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白猫の恋わずらい  作者: みきまろ
第1部
11/100

11 左遷のわけ



*****



「隊長! 隊長を巡って女性たちが刃傷沙汰おこしたから左遷されたって本当ですか!?」

「隊長! 貴族の令嬢をとっかえひっかえして恨まれたあげくに左遷されたって本当ですか!?」

「隊長! 王女様をもて遊んで捨てたから左遷されたって本当ですか!?」

「隊長! 王都中に隠し子がいて養育費で首が回らなくなって借金したあげくに左遷されたって本当ですか!?」


「おまえら・・・・・兵舎50周!!

 1時間以内に戻らなかったら10周ずつ追加だ!!!」


出勤したとたん、隊員どもに囲まれた。

くそっ、ウーリーの奴、つぶれてなかったのか。


「えええええ!」

「横暴!」

「職権乱用!」

「せめて答えを!」


「今しゃべったやつ5周ずつ追加」


低い声で命じると、誰もが黙って走り出した。


「で、どれが本当なんすか?」


「ギュンター・・・おまえも走るか?」


「いえ、遠慮しときます」


ギュンターを隊員の見張りに残し、俺は足音も荒々しくウーリーの部屋へ向かった。


「貴様! 仕事もしないで余計なことばかり言いやがって!」


「早いな、カール=ヘルベルト=ヴュスト。

 あいさつもなしになんだ、いきなり」


見ればウーリーは、兵舎には似合わない真っ白なテーブルクロスを机に敷いて、シギに給仕をさせて朝食をとっていた。


「貴様、馬鹿か・・・。

 測量はどうした! ゲオルグ殿はとっくの昔に出かけただろう!」


「僕の出番はまだなんだよ。

 明日は満月。まじゅつしの力が最大になるときだ。

 その時に一気にやったほうが、合理的ってもんだ。

 あぁ、僕ってやっぱり天才!」


「この人、食事に2時間かかるんです。

 隊のみなさんには呆れられて置いてかれました。

 幸い、師匠の出番はほんとに後なんで」


優雅にナイフとフォークを扱うウーリー。

料理はヨシばあさんの作ったものだが、器まで取り替えているのでやけに高級そうに見える。


「・・・シギがそういうならそうなんだろう。

 しかし隊の連中にあることないことベラベラしゃべるのとは話が別だ。

 これ以上余計なことを言うようなら、測量が途中でも叩き出すぞ!」


「何が余計なことなんだ?

 あぁ、さっきの騒ぎか。部屋ここまで聞こえたぞ。

 華の近衛騎士だった君に貴族の女性陣が夢中になってたのも、贈り物合戦で鉢合わせた侍女が取っ組み合いの喧嘩をしてけがをしたのも、護衛した隣国の王女が君に本気になって国に連れ帰ろうとしたけど、“国に忠誠を誓った身ですので”って断ったのも本当じゃないか。

 借金? どこだかの孤児院の負債を肩代わりしたんだっけな。

 おかげで子どもたちは全員行き先が決まるまでいられたとか。

 結局閉鎖されることにはなったけど、よかったじゃないか」


ご丁寧に説明するウーリーの後ろで、シギがぷるぷると震えている。


「そこまで知っていて、なぜ隊のやつらにいい加減なことを・・・!」


「隊長おおおぉぉぉぉ!!!!」


「うわっ」


ウーリーの襟首をつかんでなおも言いつのろうとしたところに、隊員たちがなだれこんできた。


「そういうことだったんですね!」

「いい男ってのは苦労するもんすね!」

「孤児院ってマジっすか! 俺、感動っす!」

「隊長! 一生ついていきます!!」


襟をつかんだまま、呆気にとられる。

ウーリーは食べかけの野菜をぱくりと口に含んで、素知らぬ顔で咀嚼を続けた。


くそっ。

こいつに関わると碌なことがない・・・・!




*****



明るい空に、白い月が浮いている。


出窓から庭を眺めていると、カールが撒いたパンくずに小鳥が集まってきた。

うずうずうず。

飛びかかりたい衝動に駆られる。

鳥め~。

私がここから出られないのを知っていて、悠々とごはんを食べてるんだなっ


かりかりと窓をひっかいても、開くわけがない。

人間なら、こんな鍵くらい簡単に開けられるのにな。

いや、そもそも人間だったら、鳥に飛びかかりたいなんて思わないか。


出窓の鍵は、ちょうちょみたいな形の金具を回して開けるタイプ。

ピンクの肉球がついた前脚では、到底開けることはできない。


ぱたん、ぱたん。


尻尾を揺らす。


暇だなー。

カール、今頃何してるのかな。








カールはばたばたしてますが、ルゥはのんきなものです^^

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