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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

公式企画に参加してみた ⑦ 「春の推理2024」

死にゆく君へのメッセージ

作者: モモル24号

 強い死の描写があります。苦手な方はブラウザバックをお願いします。

 僕の側には死神がついている。


 青白い顔でジッと見つめている。


 死神は黙って僕が眠りにつくのを待っている。


 真っ暗な部屋。


 ここに閉じ込められて、どれくらい経ったのだろうか。


 死神が側に佇むまで、一滴の水すら飲んでいない。


 助けは……来ないだろう。


 僕の事に気がついてくれる唯一の人とは、別れたばかりだったから。


 ────絶望の檻。


 孤独がこんなにも辛く感じたのは、君と出会ったからだ。


 君がいなくなって初めて、僕は大切な存在だと思い知らされたんだ。


 闇がどんどん深まっていく。


 そして佇む死神の瞳が、赤い輝きを増してゆく。


 ────後悔の淵。


 こんな事になるなら別れる前に「ありがとう」 と、素直に感謝を伝えるべきだった。


 もう遅い。


 もう間に合わない。


 もう僕の生命の灯火は、暗闇の中に消えようとしている。


 揺らめくように動き出す死神。


 手に持つ死神の鎌を振るう前に、伝えてもらえないだろうか。


 怒鳴ってごめん、僕は……と。




 ────僕は死んだ。



 ────僕は死んだはずだ。



 ────死神の赤い瞳が僕を見つめている。


 そうか……死にゆく僕のために、神様として死神は応えてくれたのか。


 ────僕は望んだ。


 冥土の土産にひとつだけ持って行けるものを。


 僕は────迷わずに決めた。


 死神は僕の伝言を届けてくれたようだ。


 絶望も後悔も消え、心残りはない。


 これで────いいんだ。


 他の誰にもやりたくない。


 たとえ……僕の事など、とっくに忘れていたとしても。


 僕の気持ちは、きっと届く。


 さあ、死神よ僕を黄泉路へと案内してくれ。



 僕が望んだのは────



 ────彼女が生きること。



 僕が冥土へと持ってゆくのは、彼女の死。


 死にゆく僕が、死にゆく彼女の死を道連れに旅立つ。


 僕の気持ちは、きっと届く。


 僕が彼女へ送る最後の伝言は「生きて」 だった。


 僕の気持ちは────必ず届く。


 優しい死神が僕の望みを叶えたのだから、間違いない。


 死にゆく僕の心臓は、病床の彼女へと届いたことだろう。



 僕の側には死神がついている。



 絶望の檻は漆黒の闇の中へと溶けて消えた。


 怒鳴ってごめん。


 死ぬ間際になって、初めて僕は君が感じていた恐怖を知る事が出来たよ。


 僕は自分が間違っていたと気付けて……幸せだ。



 今度は間違えないよ。




 だから君は生きるんだ────



 ────僕の事は忘れて幸せになるんだ。


 

 真っ暗な部屋。


 そこに僕はもういない。


 絶望の檻から助けてくれたのは、僕と彼女の「死」 だ。


 

 僕は死んだ────



 ────僕は満足だった。

 お読みいただきありがとうございます。公式企画作品6作品目となります。


 今回はメッセージ性の形を変えてみました。推理に関しては文章を読み進めていく中で、自然に考えていただけたのならいいなと思いました。


 今までの投稿作品とはテイストを変えて、少し詩的な感じで仕上げてみました。


 

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