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白猫の恋わずらい  作者: みきまろ
第4部
44/100

4 エメ



*****




「エメさん、すごい。なんで・・・」


「一週間前くらいから、妙な気配を感じてたの。

 気になって気配を追ってきたら、あなたに贈った護り石が反応してるのがわかったわ。

 自分でかけた術だからね、異変があればわかるのよ」


それで飛んで来てくれたのか。


「ルゥちゃん・・・いえ、ルチノーちゃんと呼んでもよさそうね?

 あなた今何歳だっけ?」


カールに触っていれば変化を自分で調整できるので、一度寝室で人に戻ってからエメさんと話すことにした。

机をはさんで、向かい合って座るエメさんと私たち。

私たちっていうのはカールと私で・・・私はカールの膝の上にいる。

だって、触ってないと猫になったり人になったりしちゃうし、椅子は2つしかないし、だから仕方なくなんだけどものすごく恥ずかしい。


エメさんったら、にやにやしないでっ。

カール、足撫でちゃだめ!


「17・・・だと思う」


「根拠は?」


「根拠? 拾われた時に年をきかれて、こうやったって言うから・・・たぶん2歳だろうって」


人差し指と中指で「2」を作る。


「なるほどね。小さいころなら薬指がうまく立てられなかったってこともあるか」


「エメさん?」


「あなた、たぶん18歳だわ。

 18といえば一般的にも成人の儀をするけど、ルチノーちゃんの場合もっと特殊な事情があるの。

 魔術にとって18は特別な数字。眠っていた力が目覚めるのよ」


「眠っていた力・・・。前、私に魔術の才能があるって言ってたけど、それに関係があるの?」


「才能どころの話じゃないわ。

 ルチノーちゃん、あなたはね、今はき湖上の魔術王国、ヴィルヘルミーナのお姫様なのよ」


「ヴィルヘルミーナ?」


「30年前、城ごと湖に沈んだというあのヴィルヘルミーナか?」


私は全然知らなかったけど、カールは知ってるみたい。

そんな国があったの? で、私がそこのお姫様??


「そう。前ルチノーちゃんが描いた絵を見せてもらったでしょう。

 あの衣装や冠の石に見覚えがあったの。

 ヴィルヘルミーナは多くの魔術士を輩出し、かの国にしかない秘術もたくさんあったから、魔術士なら一度は勉強に訪れてたのよ。

 私も昔行ったことがあるわ。たぶんあなたのお母さんにも会ってる」


「お母さんに・・・。あれ? でもカールが30年前に沈んだって。エメさん、いつお母さんに会ったの?」


「あら、うふふ」


「見た目通りの歳じゃないとは思っていたが、その口ぶりじゃ100やそこらは越えてそうだな」


「失礼ね。女性の歳を勘ぐるもんじゃないわよ」


100? 100って100歳?

私が目をぱちくりさせていると、カールが頭を撫でて説明してくれた。


「ウーリーの家庭教師をしていたと言っていただろう?

 あいつのうちは魔術の名門だから、並みの魔術士には頼まない。

 それに同じくらいの歳で家庭教師をするわけはないよな。あいつが幼いころすでにそれなりの歳で、かなりの力があったってわけだ。

 魔術の中には、身体を若く見せたり実際に若返らせたりするものがあると聞く。

 こいつは若返ってるほうだな、きっと」


「何よ、なんだか言葉にトゲがあるんじゃない?」


「胡散臭い術は嫌いでね。魔術は便利だが、人を惑わすことも多い。

 年をごまかせるほどの魔術士を、おいそれと信用はできないな」


「ふん。そこそこ評価されてるととろうじゃないの。

 でもあんまり私の機嫌を損ねないほうがいいわよ。ルチノーちゃんの状態を把握してるのは私だけなんだからね」


「・・・くっ・・・それは・・・」


「本当なら18になったときに、解放された力に喰われていてもおかしくなかったわ。

 私のかけた猫化の術が、魔術の暴走を止めてたのね。結果としてはよかったわ」


「ルゥ、いつ誕生日だったんだ?」


「え・・・。わからない。覚えてないの。冬に捨てられてたから、冬生まれってことにしてたけど」


「そうね。正確な日にちはわからないけど、最近だとは思うわ。

 ただ・・・一週間くらい前って何かあった? 力を解放する何か。

 猫化の術とその護り石のおかげで、18になったからってそんなに急激に力があふれるはずはないの」


私を解放する何か。

一週間くらい前って・・・あの、その、もしかして?


カールと2人、顔を見合わせる。

お互い思い浮かべたことは同じだったみたいで、赤くなって目をそらしてしまった。


「あー・・・・そういうこと?

