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どうも、最弱テイマーです!  作者: 翡翠アマネ
一章:最弱は準備をする
3/5

03 優しいあなたが。


朝、誰も起こしにこなくなった。


(……それもそうか。だってわたし、無色だもんね)


こんな自分に嫌気が差す。

あの日から数日が立った。

兄妹にも話が通じたようだ。


「母さん泣いてたんだ。これ以上二人を悲しませるなよ」

「お姉ちゃん、あたしはもっとここにいてほしかったよ。でも、しょうがないんだ。お父さんたちが決めたことだから」


少し嫌味を言われながらもネイビーは、二人はちょっとはわたしのこと信じてくれたんだな、と少し安心した。




これは本当にわたしのせいなのだろうか。

もう分からない。

考えたくもない。


森で一人、自分への嫌味を言った。

たんなるうっぷんばらしだ。


「よし!」


自分にけじめがついた。

まずは自分にできることを探そう。


まず思いついたのは体力づくり。

逃げるにしても体力が必要だ。

あと食べられるものを探すための知識。

どちらも誰にも聞けない。

だからまずはできることを。


森の中をとにかく走る。

体力をつけるには走れ、といってもこれはネイビーの勘だ。


今日も朝から食べ物を探すが、なかなか見つからない。

森の中を走り回る毎日にも、だんだん慣れてきた。

少しだけ体力もついてきた気がする。

………あくまで気がするということ。


ふわっと視界が上に向く。

視界が真っ黒に染まった。


「ん……うーん……?痛っ」


ひざを見ると血がにじんでいた。

転んでしまったようだ。

ふと隣を見てネイビーは固まった。

隣に初老の女性がいたのだ。

目が合うと、女性がふっと笑みを見せた。

女性は村の占い師だった。

いつもにこやかに微笑んで、村民からも親しまれている。


「おはよう」

「はい、おはようございます」


占い師が話しかけたとき、ネイビーの心はかすかにとけた感覚がした。

しみると言うか、あたたかいというか。

ここ数日で、無色のネイビーの存在は知れ渡った。

そのせいで、ネイビーは村の中でもひとりぼっちだった。


「……どうしてわたしを……」


占い師は静かに、それでいて優しく話し始めた。


「私はテイマーじゃないので、どうすることもできません。しかし、困っている人を放るわけにはいかないでしょう?」


「そう……ですか…」


なぜだろう。

家族にも見放されたのに、今の占い師の言葉がすごく嬉しい。

気づくと、自然と笑みがこぼれていた。


「はい」


占い師は一つの鞄を渡した。

一瞬戸惑ったが、中をみてみる。

大きさよりも、たくさんものが入っていた。


「マジックカバンです。劣化版なので、そんなに入っていないかもだけど、中に色々と入れておきました。きっと、これから必要になるものを」


中の物をみてみる。

本当にたくさん入っていた。

本が数冊、魔物やテイマーについて、食べ物についても書かれていた。

ポーション、初級から上級まで数本入っていた。

小さめのナイフ。


占い師の顔をみる。


「……ありがとう、ございます」


この人は優しい人だな。

わたしと関わったところで、なにもないのに。


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