4 迷い
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「帰還指示、っすか」
「あぁ」
昼下がりの兵舎。
午前中いっぱい悩んで、ギュンターにだけは通知が来たことを知らせた。
細かい内容は控えたが、希望すればここに残ることも可能なこと、1か月以内に返事をしなければならないことを伝える。
「もちろん、戻るんすよね?」
「・・・迷っている」
「迷ってる?」
「なんだよ、おかしいか?」
「いえ・・・」
心なしか、ギュンターが嬉しそうにしている気がする。
「隊長は、冤罪さえ晴れれば、すぐに王都に戻りたいんだと思ってました」
「まぁな」
「猫ですか?」
「それだけじゃないさ」
「ははっ、その迷いの一部に俺らの存在があると思いたいっすね。
俺は隊長がどちらを選んでもいいように準備しておきますよ。それが補佐官の仕事っすから。
隊長は俺たちのことは気にせずに、一番いいほうを選んでくださいね」
「ありがとう。他の奴らにはまだ・・・」
「えぇ、言いません。思う存分迷ってください」
「なんだよ、それ」
他人を拒絶し、必要以上の会話をしようとしなかった俺に根気よく話しかけてくれたギュンター。
ルゥに出会って少しずつ変わってきた俺が、村になじめるように尽力してくれた。
「基本教練の写本はどうだ?」
「2冊はできました。残り3冊もあと少しっす」
「そうか」
「隊長のおかげで、俺らもずいぶんましになりました。本当に感謝しています」
「・・・なんだか追い出そうとしてないか」
「ははは! そんなことないっすよ!」
「ったく・・・・」
相変わらずの軽いノリだが、暗くならないのは助かる。
夕方まで通常の業務をこなし、ルゥの待つ家へと帰った。
「ただいま、ルゥ」
「・・・んな~ぅ・・・・」
「ルゥ? おい、ルゥ!」