽいんじゃない?」


「おまえが着るんだ。二人で並べば、なお眼福だな」


「だから私は着ないって」


勉強会の間、王様はずっとエメさんの部屋にいる。

私を連れてきてくれるだけのはずだったのに、おかしいなぁ。

はじめは部屋の前までだったんだけど、だんだん滞在時間が伸びてるんだ。


今日は保冷石の作り方。

失敗ばかりの私だから、エメさんを待たせる時間が多くって、その間、王様がおしゃべりをしてる。

エメさんは二言目には仕事をしろって言うわりに、追い出すわけでもない。

不思議な関係の二人だ。


「できた! どう? エメさん」


机に向かって没頭していた私がぱっと振り向くと、エメさんに抱きつこうとする王様を、エメさんが全力で押し返してるところだった。

えーっと・・・私、どうしたら・・・。


「ルチノーちゃん! 今後、こいつを連れてくるの禁止!」


「はい・・・」


やっぱり嫌がってたのかな。


「照れるなよ、エメ」


「照れてなーーーーーい!!」


また押し合う二人。

保冷石、もう一個作ってみようかな。

帰ったらカールに見せよう。

褒めてくれるかな。

背後でじたばたする音を聞きながら、私は石に意識を集中した。




*****




訓練を終え、家路につく。

やわらかな明かりが灯っている。


「ただいま」


「おかえりなさい」


出迎えたルゥを抱き寄せて、キスをする。

毎日繰り返していることでも、その都度胸がじんわりと温かくなる。

今日の夕飯は、パン生地に炒めたひき肉をはさんで揚げたものとサラダ、とうもろこしのスープだ。

弁当もそうだが、ルゥは本当に料理がうまい。


「どうだった、今日の勉強会は」


「楽しかったよ! これ見て! 私が作ったの」


「保冷石か。すごいじゃないか」


「ふふ。石に力を籠める練習をすることで、力の制御ができるようになるんだって」


初めはなかなかうまくいかなくて、石ごと凍ってしまったとか、半端な冷たさのものしかできなかったとか、身振り手振りを加えながら一生懸命話すルゥ。

彼女の声を聞いているだけで、俺は幸せな気分になる。


「それで王様がね・・・」


う、また出た。

城に通うようになって、頻繁に国王の話が出る。

一体何をやってるんだ、あの方は。

俺が仕事をしている間、共にエメの部屋にいるらしい王に嫉妬を覚える。

俺だって、ルゥが勉強しているところを見たい!

失敗して照れている顔や、大きな氷ができてしまってびっくりしている顔が見たい!


「ところでカールは? 今日はどうだったの?」


国王相手にもやもやしていると、ルゥに問いかけられ、はっと我に返った。


「ん? まぁいつも通りさ。城内の見回りをして訓練をして・・・」


夕食をとりながら、日中離れていた間のことを話す。

たわいもないひとときが、何よりも大切に思える。


「明日は休みだから、どこか出かけるか」


「わぁ、嬉しい! 私、まだ猫でしか出られないけど、いい?」


「俺はどっちのルゥも好きだよ」


「ん、ありがと」


ぽっと頬を染める。

ぽんぽんと頭を撫でると、嬉しそうに微笑んだ。

王都に来てから、実家へのあいさつやら国王への謁見やら家の片づけやらでばたばたしていて、まだ観光らしい観光をしていなかった。


「何か見たいものはあるか?」


「うーん、全然わからないから・・・カールに任せる」


「そうか」


ルゥの喜びそうなところはどこだろう。

景色のいいところ、珍しい食べ物。

雑貨屋も女性は好きか。

いくつか思い浮かんだ場所を元に明日の行き先を考えていると、食器を洗い終えたルゥが、つん、と俺の袖を引いた。


「お風呂・・・用意できてるけど、一緒に入る?」


ル、ルゥから誘ってくれるとは!

毎日なんだかんだ言って一緒に入っているが、いつも俺から声をかけていた。

赤く染まった小さな耳が可愛らしい。


「んっ・・・こら」


思わず耳朶を甘噛みして、睨まれた。

そんな表情すら俺を煽る。


「明日は休みだから・・・朝までたっぷり時間があるな」


「そ、そういう意味じゃないよっ お風呂に入ろうって言っただけ!」


「ん? そういう意味ってどういう意味だ?」


「な・・・・っ カールの意地悪っ」


口をとがらせて、横を向いてしまった。

あまりからかうと臍を曲げてしまうので、この辺にしておく。


「ははっ、冗談だ。そういう意味があっても大歓迎だが、今はゆっくり風呂に浸かろう」


「うん・・・。あのね、今日は私がカールの髪を洗ってみたいんだけど、いいかな」


「嬉しいな。背中も流してくれる?」


「うん。洗いっこしよう」


「あぁ」






その後どうなったかって? それはもちろん・・・。


「あんっ、カール・・・!」


「なんだ?」


「・・・っ、こんなにしたら、明日お出かけできないっ」


「明日っていうか、もう今日だな。大丈夫、ルゥは俺の肩に乗っていればいいさ」


「~~~!!!!」


涙目で睨んでも逆効果だって、教えたほうがいいのか?

楽しみが一つ減ってしまうから、あえて教えないことにしよう。




結局、王都観光は午後からになった。

ルゥの機嫌を直すのが、ものすごく大変だった・・・。





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