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白猫の恋わずらい  作者: みきまろ
第4部
42/100

2 デザート?

*****




こつん、と窓に何かが当たる音で目覚めた。

庭を見ると、スヴァルさんの黒猫がいた。


「どうしたの、あんた」


窓を開けてひらりと外に出る。


『おまえ、引っ越すんだって?』


「まぁね。自称スヴァルの恋人のあんたとしては、恋敵カールがいなくなってうれしいんじゃない?」


『・・・・・これやる』


ぽとりと水色の小袋が置かれた。

口を青いリボンで結んである。


『俺の宝物。元気でな』


「え・・・・」


引き留める間もなく、黒猫は身をひるがえして藪の中に消えていった。

残されたのは水色の小袋。

匂いを嗅いでみると、あの猫の匂いにまざってなんだかとってもいい匂いがした。




*****




「ただいま・・・・っと、ルゥ、どうした?」


明かりはついている。

しかし、いつも出迎えてくれるルゥがいない。


「ルゥ?」


「・・・-ル・・・」


家の奥から弱々しい声がした。


「ルゥ!?」


何事かと、慌てて声がした方へ向かう。

真っ暗な寝室に、ルゥはいた。


「カール・・・身体、熱い・・・なんか変・・・」


頬が紅潮し、寝台に寄りかかってぐったりとしている。


「どうした、具合が悪いのか!?」


「具合・・・? 悪くないよ・・・くすくすっ・・・」


「ル、ルゥ?」


よく見れば、ワンピースの肩がずりおち、白い肌が見えている。

髪は乱れ、目がとろんとしていた。


「おかえりぃ。カールが帰ってきて嬉しいな・・・くす・・カール、好き」


抱きついて、口づけてくる。

嬉しい・・・が、いくらなんでもおかしいだろう。


「ルゥ、本当にどうしたんだ。俺がいない間に何があった?」


「スヴァルさんの黒猫がぁ、ふふっ、宝物くれたのよ」


「スヴァルの? なんでスヴァルの猫が出てくるんだ?」


「これぇ、いい匂いなのぉ」


ルゥが手にした水色の袋から、つりがね型の実が転がり出た。

またたびの実だ。なるほど。


「人の姿でも影響があるのか?」


「えぇ? なぁに? あのね、猫になって寝てたらね、くれたの。

 匂いを嗅いだらすごぉくいい気分になって・・・くす・・・・くすくす・・・。

 カール、これおもしろぉい。ふふ・・・」


隊服についている紐が揺れるのすら、可笑しいらしい。

どうやら昼間は猫でいたが、またたびに酔って人に戻ったようだ。

以前この状態になったときは、極力姿を見ないようにして耐えるしかなかった。

しかし今は違う。

頬を染めてしなだれかかってくるルゥは、まさに据え膳。


「ルゥ、夕飯は?」


「あ・・・作りかけぇ。下ごしらえはしてあるんだけど・・・くすくす・・・。

 お肉、焼くの・・・うふ・・」


よし、腹ごしらえをしたらデザートにルゥをいただこう。

そう思って身を起こそうとすると、ルゥに引き留められた。


「カール・・行っちゃいや・・・」


ぽろぽろぽろ。

今度は急に泣き出した。

笑い上戸かと思ったら、泣き上戸か!?

すすり泣くルゥの髪を撫でる。


「わかった。行かないから、泣くな」


「ん・・・カール、キスして?」


お望みのままに。

軽いキスは、次第に深くなり俺の中に火をともす。


「ルゥ・・・・。ルゥ?」


腕にかかる重さが増した。

たいして重いわけではないが、これは・・・ね、寝てる!?

俺の腕の中で満足そうに微笑むルゥは、すやすやと寝息をたてていた。


「それはないだろう・・・」


火照ほてったこの身をどうしてくれる。

がっくりとうなだれて、しばらく動けなかった。

ルゥに起きる気配はない。

仕方なく寝台に寝かせ、ルゥが途中まで作っておいてくれた夕飯を仕上げて食べる。

うまい・・・が一人で食べるのはつまらないな。




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