後編
「お姉様、ドレスちょうだい・・・欲しいの」
「まあ、フィーネ、素敵なドレスがあるでしょう?」
「お姉様の子供の時のドレス着たいの・・」
「フフフフ、じゃあ、こっちに来なさい」
・・・私はセシリ王国の第2王女、フィーネリア、フィーネと呼ばれている。
お姉様は聖女だ。私も聖女だが、力が弱い。お姉様みたくなりたくて、何でもちょうだいをしていた。
☆お針子ギルド
「まあ、王女殿下、ワザワザ来られるなんて、光栄でございます」
「フフフフ、仕事はそのままね。フィーネ、ここには100人以上のお針子さんたちが働いていますわ」
「そして、ほら、そこの方、少し、お時間を頂けますか?」
「はい!」
「フィーネにドレスを作るとしたら、どのような物をこしらえますか?」
「はい、フィーネ様は、お顔が小さく、華やかです。その黄金の髪と、エメラルドグリーンに合うように、薄いピンクで、お嬢様、自身の美しさは際立つでしょう」
「ねえ。貴方が、私の中古で満足をすると、お針子さんのお給金が減りますわ。そして、お安く作っている平民用のお洋服が高くなるの」
「でも、お姉様みたく、清楚になりたいの」
「フフフ、なら、こうしましょう。お父様にお願いして、紺や茶色が基調のドレスをあしらえてもらいましょう」
「分かったの~~」
・・・・・
「ウグ、グスン、お顔が目立ちすぎるの。まるで、顔だけ魔物・・・」
「ですが、王女殿下、おすましをすれば・・・無理・・です。申し訳ございません」
「アハハハ、フィーネ、これで、分かったか?苦手なこともあるぞ。フィーネの心が清楚であることは皆が分かっている」
「そうだ。フィーネは、その可愛さで、すぐに好かれる長所がある」
「分かったの」
・・・・・
お姉様は、聖女として、戦場に行って、治療を行う。私は、そよ風と、霧雨を降らす権能しか授かっていない。
「何を言うの。そよ風と霧雨、農業に必要だわ!」
「え、でも」
「農業では風が必要よ。優しいそよ風で湿気を飛ばし。カビないようにして、茎を強くするのよ。強くて、優しいのよ」
「じゃあ、霧雨は?」
「フィーネのは、どんな晴天でも、霧雨を降らすって、評判なのよ。水不足の国から、もう、縁談の話が来ているのよ」
「知らないの~」
「お父様が握りつぶしているわ」
優しい。お姉様、お父様、お母様、お兄様だった。
・・・・・
「ザクトリーと、その他、護衛騎士団でございます」
「ええ、護衛騎士」
・・・何でも、水不足の国が、私を強硬に嫁入りさせようと、よからぬ企みがあるとか。
「でも、皆、おじさんなの」
「ハハハ、陛下は、悪い虫が付かないようにと、戦闘経験がある者をとのことで、こいいう人選になりました」
そうか、魔族領に、転生者が現れ、統一したとの話を聞いた。
以来、全面戦争は起きていない。
このまま、幸せな生活が続けばいいと思ったが、そうはいかなかった。
転移者が現れたのだ。
『通販』のスキルがあるとの事で、要警戒だ。
お金が一方通行で、向こうの世界に流れる。
いずれ、金がつきてしまうとのことだ。
「フィーネ様は、見る必要はございません。シルビア様を見る目が、下卑た視線を隠さないのです」
「そう・・なの」
それから、しばらくして、お父様、お母様、お兄様、お姉様と一緒に祝宴をした。何故?
