九.成葉
「ショウタ、今なにしてんの。これから肝試ししない?」
ウラタから連絡が来た。こいつの無神経さというか、無遠慮さには感心すら覚える。言っておくが今は深夜の二時だ。一般的な学生は寝ている時間である。
「にげんなよー。ショウタおばけなんかきにしないだろ?」
そういう問題ではない。幽霊が怖いから行きたくないとかではなく、深夜に動き出すのが面倒なだけだ。
「たのしいと思うんだけどなー。」
こっちが既読を付けずに見ているのをわかってるのか、どんどん追い打ちで連絡をしてくる。
「いいよ、一人で行くわ。ごめんな深夜に(笑)」
意外とあっさり引き下がるんだなと思った。ウラタの無遠慮さはぴかイチで、普段であればこっちがイエスというまで連絡をしてくる。それで付きあわされたカブトムシ取りや海水浴は本当に大変だった。森ではヒルに噛まれ、海ではクラゲに刺され…。一人だと引きこもって家から出ないので、新鮮な体験ではあり、そういう経験の背景にはウラタが常にいた。今回もそんなうちの一つだろうと思っていた。明日返事してやろう。今度計画を立てていこうと。めんどくさいが、深夜の学校というもの自体に興味はある。俺はスマホを枕元にある充電器にセットし、その日は眠りにつくことにした。