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1-10 恋しい気持ち

 ジルベルトにクッキーを渡した日から、リーナベルの心は大荒れだった。


 気づけば彼のことを考えているのは前とあまり変わらないのかもしれない。

 けれど、欲が出た。

 多分もう、遠くから見ているだけじゃ足りない。


 会いたい。

 あの琥珀色の瞳で見つめて欲しい。

 優しい声が聞きたい。

 名前を呼んで欲しい。

 できるなら触れてみたい。


 次から次へと欲が湧き上がる。


 駄目なのに。

 ジルベルトはいつか、ヒロインに恋をして、自分を嫌いになってしまうかもしれないのに。


 必要のない日に彼に会いに行くことはできないと思い、我慢した。


 本当は、ひと目でも会いたくてたまらなかったけれど。

 胸が、軋むように苦しかったけれど。

 純粋に彼を助けたいだけだった自分が、急に調子に乗って、高望みをしている気がして。そんな自分が恥ずかしくて、情けなくて。我慢しようと思った。


 だから――雨の日が、待ち遠しかった。

 雨が降れば、鍛錬場に行く正当な口実があるから、許される気がした。


 憎らしいことに快晴の日が続き、やっと小雨が降った日、リーナベルはいつも以上にそわそわしながら馬車に乗り込んだ。

 少しでも早く姿を見たくて、令嬢に許されるギリギリの速度で王宮の鍛錬場へ向かう。


 少し息を切らしながらそこにたどり着くと、嘘みたいにすぐにジルベルトの姿が目に入った。

 そして信じられないことに、彼も同時にリーナベルを見つけて、真っ直ぐに目が合ったのがわかった。

 まるで、ずっと待っていてくれたみたいだと思った。


 思わずふにゃりと微笑むと、彼もまた破顔したのがわかった。


 リーナベルの心は幸せでいっぱいになった。

 思い込みなのかもしれないけれど、彼が自分を見る目も変わったような気がしてしまう。


 そんな、ふわふわと浮くような気分に浸りながら訓練を見ていたのが――いけなかったのだろうか。


 ことは、突然起こった。


 魔術の暴走事故が、ついに始まってしまったのだ。

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