婚約者を連れている。普段忙しいので、皆が集まるのは、希だった。
「うわ。私が好きなもの。ばっかり。ごめんなさい。はしたない」
「フフフ、いいのよ。おしゃべりしながら、食べましょう」
終わりに近づいた頃、お父様は、変な事を言う。
「うむ。フィーネは、13歳だ。剣をプレゼントしよう。婚約者が出来たら、渡すと良い」
「え、でも」
「ザクトリーに渡しておいたぞ」
「フィーネ、私からは、カチューシャを、欲しがっていたでしょう?」
「でも、お母様、それは、お姉様が継ぐものだって」
「フフフフフ、いいのよ。フィーネ、私からは、このペンダントよ。前、欲しがっていたでしょう」
「お姉様、それは、セシリ王家、総領娘の証だと・・・」
「いいのよ。欲しがる人にあげるものだわ」
「フィーネ、私からは、王家秘宝の魔力増幅の腕輪だ。つけてくれるよね」
「お兄様、それは、王位継承権の証だとか・・」
「いいのだよ。前に欲しがっていたよ」
「皆、どうしたの?おかしいよ・・・・・」
バタン!
「フィーネ、眠ったか。ザクトリーとメイド長、城を落ち。外国に向かわせよ」
「「「御意!」」」
「フィーネ・・・」
「ああ、これで、王族は生き残る」
「ワシらが、軍を指揮して、時間を稼ぐ。その間に、王権を発動、戒厳令で、国内の金をフィーネの名前で接収し、商業ギルドに預ける。商業ギルドには、外国のフィーネ名義の口座振り込ませる。・・・金の移送の準備を急がせろ」
「御意!」
「ああ、如何に、異世界人とは言え。金兌換制のこの世界で、通販は出来なくなるだろう・・・それしかない」
・・・・・・・
それから、国境付近の金鉱山の警備砦で目が覚めた。
「王女殿下・・・・これから、ノース王国の王宮預かりになります」
「何故!」
大公が、異世界人と手を組んで、軍を起こし。中央平原で戦い。王国軍は全滅。
何か、強力な武器を召喚したらしい。
「じゃあ、王国軍は?」
「ここに残り。金鉱山を破壊します。そしたら・・・全員、散らばって、戦います」
「違うの。私だけ安全な場所にいて、皆に、辛苦の思いをさせるなんて、戦い方はあるはずだわ!詳しく話して!」
・・・・・
何て言うこと。誇りあるワイバーン隊や、騎士や兵士が、子供たちに、「じゅう」で殺された?
馬よりも早い。魔道車があり。何でも通す鉄礫がある?
どんな鎧も通す・・・・
「・・・・敵がここに来る時間は?」
「それは、分かりません。兵を募集し、各都市を攻略するつもりです。王都は、陛下の策により空にしましたから、金がない状態です」
「それじゃ・・・」
「正直に申し上げます。逃げ遅れた王都の民は、略奪にあっています・・」
・・・・何とかしなければ、
でも、知恵が思いつかない。敵の情報が分からない。
「さあ、このワイバーンにお乗り下さい。このザクトリー、ここに残り、最後まで、金の採掘を守り。外国に送ります。どうか、お健やかに、お育ち下さい」
「さあ、王女殿下」
・・・おかしい。何かが引っかかる。
この後、外国はどうでるか。
国境を閉鎖して、日干し作戦だろう。
バタバタ!
「魔族領に行って!お願い!」
「え、王女殿下、怒られますよ!」
「いいから、魔王は転移者でしょう。助力をお願いします!」
「無理ですって!」
「なら、飛び降りるの!」
「ヒィ、やめて下さい!」
☆☆☆魔族領、ヤクーツ
魔王陛下と謁見をした。
すんなり、通された。
「こんにちは。私は、魔王、アズサ・ササキです」
「お初にお目にかかります・・セシリ王国第2王女、フィーネリア・セシリです」
・・・・
「助力をお願いします」
「無理ね。魔王軍は専守防衛が方針よ。最も、攻撃されたら、敵の本拠地を叩くけどね」
やはり、無理だ。この女は何を求める?
