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白猫の恋わずらい  作者: みきまろ
第2部
18/100

1 雪

ちょっと話が進みます^^

*****




カールに拾われて3か月が過ぎた。

猫の成長は早く、見た目はもう成猫と変わらない。

窓の外は大雪。

こんな中兵舎に通うなんて、大変だなぁ。


「はぁっ、はぁっ・・・・ただい、ま、ルゥ」


走ってきたのか、白い息を吐いてカールが帰ってきた。


「なぅ!」


手袋をしていても、カールの指先は真っ赤になって冷たかった。

おかえりのキスをしてから、指と同じく赤くなっている耳を温めてあげようと、肩にのって首に巻きつく。

人なら部屋を暖めておくとかごはんを作っておくとかできるんだけど、猫にはこれが精一杯。


「おまえも寒かっただろう」


そんなことないよ。

日なたはぽかぽかして温かいから、窓辺で一日中寝てたの。

今も毛布にくるまってたから、大丈夫だよ。

そう答えたいけど、実際に声になったのは「んにゃぅ、なぅ」だった。

最近「なー」じゃなくて「にゃー」って言えるようになったのよ。


「やっぱり兵舎に引っ越したほうがよかったかなぁ」


暖炉に火を入れながら、カールがつぶやく。

カールの苦労を思うと、そのほうがいいと思うんだけど・・・。


この3か月で私が人間に戻ったのは4回。

どれも月が細く尖っているときか、闇夜だった。

あの金髪の魔術士が言ったことの意味がわかった。

月が欠け始めると体がむずむずして、特に新月の夜は変化しやすいのだ。

でも強く念じれば猫に戻れる。

幸い、カールが気付いた様子はない。

もし人の多い兵舎だったら、誰かにばれていたかも。


今月も新月が近い。

今夜当たり、危ない。


夜半。

眠ったカールの隣をそっと抜け出す。

椅子にかけられた外套に潜り込む。


きた。

体がむずむずして闇に溶け出す。


「ん・・・・くぅ・・・・・」


手足が伸び、毛がなくなる。

視界が高くなる代わりに、寒さを感じた。

ぶるりと震えて、カールの外套にくるまる。


「カールの匂い・・・・」


ひたひたと素足で歩く。

床がびっくりするほど冷たくて、指先が赤く染まった。

窓の外に目を向けると、地面に積もった雪が星のように輝いていた。


「きれい・・・」


どうせなら、昼間人型になれたらいいのにな。

お掃除くらいできるんじゃない?

この間、夜中に片づけをしてみたときは、予想外に音が響いてあきらめた。


また雪が降り始めた。

小さい頃、院長先生に読んでもらった『雪の女王』という話を思い出す。


人の美しい面は小さく、醜い面は大きく映すと言う悪魔の鏡。

その鏡のかけらが目と心臓につきささった男の子は、心が凍ってしまう。

男の子をさらった雪の女王は、『永遠えいえん』を見つけられたら悪い魔法が解けると話す。


「男の子を救ったのは、男の子のことが本当に大好きな幼馴染の女の子だったのよね・・・」


もし私がその鏡を覗いたら、どんな風に映るんだろう。

白い髪は逆立ち、真っ赤な瞳はぎらぎらと光るのだろうか。

いいえ、きっと自分のことばかり考えてカールに甘える心が、一番醜く映るんだ。


雪の結晶が窓にはりつく。

四角いもの、六角形のもの、矢のように尖ったものなど、一つとして同じものはない。


雪はどんどん降り積もり、世界を白く染めていく。

私は出窓に肘をついて、幻想的な景色をいつまでも眺めていた。









『雪の女王』・・・アンデルセン童話です。

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