3/15
三.発芽
教室の扉を開くと、ウラタが飼い主を見つけた犬のように俺に話しかけてきた。
「おい!ショウタ!これ見ろよ!」
ウラタが出してきたスマホには『ⅤRで来栖山エリサ三時間!』という文字がポップな字体にセクシーな女性の画像。
「なに?これ。」
「本当にお前はこういうの疎いよな。これは文字通りだけど、ついにエリサちゃんのビデオにⅤRが出たんだよ!まじでほしい!いやー、金があったらなあ。」
バーチャルリアリティというものが発表がされたときからこんなものが普及するのではないかと思っていた。俺には正直、これの良さがわからない。現実のようだと言っても、あくまでバーチャル。仮想世界の話だ。人間は人と人とのつながりが大事だし、スマホですら不要だと思うくらい。現実での体験が重要だと思っているが、この世の中では少数派の意見のようだ。俺はウラタの話を聞き流しながら、次の授業の準備を始めた。