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うっひょー!! 婚約破棄きたーーーー!!

作者: たこす

ノリだけで書いてしまいました、すいません。

 オレは婚約破棄を見るのが趣味のモブ貴族。

 マンガで言えば顔のないシルエットでしか描かれない男だ。


 今日も今日とて婚約破棄の噂を聞きつけて、名のある貴族の婚約パーティーに出席している。


 招待状などないが、モブ中のモブであるオレの手にかかれば貴族のパーティーに潜入することなど朝飯前。案の定、何の検査もなくすんなり会場に入れてしまった。モブだし。



 今夜はクズ令息と名高いクッズ侯爵令息と、有能だが不遇な扱いを受けていると噂のセシリー伯爵令嬢との婚約パーティー。

 絶対何かあると睨んで潜入してみたのだが、出てくる料理はうまいし楽団の演奏もなかなかだしで、かなり手の混んだパーティーだった。

 そうなるとお約束の婚約破棄はないかなと思っていた矢先。



 いきなり現れたクッズ令息がオレの斜め前にいた令嬢に指を突きつけた。



「セシリー・グランツ! 貴様との婚約を破棄する!」



 うっひょーーー!!

 婚約破棄きたーーーーーーーーー!!



 っていうかオレの斜め前に婚約破棄令嬢がいたーーーーーー!!!!



 オレはモブらしくサッと退いて背景のシルエットと化す。


 よしよし。

 これで存分に婚約破棄劇場を楽しめる。


 セシリー嬢は驚いた顔でクッズ令息に問いただした。


「な、なぜですか!? 理由をお教えください!」


 そうだそうだー。

 理由を言えー。(心のヤジ)


「貴様はここにいるメリル嬢に様々な嫌がらせをしてきたであろう!」


 そう言ってオレの隣にいる女性をグイッと抱き寄せる。

 って、隣にいたのかよ!


 オレは慌ててさらに引き下がる。

 もはやマンガのコマの見切れたモブだ。


「そんなことしていません!」

「ふん、白々しいウソを。泥水をかけたり、ドレスを破いたり、散々嫌がらせをしてきたと聞いているぞ」

「だ、誰がそんな……」

「メリルは貴様にやられたと言っている!」


 でたーーーーーーー!!!!!

 ヒロインの証言は信じないのにやられたと言い放つ方を信じるやつー!!


 さすがはクッズ令息。

 噂通りのクズです、ありがとう!!


「クッズ様、私、本当にやられたんですぅ」

「ああ、かわいいメリル。わかっているよ。君はすべて正しい」


 やべえ、ここまで王道で来られると興奮してしまう。


 さあ!

 次は助け船の登場だ!

 誰だ!?

 誰が来る!?



「お待ちください、兄上!」



 はい、きたーーーーーーー!!!!

 クッズ令息の異母弟ボヘミアン令息ーーー!!

 平民出身の娘から生まれたからと冷遇されながらも、その聡明さで一目おかれている弟くん!

 思った通りの展開で拍手したくなっちゃう!


 さあ!

 突きつけてやるのだ、弟くん!

 クッズ令息に発言の矛盾を!


「兄上はなぜその女の言葉を信じるのです!? 証拠がなければ信じるべきではありません!」

「貴様はメリルがウソをついてると言うのか?」


 出たーーーーー!!

 伝家の宝刀「貴様は○○がウソをついてると言うのか」発動しました!!


「ウソとは申しません、信じるに足る証拠がなければ信じてはいけないと申し上げているのです!」

「証拠ならある! メリルの可愛さだ!」



 証拠ならある! メリルの可愛さだ!?

 やっべえええぇぇぇーーーーーーー!!!!

 この令息やっっっっべええぇぇーーーーーーー!!!!


 クズ過ぎて笑ってしまう!!!!


 さあ、どう出る弟くん!


「わかりました。兄上がそこまでおっしゃるのなら、そういうことにしておきましょう。ではセシリー嬢は今日からフリーと言うわけですね」

「そうだ」

「セシリー嬢。ならばこのボヘミアンと婚約してはいただけませんか?」

「へ?」


 ボヘミアーーーーーン!!!!

 あんた、ほんとボヘミアンだよ、ボヘミアン令息!


 これぞ婚約破棄名物・優良物件鞍替え展開!!!!

 端から見てても興奮しちゃう! ハアハア。


「で、ですが……」

「セシリー嬢、あなたは破産寸前だった伯爵領を立て直し、今や世界有数の資産家とまでなりました。その手腕、さすがでございます。あなたならどこでもうまくやっていけるでしょう」


 え!?

 この人、破産寸前だった伯爵領を立て直したの!?

 すごい!


「待て! なんだそれは?」

「おや、ご存じなかったのですか、兄上。セシリーは商会を立ち上げて一大富を築いているのですよ?」

「き、聞いてないぞ! そんなこと」

「言いましたわ。ここにクッズ様の契約書もございます。嫌そうな顔で、はいはいと判を押してましたが」


 ありゃま、用意周到なこと。

 これで「聞いてなかった」は通じませんな!

 さすがはオレが見込んだ婚約破棄令嬢!

 優秀さは他の婚約破棄令嬢と引けを取りません!


「毎月、多額の利益をおさめて参りましたが、今日までですわね。わたくし、ボヘミアン様とともにまいります」

「ま、待て!」


 クッズ令息はここにきて、どうやら事の重大さに気づいたらしい。

 しかし時すでに遅し。

 セシリー嬢はボヘミアン令息とともにボヘミアンに退室していった。


「そ、そんな……」


 ガックリと膝を落とすクッズ令息を見ながら、オレもそっと会場をあとにする。



 美味しい料理もいただけたし、スバラシイ婚約破棄も見れたし。

 大満足の一日だったな!



 オレは懐から魔法石を取り出すと、次なるターゲットに狙いを定めた。


 ふむふむ。

 今度は市井の娘にぞっこんの王太子殿下か。

 こりゃまた面白い婚約破棄が見られそうだ。



 オレの婚約破棄鑑賞はまだまだ続く。



お読みいただきありがとうございました。

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