魔族領は豊かと聞いている。
言葉の端から、読み取れ・・・・
金か?いや、領地か?そうじゃない。
「フフフフ、貴方は、人族の国に亡命すると聞いたわ。この城で、数週間過ごしなさい。見学するといいわ。亡命先には連絡をしておくわ」
・・・やはり、この女、人族の国と連絡を取り合っている。
この国には、異世界の軍隊が、数百人いると聞いている。
たった、数百人で、女神信仰圏諸国は、恐れている。
なら、異世界の軍隊が、万を超えたと聞いたら、恐れるはずだ。何か、あるはずだ。
過去の事例に、当てはめて、お姉様のように、考えるのよ。
「もう、遅いわ。ワイバーンちゃんと、騎士の方にはお休みするように言っておくわ。貴方も、お部屋に、エミリア、案内をして差し上げて」
「はい、アズサ様」
考えても無駄だ。私は、私、直感で言うわ。
「あの、あの、その、助力頂けたら、我国の状況を教えます!平民が、異世界の武器を持ったら、どうなるか。戦後、念入りに調査をして、いえ、調査に協力いたいますの!」
はあ、はあ、はあ、一気に言ったわ。
「・・・・フフフフ、愉快だわ。エミリア、あれを持って来て」
「はい」
・・・・・
「これが、異世界の武器・・・」
正直に言うと、汚い。無骨を通り越して・・・
「どう思う?」
「汚いでしゅ・・ヒィ」
「フフフ、これは、カゲから貴国のナオト軍から、手に入れてもらった銃よ。大金貨一枚よ。買ったときのそのままにしておいたのよ。これは、20式5.56ミリ小銃ね。最新式の自動小銃よ」
「ちょっと、見ていてね。分解できるかしら」
カチャカチャ
「被筒部は、ここね。まあ、引き金室に、枝が入っているわ」
「うわ~汚い」
「そう、整備が出来ていない。整備できても、表面しか出来てないわ。この状態で、撃つと、装弾不良が頻繁に起きるわ。
自衛隊では、一回使用したら、三日連続で整備しなくはいけないとされるのよ。それほど、銃は、撃ったときに、薬莢の金属片や、カーボン繊維がこびりつくものなの。ごめんなさい。分からないわよね」
「はい、整備をしなければ、いけないとしか分からないのです」
「フフフフ、つまり、敵は素人よ。戦う手段があるってことよ」
「そうなの。教えて下さい!」
「貴国の大公派の使者がやってきたわ。領土半分あげるから、助力を求むとか・・もし、貴方が、領土を差し出す気だったら、このまま放置していたわ」
そして、魔王は、ピカピカの銃と、本を机においわ。
「銃を取れば、我が魔王軍の傘下に入って、貴国は、一部隊になってもらいます。ただし、独立は保証しますし、内政はそのままです。外交権も保障します。ただ、こちらに有利な条件で関税をかけてもらいます。
本を取れば、苦難の道です。この本は、魔法で、重火器と、戦う方法が書かれています。軍事顧問団を派遣して、対異世界戦闘術の訓練を施します」
「本を・・・」
迷わずに本を取った。
しかし、この対異世界戦闘術なる本は、魔王軍の異世界騎士団にとっても脅威ではないか?
「大丈夫、その対策はとってありますから、私が、一週間で、国を落としたのも、対策をとらされないためです。今は、こうして、魔法で銃を戦う方法を、逆の視点から見ています」
「分かりました」
☆☆☆数週間後、金鉱山砦
「ザクトリー様、各地でバラバラになった騎士団が集結しています」
「うむ。最期は、ここを拠点に、砦を枕に討ち死にだな」
「ザクトリー様、ワイバーンが3騎、上空に来ています。あ、フィーネ様が乗っておられます」
「何!」
・・・・
「お叱りさせて頂きます!何故、地獄に戻って来ましたか!」
「それは後で受けるの。この方たちは!魔王軍人族部隊です」
「オルト曹長です」
「セルゲイ士長!」
「ミリーダ技術陸曹!」
・・・・話を聞くと、協力?
「まさか、国を売る話では、この後、国境閉鎖をして・・・」
「それはダメなの。グスン」
・・・・・
☆☆☆
「良いですか?弾丸は、土嚢で防げます。弾自体には、質量がないのです」
ダン!ダン!