 カール、あなたねぇ、少しは自制しなさいよ。何歳いくつ離れてると思ってるの?」


「年の話はしないんじゃなかったか」


「それとこれとは別でしょ。ルチノーちゃんに無理させてないでしょうね」


「させてない。大事にしてる」


「本当~? 年だけじゃなくて体格だってずいぶん違うんだからね」


「体位は配慮してる」


「当たり前でしょ。何やろうとしてんのよ、この変態」


「好きな相手と愛し合って何が悪い」


「うっわ、開き直らないで! あああ、私のルチノーちゃんがあぁぁ」


「おまえのじゃない。俺のだ」


「出会ったのは私の方が先よ! まさかこんなに早いとは! 応援なんてしないでつばつけとくんだった!!」


「ちょっ、あの、2人とも、やめて・・・」


エメさんに、その、“初めて”を告白した恥ずかしさから立ち直る途中に、カールに「好きな相手」云々と言われてまた動揺していたけど、このままじゃいつまでも言い合いが続きそうで口をはさむ。

ただの喧嘩ならまだしも、私のことを言われていて居心地が悪い。


「ルチノーちゃん、この男が嫌になったらいつでも私のところにいらっしゃい」


「そんなことにはならないから安心しろ。な、ルゥ」


「う、うん」


「あぁら、女同士にしかわからないことだってあるじゃないの。またうちに来たいわよね? ルチノーちゃん」


「うん。エメさんのおうちは楽しかった」


「そうでしょー? ほらみなさい」


「ルゥ、俺よりこの女の方がいいのか?」


「え、そういうわけじゃないけど」


着せ替えとか一緒にお料理とかは楽しかった。

エメさんって優しいし、お姉さんみたいで頼りになる。


「遠慮しないで。いつでも遊びにきてね」


「はい」


「ルゥ・・・」


あれ、カールががっくりとうなだれてしまった。


「あの、遊びには行くけど、帰るのはカールのところだよ? 私の居場所はカールのいるところだから」


「ん・・・。そうか。そうだな」


「うん」


「こらこら。そこ、見つめ合わない。あぁ、もう何の話をしにきたんだっけ?

 あなたたちねぇ、もうちょっと緊張感ってものを・・・」


「おまえが話を逸らしたんだろ」


「そうだったかしら。んじゃ戻そうじゃないの。

 だからね、ルチノーちゃんは魔術王国のお姫様なの。

 ちょっと! 私の目の前でおさわりは禁止ね。その手はなんでずっと太もも撫でてんのよ」


「いいから続けろ」


「はぁ、ほんとムカつく。ルチノーちゃん、なんでこんな顔はいいけど性格悪そうなのがいいわけぇ?

 んで、ヴィルヘルミーナは女王制だったんだけど、ルチノーちゃんは最後の女王の娘である可能性が高いわ。

 詳しいことはまだ調べ中だけど・・・。

 何にせよ、眠る力はとんでもないものがあるわ。

 できれば側について使い方を教えてあげたいんだけど、私もいろいろ忙しい身だしね。どうしようかしら」


「エメさんは今も王都にいるの?

 私もカールの仕事の都合で、一週間後には王都に引っ越す予定だったんだけど」


「え! 本当? それは好都合。リックにも話を通しておくわ」


「リック?」


「リクハルド=ヴィリオ=ブルクハルト。あなたのとこの王様でしょ?」


「おま・・・国王をリック呼ばわりするな。何者だよ」


「そうあからさまに不審がるもんじゃないわよ。人よりちょっと長生きしてるだけ」


やっぱり長生きしてるんだ。

本当は何歳なんだろう。

一通り話を終え、エメさんは私に猫化の術を掛け直してくれた。


「とりあえず王都に着くまでは猫でいて頂戴。

 よほどのことがないと人には戻れなくしておいたから」


私の本来の姿をとると、力があふれやすくなるらしい。

エメさんの魔術の影響下にいることで、力を安定させるんだって。

カールに触れていると落ち着いたのは、エメさんの術がかかったおそろいの護り石のおかげだったみたい。




「この姿じゃお手伝いできないね。ごめんね」


「いいさ。スヴァルがくれたバスケットもあるし、かえって移動は楽かもしれん」


エメさんが帰った後、カールは片づけを続けていた。

見ていることしかできないのが心苦しい。

あぁ、ごはんも作れないんだ。

私が作ったものをおいしそうに食べるカールを見るのが、すごく楽しみだったのに。


「手伝いよりもな」


カールが喉を撫でてくれる。

大きな手が心地よくて、喉がゴロゴロと鳴る。


「一週間、人の姿のルゥに会えないほうが辛いな」


そう言って口づけてくれた。


私も、カール。

あなたを抱きしめられないのが寂しい。




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