表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
白猫の恋わずらい  作者: みきまろ
第3部
28/100

1 来客

皆様のあたたかいお言葉に支えられて続いております^^

ありがとうございます!



*****




カールの様子がおかしい。

目を合わせようとしないし、あいさつのキスもぎこちない。

そうかと思うと、ふと気づいた時にじっと見つめられていたりする。


「ルゥ、あの・・・」


「なぅ?」


「いや、いい」


なんてやりとりもしょっちゅうだ。

何が言いたいのかな。

どうしたのかな。


昨日はお風呂で湯船に落とされた。


「ふぎーーーーー!」


「あああ! すまん! 大丈夫か!!」


端正な顔に、見事なひっかき傷ができてしまったのは仕方ないと思う。

それでも、夜寝るときには優しく撫でてくれて、深い碧の瞳が幸せそうに細められるから、私はここにいていいんだと思える。


今日はカールが非番の日。

でもいつものお休みみたいにウキウキしないのは、薄皮を一枚はさんだような、微妙な空気を感じるから。

はぁ・・・・。

本当に、どうしたんだろう。


「ルゥ、昼飯は何がいい?」


「んな!」


カールが作ってくれるものならなんでも!


燻製肉を焼くいい匂いがただよってきたころ、コンコン、と玄関の扉を叩く音がした。


「隊長さん、こんにちは。ルゥちゃんが帰ってきたって聞いたんですけど」


「あぁ、スヴァル。これはどうも・・・」


以前、兵舎で会ったことのある女の人だった。

なんだか影の薄い細っこい人で、優しそうっていうよりトロそうな気がする。

年だって、たぶんカールよりずっと上だ。

ウーリーさんたちが兵舎にお泊りしていたときに手伝いに来てたっていうけど、その人がなんでうちまで来るわけ?


「あら、お昼でしたか。ごめんなさい。これ、よかったらルゥちゃんに」


「すみません、ありがとうございます」


「いえ、隊長さんが元気になられてよかったです。またうちにも遊びに来てくださいね」


「ははっ、ご心配をおかけしまして・・・。えぇ、また」


ちょっと、ちょっと、どういうこと?

カールってばいつのまにその人のおうちに行ったの?

まさか私が院長先生に会いに行っている間に?


・・・院長先生。

院長先生のことを思い出すと気分が沈む。

もっと何かしてあげられたんじゃないかって。

猫になんかならないで、そばにいてあげたらよかったんじゃないかって。

でもそうしたらカールには出会えなかった。


「ルゥ、スヴァルが山羊乳シェーブルチーズをくれたぞ。おまえ好きだろう」


山羊乳シェーブルチーズ!

沈みかけた気持ちが、一気に浮上する。

そそそ、そんなので懐柔しようったって、だめなんだからねっ


「パンにのせて焼いてやるからな」


今日のお昼ご飯は、手作りパンの山羊乳シェーブルチーズのせと、燻製肉。

細かくちぎった野菜も添えてある。なんて豪華。

でもこのチーズ、あの女の人が持ってきたんだよね。

おうちに遊びに行ったって・・・カールってば、私がいない隙に何してるのよ!


あぁ、でもいい匂い。

チーズに罪はないんだよねぇ。

食べなきゃもったいないし。

でもあの人は気に入らないし・・・。


「食わないのか?」


「うなー・・・」


迷っていると、カールの口の端にチーズのかけらがついているのを発見した。

そうだ、味見をしてから決めよう。

食卓テーブルに飛び乗り、首を伸ばしてカールの口元をぺろりと舐めた。

うーん、やっぱりおいしい!

この塩気がたまらない。

カールは猫の私に気を使って、薄味のものを作ってくれるんだよね。

魔術で変化してるだけだから、本当は平気なんだけど。


「・・・・くっ・・・・」


ん? カール?

なんで口を押えてそっち向いちゃうの?

耳が赤いけど・・・大丈夫?


「そ、そんなに食いたかったのか? 俺の分もやるから、ほら食べろ」


いやぁん、大盛りっ 幸せー!

結局、誘惑に負けて食べてしまった。




食後の毛づくろいをしていると、また玄関の扉を叩く音。


「なんだ、今日は客が多いな」


席を立つカールにくっついて、玄関に向かう。


「はい、どちら様・・・」


「カール!」


「ミレイユ!?」


カールが扉を開けたとたん、赤毛の美女が飛び込んできた。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