「「「「オオーーー」」」
「しかし、この土嚢、矢は通すのです。だから、鋼矢板で覆います」
「・・・この板に溝があるが」
「はい、鉄で矢は止りますが、この溝で、弾が反射して、通しにくいとの設計です。しかし、まあ、弾は通り。中の土嚢で止ります」
「後は、水を通しにくいです。ミリーダ、魔法士官、ウォーターボールを浮かべてくれ」
「はい!」
「弾が反射して、危ないですから、遠くから見て下さい」
ダン!ダン!ダン!
ビシャ!ビシャ!
「鉄礫が、ウォーターボールで止って、勢いがなくなって、地面に落ちた」
「反射したものもあるぞ」
「そして、ワイバーンですね。弾は、重力に逆らえません。曳光弾で撃ちます。誰もいないですね」
ダダダダダダ!
「まるで、小便のように、落ちている」
「風でながされているのか?」
「思ったよりもまっすぐに飛ばない」
「つまり、ワイバーンはジグザクに飛んでもらいます。そして、この松ヤニと油で作った焼夷弾を空から落とします」
「うむ。だが」
「ええ、簡単には当たりません。訓練をしてもらうしかありません。大雑把でいいです。狙う場所は、ガソリン集積所しかありません」
「がそりん?」
「なら、対車両戦闘でお話しします」
・・・・
「敵は、異世界人らしいですが、基本を知っていないようです。いいですか?ガソリン車でツッコムのは、自爆行為です。この薄いピンク色の液体が、ガソリンです。
これが、車の中に、血液のように流れていると思って良いでしょう。これって、簡単に燃えます」
・・・・自衛隊の車両は、国内では、海外派遣用に防弾処置がされていない。
ナオト軍は、そのまま召喚して、防弾ガラスや、装甲の取り付け。ガソリンタンクへの保護をしていない。ナオトは、それを知らなかった。
「ファイヤーボールで?」
「ええ、これが、簡易車止めです。車は道しか通れないと言っていいでしょう。車が来たら、急いで、これを敷設します。そして、パンク現象を起こし止るでしょう。そして、ファイヤーボールをぶちかまします。これは貴国の鍛冶でも作れるでしょう。しかし、軽装甲車が来たら、ディーゼル車なので、待避です」
「話は分かった。訓練をしよう。しかし、こちらに決定打がないな・・・」
「・・・あります。これは、フィーネ様が、鍵になります。・・・これを・・」
「何だ。これは・・・」
・・・・・
「まさか、そんなこと?それでは、フィーネ様は死ぬではないか?」
「大丈夫です。対策があります」
ここで、フィーネが、発言をした。
「大丈夫・・・人数を選別して、敵のど真ん中で、ぶちかますの」
「・・・それなら、鉱山の頂上で行えば・・」
「それだと、広範囲に広がるの。貴方たちが危険!」
「フィーネ様・・・」
「貴方たちも死ぬかもしれないの!フヌー」
そして、私たちは、訓練を行った。
敵は、固く城門を閉じた都市を攻めあぐねている。石は弾を弾く。
王都での略奪したことによる不審、王家に対する敬慕がまだあるようだ。お父様、お母様、お姉様、お兄様のおかげだ。
しかし、唯一残った私、フィーネは、我が儘で、欲しがり妹との噂を流している。
かまうものか。こちらは、数千人いる。
ただの数千人ではない。
忠誠心が厚い。
「フィーネ様、対車両戦闘、成功です!」
「ゲリラ戦というものは、効果あるが、まるで、逆だ。私らは騎士、しかし、相手は平民兵、不思議だな。正規軍のゲリラって・・・」
そして、黒色火薬の開発の成功、
火薬で槍を飛ばす方法を教えてもらう。
敵は続々集まっている。諸外国に相手にされず。唯一、通販に必要な金があるここを狙ってくるのだ。
最期までお読み頂き有難うございました。