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白猫の恋わずらい  作者: みきまろ
第3部
33/100

5 熱

*****




風邪をひいた。


昨夜からちょっとおかしい感じはしてたんだ。

くしゃみが出るし、体がだるい。

朝カールを見送ってから、ぶるりと寒気が来て、夕方には熱が出ていた。

帰ってきたカールを出迎えたまでは覚えているけど、その後の記憶がない。


頭がガンガンと痛む。

息が熱い。

苦しい。


助けを求めるように手を伸ばすと、大きな手がそっと握ってくれた。

カールだ。

乾いた布で、額の汗をぬぐってくれる。

あぁ、これはきっと夢だ。

熱のせいで、夢を見てるんだ。

だって私の手は人間の手なのに、カールが平然と側にいる。

髪を撫でて、人ならば気味悪がるはずの目を、心配そうにじっと見つめてくる。


たぶん実際には猫の私を看病してくれてるんだな。

これは、本来の私を受け入れてほしいっていう、私の願望が見せた夢。




*****




ルゥが熱を出した。

出がけにだるそうにしているとは思ったが、兵舎から帰ってきてみればふらふらで、出迎えと同時にぱったりと倒れた。


「ルゥ? おい、ルゥ!」


抱き上げて見れば、体が熱い。

昨日のくしゃみは風邪の前兆だったか。

寝台に運び、寝かせてやる。

猫ならば寝かせておけばそのうち治ると思うが、ルゥの場合はどうなんだろう。


夕食と風呂を済ませてルゥの様子を見に行くと、熱のせいなのか、人型になっていた。

はぁはぁと荒い息をしている。

上気した頬。額に浮かぶ玉の汗。

かなり苦しそうだ。


「うぅ・・・」


上掛けの下から白い手が伸ばされる。

そっと握ると、うっすら目を開けた。

赤い瞳が熱でうるんでいる。

額の汗を拭いて、頬にかかる髪をく。

ルゥは一瞬不思議そうな顔をしたが、にこっと微笑むとまた目を閉じて荒い息を繰り返した。


人型でいるならば、人間用の薬湯を飲ませてもいいだろうか。

握った腕を寝具の中に入れ、薬湯の用意をする。

少し苦味があるため、蜂蜜をまぜてやった。

吸いのみなどないから、普通の汁椀に入れてきたが、どうやって飲ませたものか。

苦しそうに眉根を寄せるルゥを抱き起こす。

上掛けがずれて肩があらわになるが、できるだけ見ないようにする。


「ルゥ、熱さましだ。飲めるか?」


口元で椀を傾ける。


「・・・んっ、ごほっ、ごほごほっ」


いくらも飲まないうちに吐き出してしまった。


「ルゥ。ちゃんと飲まないと治らない」


仕方なく。そう、仕方なくだ。

俺は薬湯を口に含んだ。

ルゥの顎をとり、上向かせる。

開いた唇に、己のそれを重ねた。

こくり。

細い喉が動く。

ちゃんと飲んだのを確認して、二口ふたくち目。


「んっ・・・はぁ・・・・っ」


嚥下の合間に吐息が漏れる。

熱のせいで体が熱いのはわかっていても、口移しを繰り返すうち、頭の芯がしびれてくる。


肩を抱き、最後の一口を飲ませる。

量が多かったのか、口の端からこぽりとこぼれた。


あふれた薬湯を舌で舐めとる。

甘いのは蜂蜜か、ルゥか。

確かめるように下唇をなぞった。


「ん・・・・」


「ルゥ・・・」


薄く開けられた口からのぞく小さな舌に誘われ、必要もないのに再度唇を重ねた。

いつまでも触れていたい、やわらかな感触。


「カール・・・・?」


真紅の瞳が俺をとらえ、戸惑いに揺れる。

限界か。


「おやすみ、ルゥ。早く治せ」


「うん・・・」


寝台に横たえ、肩まで上掛けを掛けた。

髪を撫でて、こめかみにキスをする。

ルゥは安心したように目を閉じた。




寝室の扉を閉め、居間の椅子に腰かける。


「はぁ・・・・」


机に肘をつき、顔を両手で覆う。

脳裏に浮かぶのは、先ほどのルゥ。

汗ばんだ肌。

熱い吐息。

うるんだ瞳に赤く染まった頬。

唇はどこまでもやわらかく、舌を吸えば小さな声が漏れた。


彼女が猫でも人でもいい。

もう、離せない。










お約束ですが、入れたかったんです~。

カール兄さん、開き直ってロックオンです(笑)

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