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*** あいさつ ***

13話のあとです。

未来パラレルがラストにちょこっと入ります。ルゥ視点です。

早く人間になってくれないかなー(笑)。





歯が抜けた。

えー、人間のときはとっくに永久歯になっていたのに、猫になったらまた抜けるの?

不思議な感じ。



朝、カールを見送ろうと玄関についていくと、ひょいと抱き上げられて口を開けられた。

カールの太い指が、私の口腔を探る。

歯に異常がないか、見てくれているみたい。

間違って噛んじゃわないように気をつけなきゃ。


「ん、大丈夫だな」


そういったカールは、ちゅっと私にキスをしてきた。

わわわ、な、なんで!?

ほっぺじゃないよ。おでこでもないよ!

口と口だよ!?

私の動揺をよそに、


「行ってくる」


と手を振るカール。


「う、うなー・・・」


猫でよかった。

人間だったら、きっと今の私は真っ赤な顔をしている。

そのかわり、尻尾がばふばふに逆立ってた。




それからというもの。

カールは朝起きたときと出掛けるとき、帰ってきたときと寝る前にキスをしてくるようになった。

何回かされるうちに、これは“あいさつ”だってわかった。

孤児院で育った私は、こういうあいさつをしたことがなかった。

時々お迎えが来てくれた子が、本当のお母さんに抱きしめられて顔中にキスをされているのは見たことがある。

孤児院を巣立って家族を持った人が、自分の子にキスをしているのも見たことがある。


家族の親愛のキス。


カールは憧れでしかなかったそれを、私にくれたのだ。




「おやすみ、ルゥ」


カールの顔が近づいてくる。

あいさつだってわかってても、慣れるもんじゃない。

今日は勇気を出して、私からも口をくっつけてみた。

驚いたように開かれた碧の瞳が、すぐに細められ笑みの形になる。

端正な顔立ちが甘さを増す。

きゅんっと胸が鳴ったのは、きっと初めて自分からキスをしたせい。


あれぇ? でもあいさつのキスって口と口でするんだっけ??

したことがない私にはわからないけど・・・カールが嬉しそうだからいっか。

私、猫だしね。







いくら家族でも唇にはしないと知ったのは、ずいぶん経ってから。


「カール・・・・?」


「ん? いや、猫だったからだ。

 君だって、俺のことさんざん舐めてただろう?」


抱き寄せられると、私は大柄な彼の腕の中にすっぽりとおさまってしまう。

見上げれば、降りてくる唇。


「・・・ん・・・・」


触れるだけでは足りなくて、ちろりと舐めて先をねだる。


「くす・・・舐めるのが好きなのは元から?」


「や・・・馬鹿・・っ」


耳まで真っ赤に染まった肌を、隠してくれる毛はもうなくて。

うつむいて、厚い胸板で顔を隠そうとしたけれど、大きな手に妨げられて上向うわむかされた。


「ん・・・んんっ」


待ち望んだ深い口づけは、熱く甘く、私をかす。


「これも、家族のキス・・・?」


「家族になって欲しい人へのキス、かな」










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